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さとラボmeetup! Vol.14 イベントレポート

 みなさん、こんにちは。さとラボミートアップ運営事務局の望月です。早いものでもう9月ですね。2020年下半期の始まりの記念すべき、2020年9月1日(火)19:30〜21:30@オンラインにて、さとラボミートアップ Vol.14が開催されました。

1 ミートアップのテーマと概要

テーマ:「カヤックに学ぶ!まちづくりとちいき資本主義」

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 今回は、面白法人カヤックの執行役員の方をゲストスピーカーにお招きし、「実際にまちづくりってどんなことするの?」「ちいき資本主義って何?」といった疑問に答えられるようなミートアップを開催しました。

【タイムスケジュール】
19:40-19:50 オープニング
19:50-20:10 佐藤さんご講演
20:10-20:20 学びや感想の共有タイム(ブレイクアウト)
20:20-20:25 ブレイクアウトでのトーク共有タイム(全体)
20:25-20:40 参加者と佐藤さんによるQ&Aタイム(全体)
20:40-20:45 休憩
20:45-21:15 参加者同士でのディスカッション(ブレイクアウト)
21:15-21:30 クロージング

<面白法人カヤックについて>
そもそも「面白法人カヤック」についてどんなことやってる会社なの?という疑問に対して、簡単ではありますが最初に説明させていただくと、以下のようになります。

・創業21年、上場6年目のインターネット企業
・伝統性の高い広告制作や、スマートフォンアプリの開発を行っている
・企画力と技術力で多くの広告賞等を受賞している
・地域にこだわり、地域に根ざした鎌倉の地域企業
・グループ会社の多くはライフスタイル系事業を行っている

佐藤さん曰く、地方自治体の取り組みとしては「拠点形成」や「暮らし支援」といったハード面が強い傾向にあるが、カヤックでは「ハード面とソフト面を切り離さない」ことに重きを置いているとのこと。だからこそ、「つながり」を意識したコンテンツ制作をしているとのお話でした。

※参照:面白法人カヤック公式HP

2 カヤック佐藤さんによるご講演

 まずはじめに、今回のゲストスピーカー佐藤さんのプロフィールをご紹介させていただきます。

【登壇者紹介】
佐藤 純一(さとう じゅんいち)
<役職>
株式会社カヤック グループ戦略担当執行役員
<プロフィール>
大学卒業後、大手電機メーカーの研究開発に従事。その後、技術系ベンチャー企業の立ち上げに参加。2004年に株式会社トラストコンベクションを創業。金融業や製造業における数千人規模のプロジェクトのリードからチームワークサービスの開発まで、より多くの人がチームワーキングの楽しさや充実感を得られるための様々な事業を運営。2011年、ビジョンに共感した面白法人カヤックに統合。執行役員に就任。現在は同社のグループ経営に関する戦略推進を担当。
また、同社がグループ戦略の根幹的位置付けとして鎌倉に根ざすローカリズム経営を標榜していることもあり、鎌倉をはじめいくつかの地域と協調しながら地域資本を活用した地域活性化を支援、これからの生活者感覚に寄り添う新しい住まい方の提案やエリアコミュニケーションに関する事業開発などを進めている。最近では新しい地域づくり、働き方やチームワーキングをテーマにした講演も多い。

実際にカヤックで「ちいき資本主義事業部」を担当される佐藤さんから、地域コンテンツ事業の内容や、カヤックとしての地域との関わり方などを教えていただきました。

 まず、カヤックの強みとして挙げられる”「コンテンツ的価値創造」の提供”について。「サービス的価値創造」と対照的に位置付けられるこちらの考え方は、社会における様々な物事を「コンテンツ」として捉え、コンテンツごとに存在する特有の価値観に着目し、多様化・個性化して新たな価値を創造する、というもの。

コンテンツ的価値創造:官能的で趣向的、楽しくて面白い、愛着をうむ
*独創的な物を作る→手間がかかる→儲けにくい。
サービス的価値創造:機能的で効率的・便利で安心安全・快適をうむ
*普遍的なのものを作る→汎用性が高い→儲かりやすい 

印象に残ったのは、以下の言葉。

”コンテンツには「好き」も「嫌い」もある。嫌いな人がいるということは逆に「愛着」をうむという良さもある。”

”街道沿いの景色はどこも同じ。どこのまちを見ても既視感がある。都市や地域も「個性的」になることで「愛着」をうむのではないかと考えてコンテンツづくりをしている”

<サービスや事例の紹介>

・地域事業の実績実例

まず最初に、長野県茅野市での婚活支援サービス「結日記」をご紹介していただきました。デジタルな時代にあえてアナログな「交換日記」という手段で男女が繋がる仕組みを整えたこちらのサービス。

地域では「婚活」のニーズはかなり高いとのこと。すでに地域に存在する「婚活パーティ」などのサービスの課題は「成約率」が低いこと。そこでカヤックとして考えたのが、「相手の内面をより深くより身近に知れる」交換日記型コンテンツ。日を追うごとに相手への理解が深まるページ更新の仕組みになっているとのこと。実際に過去には、1回の開催で167名の参加者のうち、5組のカップルが生まれたそう。「手で書き込めた文字だからこそ二人の距離を縮めやすい」という説明に、「なるほどな〜面白い!」と感じました。

※参照「結日記」

https://yuinikki.smout.jp/

他にも、シティプロモーションや地域の課題解決に向けての事業・サービスを多数展開しているとのことでした。

例えば、以下のような内容です。

・「タサいたま」(さいたま市 観光促進)
公益社団法人さいたま観光国際協会が、さいたま市の魅力を様々な切り口で紹介するサイト「ダサいたま」の企画・制作の支援。
・「小屋フェス」(長野県茅野市とSuMikaの共催)
新しい暮らし方提案につながるフェスを実施。別荘滞在者の年間滞在日数の増加につながるイベントを企画。
・「HATSU鎌倉」(神奈川県 地域とつながる起業家支援拠点)
神奈川県が初めて若年層をターゲットとした起業家支援拠点の設置、及運営事業の受託。
・八女里山賃貸株式会社(福岡県八女市 移住者向けの賃貸住宅)
移住トレンドが出てきた地域に(地域の材と地域の手で)賃貸住宅を供給する事業。 

<地域企業としての活動>

”「鎌倉」で僕らは「コミュニティ」を実践してます”

冒頭で佐藤さんはそうおっしゃいました。カヤックは鎌倉に拠点を置き、地域と溶け込みながら、「地域企業」として活動しているとのこと。

ⅰ オフィスづくり

「まちをオフィスに、オフィスをまちに」

鎌倉は土地の景観的に(景観条例などの関係で)、かつ不動産の流動的に、大きい建物が立てられない。したがって、小さい建物を分散させるほかない。実際に鎌倉にあるカヤックのオフィスも約14の拠点に分散されているとのこと。そして、カヤックの社員(全体で約330名、グループ全体で約500名弱)のうち、約110〜120名が鎌倉で暮らしているとのことでした。

まち:人が衣食住を共にしたり、働いたりする「最も接点の多い場所」

まちにオフィスが分散する→まちがオフィス化していく→まちがジブンゴトになる→主体性の高まり

例:カヤックのMTG時には、鎌倉市内の「御成通り商店街」(地元の人に愛される商店街)を社員が行き来することで、まちと社員が溶け込み、境目がなくなる。結果、社員は鎌倉を「自分ごと」と捉えるようになり、「まちをきれいにしよう!」と思うようになって、まちの浄化ボランティアに参加するようになるなど、まちを大切にしようとする意識が芽生える。

ⅱ コミュニティ形成

「つながるまち」鎌倉をつくりたい

民間で「このまちをどういうまちにしたい!」と自分たちで宣言してもいいじゃないか!ということで以上のようなコンセプトを立てたそうです。

カヤックは、鎌倉のコミュニティとして”「つながるまち」鎌倉にしよう!”という宣言をして、まちづくりの活動をしてきたとのお話でした。

「まちの〇〇」シリーズ

まちの社員食堂

鎌倉は観光地であるが故に、レストランや食堂の値段設定が高い。若者の社員が毎回高いランチなど食べられない!そんな声に答えて、カヤックが考えたのが「まちの人(特に、まちで働く人たち)が共同で使える社員食堂」でした。

「まちの社員食堂」の特徴:
・ランチは¥900で食べられて、ディナーは¥1000で食べられる
・地域のお店が約60〜70の提携店舗が日替わりで食堂のメニューを提供してくれている
・食堂で人との「つながり」が生まれる


「なぜ、こんなにも多くのお店がメニューを提供してくれるのか?(鎌倉のお店は観光客に人気があるため、自分たちでも行列ができるほどの人気を得られるのではないか?)」という問いに対しては、「地域のお店は、”地域のお客さんにこそもっと「ディナー」を食べて欲しい”という思いがある。一方で、地域の人たちはお店に対して、「観光客抜けのお店だからどうせ18時に閉店しちゃうんでしょ」と思っていてなかなか夜に来店してくれない。そこで、「まちの社員食堂」を通じて、より多くの人へのディナーの提供を実現することができる、という点から、多くのお店に賛同をいただいているとのことでした。

他にも、「まちの保育園かまくら」(カヤック×豊島屋の共同運営による保育園)や「まちの人事部」(鎌倉の事業者の人たちが合同で人材採用していく仕組み)なども、展開されているとのことでした。

※参照:「まちの〇〇」シリーズ

<ちいき資本主義>

ここまでもみてきたように、カヤックは、民間企業だけれども、自分たちで「まちづくり」事業をやってしまっている「民間企業・民間団体が中心となって”自分ごと”としてまちをつくる」ことをもともと『鎌倉資本主義』と呼んでいたそうです。カヤックが鎌倉でやっているようなことを他の地域でもやりたいという声が出てきたので、他の地域でも応用可能な考え方として生み出されたのが「ちいき資本主義」だとのお話でした。詳しくは、次のQ&Aで説明いただいたのでそちらをご参照ください!

※参照:「ちいき資本主義事業」

3 参加者と佐藤さんによるQ&Aタイム

 ここから先は、上記のご講演を聞いての参加者の感想を共有した後に、参加者と佐藤さんによるQ&Aタイムでのトーク内容をまとめていきたいと思います!(※出た意見の中で一部を取り上げてご紹介させていただきます)

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<参加者の感想> 

・「ビジネス」として地域事業を展開することは、「ボランティア」などの活動とどのように違うのかが気になる
・「結日記」において、利用者のデジタル情報がない中でマッチング率が高いのはすごいなと感じた
・「まちの〇〇シリーズ」面白そう!
・カヤックの方々が「まちづくり」にそんなにも熱意を傾ける動機やモチベーションが気になる

<Q&A>

Q:「ちいき資本主義において『地域資本』を見つける着眼点は何か?」

A:そもそも、再度「ちいき資本主義」を定義すると以下。

ちいき資本主義:地域企業や民間コミュニティが中心となり、地域特有の環境資源や社会関係などを活用し、ジブンゴトとして地域を豊かにしていくという考え方。

であれば、「豊かな地域」と言ったときに、何を考えるか?それを考えるにあたって、カヤックでは「地域資本」に3つの軸を用意した、とのこと。

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地域環境資本:自然や文化
地域社会資本:人と人とのつながり
地域経済資本:財源や生産性

そして、これらには”何かを元手に何かを増やす”という取り組みを循環的に続けていった結果、地域資本の総量全体は増大していくという考え方がベースにある、とのお話でした。どれか一つの要素だけが長けていて、他の要素が不足していると、なかなか持続可能な地域として機能するのは難しいとのことでした。

したがって回答としては、以上の3軸で、対象地域の「地域資本」を見定め、「地域資本」の最大化にむけて事業的なアプローチをしているとのことでした。

Q:「特定の地域と事業を始める”きっかけ”は何か?」

A:そもそもカヤックの社員だけで多くの地域と関わるのは難しい。その中でも「特定の地域と関係を持つきっかけ」としてまず上げられるのは、「ご縁」。親しくしていただいている方から紹介されたり、問い合わせをいただいたり。そのような偶然の「人とのつながり」を大切にしている、とのこと。

ただし、カヤックでは「ビジネス」として地域事業を展開している。何をやっているか?というと、「地域資本の最大化」事業。すなわちこれは「投資」のアクション。したがって、「その地域は投資するメリットがあるか?」という観点でお付き合いする地域を見定めているそう。

「カヤックが関わることで地域の価値”Value"が上がる」すなわち「その地域の地域資本が最大化する」と判断できた地域とはしっかりと根を張ったお付き合いをするようにしているとのこと。逆に言えば、「しっかりその地域の価値を上げない限り、利にならない。」だからこそ、その地域にコミットし、確実に地域が豊かになるように努力するとのお話でした。

つまり、地域事業をビジネスとしてやっている場合、地域を「投資先」として捉えることが重要、ということですね。

4 まとめ

 さて、今回のミートアップは、面白法人カヤックの佐藤さんをお招きし、以上のような内容でお送りしました。いかがでしたか?

筆者の私は、Q&Aタイムで「カヤックのちいき資本主義事業部で働いている方にはどのような人が多いですか?」と佐藤さんに質問させていただきました。すると「地域に興味がある!という人ばかりではないんですよ。ほとんどがクリエイターです。クリエイターの人×ローカルの人というカウンターパート、つまり両極端にいる人たちが交わることで新たな可能性や価値が生まれやすいんです。」と佐藤さんは答えられました。それを聞いて、私の頭の中で地域と関わる上での新たな方程式が浮かびました。それは、

現地のニーズ×”クリエイティブな要素”=新たな価値創造

です。改めて、カヤックさんの活動に感心するとともに、さらなる興味・関心が湧きました!私自身も非常に学びの多い回となりました。

引き続き、さとラボでは地域をテーマにしたミートアップを開催していきますのでお楽しみに!

最後までご愛読ありがとうございました🙇‍♀️

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