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27. 聖霊に導いてもらう / Let Him Lead the Way

⭐️バーバラ⭐️

1980年の8月のこと、ロバートと私は、私たちの大切な友人、オマーンとシャンティとともに数週間の旅をしていた。
ひとつひとつの集まりにおいて、ロバートと私は、奇跡講座とはどんなものかについて、またその教えを実践して生きている私たちの体験についての講演をし、オマーンとシャンティは、そうした教えを豊かにし、補うような歌を歌い、奏でた。
私たちは語り……そして彼らは歌う。
「なんて完璧なのかしら、」と私は思った。「この形こそが、きっとこれからも続いていくんだわ……私たち4人で旅をするのよ。」

そのような思いを抱いていたとき、私たち4人は翌日の夕方に講演を控えていたアラバマ州バーミンガム郊外のキャンプ場で、仕事のない夜をくつろいで過ごしていた。

皆でキャンプ・ファイアーを囲んで座り、お互いと過ごすのを楽しむ幸福感に打たれていた私は、何もかも素晴らしくうまくいっていることについての歓びと神への感謝を口に出して語った……私たち4人が一緒に旅をして、わかちあえるなんて、と。
私たちが人びととわかちあいたいと望む体験のすべてにおいて、音楽がほんとうに、どれほど重要かということを、私たちは実際に見てきたのだ。

短い沈黙のあと、オマーンは文字通り私に衝撃を与えることを言い出した。

「僕たちは、君が感じているほどには旅することに情熱を感じてはいないんだ。
年に4回開かれる祭事に出席したいと考えているんだけど、リハーサルやら何やらで、6週間かそれ以上かかるんだよ。
だから僕たちは、これまでのようには一緒に旅をすることはできないと思う。」

私の瞬間的なリアクション(もちろん、自我によるものだ)は、そんなの裏切りだわ、というものだった。
「奇跡講座のシェア会に来てくれる人たちから、音楽を奪うなんて、どうしてそんなことができるかしら?」
私たち全員が、動揺し始めたときにはいつでもやるようにと習ってきたことを実践したため、ぎこちない静寂が訪れた……私たちは沈黙し、たぶん、ひとりひとりが心のうちで、その日の奇跡講座のレッスンを唱えていたのだろうと思う。

しばらくのあいだ、キャンプ・ファイアーの炎を見つめながら、ともに静かに座っていたが、やがてオマーンとシャンティはそろそろ寝ることにすると言い、「おやすみなさい」と言って立ち去った。
ロバートと私は、そのまま静かに座っていた。
私は自分が、こんなふうに言ったのを覚えている。
「音楽がないことで、私たちの集まりに来てくれる人たちが受け取る恵みが、減ってしまうのではないかと思うと、つらいわ。」
そうしてしばらくのあいだ、私たちは黙って座っていたが、ふと、ふたりともが別の考えを受け取った。
「いや、そのようなことにはならない……あなたがたが音楽を奏でるのだから。」
ふたりのうちどちらかが(どちらだったか、覚えていない)、「聖霊は私たちに音楽を演奏させたいの? すごい!」というようなことを言った。

私たちはふたたび沈黙した。
私の内なる会話はこんなふうに展開していた。
「そうね、聖霊。私はあなたもご存じのとおり、頑固だし好奇心旺盛で、あなたが私に何かしなさいと言うのが聞こえたら、あなたが何を思ってそう指示するのかを確かめたくて、何であれ実行するわ。
少なくとも、私は歌が歌える。でもロバートは音痴よ。
あっ、わかった……あなたは、うまく音程を取ることもできないひとと一緒に人前で歌うことで、私が心の平安を乱すと思っているんでしょう?
私は歌ってみせるし、歌いながら平安でいてみせようじゃないの。
この音楽がどうのっていうのは、あなたのアイデアであって、私のではないのだし。」

ロバートがあとになって私に語ったところによると、彼の内なる聖霊との会話は、こんなふうだったようだ。

「うーん、聖霊、僕はこのガイダンスについて、あなたの意図するところがいったい何なのか、さっぱり想像がつかないよ。
僕はこれまでまともに歌えたことなんて一度もないし、その点についてはたくさんのひとが同意すると思うよ。
だから、僕の声はあなたが使ってくださるよう、あなたに委ねることにする。
僕の声は、いまこのときより先、あなたが好きなように使うための、あなたの声だ。
僕にはどうすることもできたためしがないんだから。」

しばらくしてから、私たちはお互いに、自分が聖霊とどんな会話をしていたかをシェアし合った。

ふたりとも、ことのなりゆきのすべてについて、驚きで目をまるくしていた。
炎を見つめながら、さらなる沈黙のときが過ぎた。

私が沈黙を破り、言った。

「私たちそれぞれが、何か楽器を奏でなければならないでしょうね。何らかの伴奏があったほうが、歌うのはずっと楽になるわ。」
そして、また沈黙が続いた。

楽器を演奏する、というのは、これもまたひとつ、取り除かれるべき障壁だった。

ロバートは、中学と高校の楽隊でトランペットをやっていたことがあるが、自分の演奏の音程がきちんと取れているかどうかを、まわりの人びとから教えてもらわなくてはならなかったという。

私は、10代の前半に1年ほどピアノのレッスンを受けたことがあり、高校時代にはコーラスで歌うのを楽しんでいた。
高校3年のとき、ミュージカル『オクラホマ』のローリー役を務めたときには、開演前の数日間、極度に緊張して怖くてたまらなかった。
どうにかこうにか、二晩に渡る公演を切り抜けたが、あんな怖い思いを味わうようなことは二度とするものか、と誓ったのだった。
人前で歌うというのは、これもまた、私にとっては恐ろしい考えだった。
聖霊が、彼の音楽を披露するために私たちを使おうというのなら、まったくのところ、何かとてつもない奇跡を起こしてもらわなくてはならない!

私はそれまでずっと、シャンティのオートハープに夢中だったので、すぐに、「私の」楽器はオートハープだわ、と確信した。

ロバートは、特に何の楽器にも惹かれなかったようだ。
翌朝になって、驚くオマーンとシャンティにゆうべの展開を告げると、シャンティは私に、自分の古いオートハープを使って練習したらいい、と言ってくれた。
私は自分がどんな音楽を練習することになるのかわからなかったが、それは聖霊が教えてくれるだろうと思った。
だってこれは確実に、全部彼のアイデアなのだし、そして私たちは確かに、聖霊に導いてもらおう(※訳注)と意図していたのだから!

その晩、バーミンガムのユニティ教会での集いのさなか、私は、前の夜に起きたことのあらましをすべて話そう、という衝動を感じた。
それについて話すことで、この展開をより現実感のあるものとして感じる助けとなったし、また、自分たちが怖さに耐えきれずに逃げ出したりできない「場所」に置くことにもなった。
私は、こんなふうに締めくくったのだったと思う。
「私たちが次にここに来るときには、ロバートと私が音楽を奏でることになるでしょう。私たちには聖霊のガイダンスに従う強さがあるはずだと、皆さんが知っていてくださることが助けになります。
さあ、皆さんにこうしてお話しして、私たちの受け取ったガイダンスを公表してしまいました……もう後戻りはできません!」
ロバートと私は、驚嘆と恐れのあいだで揺れ動いていた。

次の旅では、ふたりだけでヒューストンからミズーリ州へと車を走らせた。

私は、手足を伸ばすだけの空間のあるプリムス・ヴァリアントの後部座席にいた。
この日の私たちのレッスンは、「愛は、私が感謝のうちに歩む道である。」
そのレッスンと、レッスンを私の生活に適用することについて瞑想していたとき、私にはそのレッスンが音楽となって聞こえ始めた。
私はオートハープを手に取って、言った。「聖霊、私には、どのコードがこのメロディに合うのかわかりません。私の指を正しいボタンに置いてください。」
すると、聖霊はそのようにしてくれた!

ロバートが振り返り、何が起きているのかに気づいて、一緒に歌いだした……正しい音程で!

喜びに満たされて、私たちは何マイルものあいだ、その短い詠唱を歌い続けた。
こんなふうに音楽があるって、これからどんなに楽しくなることかしら!

その夜、私たちは独立ユニティ教会において講演を行なっていたのだが、そのさなか、私たちふたりにとって驚いたことに、ロバートが「さあ、ここで皆さんのために僕たちは一曲演奏しようと思います」と言い出したのだ。

私の口は、あんぐりと開いてしまった。
ロバートは、あまりの衝撃に二の句が継げない様子だった。
私はオートハープを引っ張り出してきて、皆に、一緒に歌うことで私たちをサポートしてくれるよう呼びかけた。
楽しかった……私の震える指には、演奏などほとんどできてはいなかったけれど。

その晩、寝る支度をしながらロバートと私は、ふたりとも、人前で音楽を演奏できるようになるまでには何年もの練習や学びが必要だという考えを持っていたことを語り合った。

私は聖霊に話しかけた。「聖霊、いったいなぜ私たちに、これほどすぐに音楽を演奏させたのですか? こんなに何もわかっていない状態で、あのような場で演奏させるなんて、時期尚早のように思えます。」

私たちが受け取った答えはこうだった。

「私はただあなたがたを、家族の前で演奏させたにすぎない……そしてあなたがたは、すべてのひとが家族だと学んでいるのではなかったかな?」

そこで私たちは気づいたのだが、私たちをして音楽を用いて活動させるためには、自分たちが受け取ったとおりに音楽を奏でるところから始めさせるのが、いちばんやさしいやり方だった、ということだ。

私たちには、自分たちがいつ「人前に立てる」ようになるか、くよくよしたり苛立ったりする暇もなかった。
可能なかぎりかんたんな方法で……本番前に何時間も(または何日も)不安な思いをすることもなく……それは終わってしまったのだ。

ありがとう、聖霊!

「私は一歩退いて、神に導いてもらう。」(※訳注)
『奇跡講座』:W-173.1

※訳注:「私は一歩退いて、神に導いてもらう。」
ワークブック原文は、I will step back and let Him lead the way. (私は一歩退いて、彼に導いてもらう。)
中央アート出版社『奇跡講座』では、大文字の「彼」を「神」と訳しているが、今回本文中でバーバラが、「聖霊に導いてもらおう」と書いているため、章のタイトル「Let Him Lead the Way」は、「聖霊に導いてもらう」と訳した。

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