【徒然なる雑感】6.「大ママ」という呼び方

https://www.nhk.or.jp/music/s-oto/425452.html

KOHHさんというアーティストをNHKの「シブヤノオト」で知った。ラップ形式というのはあまり好んで聞くジャンルではないけれど、彼の歌にはなんだか引き込まれてしまった。カリスマと言われるのも納得。ラップ形式だけど、いわるゆラップのような感じではなくて、彼自身が感じたことを素直にことばにしてるという感じで、たしか、彼自身も作り込まずに沸き上がってきたものを歌にしてると語っていたような気がする。彼自身が経験してきたこと、彼の生活、人生が生々しく表現されているように感じた。なんとなく美輪明宏の「ヨイトマケの唄」と重なるような感じがした。「ヨイトマケ」はストーリー性が強いが、KOHHさんのラップは感情が強いという違いはありそうだけど。

その番組を何とはなしに見ていると、「大ママ」ということばが耳に入ってきた。家族のことを話す場面で、KOHHさんが自分のおばあさんのことを「大ママ」と呼んでいるのである。彼の母親は、少し精神的に不安定なところがあり、おばあさんに育てられたようなところがあるので、自分にとっておばあさんは母親のような存在なので「大ママ」と呼んでいるとのことだった。この「大ママ」という単語を聞いて、「おっき(い)おじさん」「おっき(い)おばさん」(※私は「い」の音は落とした発音してる)という言い方が浮かんだ。父方の長男であり長子であるおじさんとその奥さんのことをそう呼んでいた。小学生の頃までは「おっき」が何を意味するの分からなかったのだけど、中学生の頃に同級生が「おっきいおじさん」と言うのを聞いて、あー、「おっき」は「おっきい(大きい)」なんだと分かった。同級生も私と同じく、長男伯父さんのことを「おっきいおじさん」と呼んでいた。父の出身である大山の方言での確認ができていないのだけど、『西原町史』の言語編には次の語が立項されている。

  ウフアンマー「1番年長の伯母さん。呼称にも名称にも言います。」 

「ウフアンマー」は、「ウフ(大きい)+アンマー(お母さん)」という語構成である。「おっきいおじさん」「おっきいおばさん」は、「ウフ」を「大きい」に訳して「おじさん」「おばさん」に付けたウチナーヤマトグチなのだろう。標準日本語だと、「大おじさん」「大おばさん」は祖父母の兄弟を指すのだけど、それとは違うので、注意が必要だ。

一方、母方のおじさんたちの呼び方について。母は長子なので、兄弟はみんな年下ということになる。だから、向こうのおじさんたちを呼ぶときには、「ケンチャンおじさん(堅ちゃん+おじさん)」とか「トシボウおじさん(敏坊+おじさん)」とかになるのだけど、これらは「愛称+おじさん」という構成である。一見、変な感じに見えるけれど、「○○先輩」という言い方でも、「ケンちゃん先輩」みたいな言い方ができるので、愛称や呼称にさらに「おじさん」が続くのは特段おかしなことというわけではない。それにしても、家族や親戚の人たちをどのように呼ぶのかということはなかなかに興味深いテーマである。ちなみに、私は姪っ子たちからは「みー」と呼ばれている。「さとみ」の「み」である。「みーおばちゃん」とかいつか言われるのかな(笑)。

ところで、この「大ママ」ということば、珍しい言い方だなぁと思いつつググってみると、2010年の発言小町の相談コーナーで、義父母が孫に「大ママ」「大パパ」と呼ばせようとすることに対する相談があったので、少なくとも10年くらい前にはすでに作られていたみたい。とはいえ、「大ママ」「大パパ」なかなか広がってないのが現状かな。いや、そこそこ広がってるのかな。影響力がありそうなKOHHさんが使ってるのでそのうち広まるのかな。ただ、KOHHさんはおじいさんのことは「大パパ」とは呼んでないみたいで、彼にとって「大ママ」は特別なことばなのだろう。むやみやたらにことばを作ったり使ったりしているわけではないところはやはりことばを扱うアーティストだなぁと思った。

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