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「つくる。楽しむ。暮らす」~中国山地の暮らしの「確かさ」を伝えたい 「みんなでつくる中国山地」第2号から

 10月に発刊した「みんなでつくる中国山地」第2号。私は今回、島根県益田市で農業や山仕事をして暮らす中尾さん夫妻に取材した紀行も担当しています。

ゼロからやり直すことを恐れない。この本の作り方

 この本は、タイトル通り、「みんなでつくる」本です。事前に決めたテーマに沿って取材をして、そのテーマに沿った原稿を書く。という、普通の作り方ではなく、取材をしてみて、テーマ設定の間違いに気付いたら潔くゼロから組み立て直す。現場で気付いたこと、感じたことに正面から向き合う。メンバー同士でとことんまで議論して、疑問や違和感に蓋をせず、納得いくものを作り上げる。そういうふうにして、出来上がった本です。

 私が原稿を担当した、紀行「つくる。楽しむ。暮らす。過疎を生き抜いた『確かさ』」の取材では、実際に現地で中尾さんのお話を聞いてみたら、私たちのテーマ設定自体に無理があることが分かりました。長年書く仕事をしていて、めったに思うことがないのに、一瞬、「書けないかも」という思いがよぎりました。この企画自体がなくなるのではと思ったこともありました。それでも、私たち取材メンバーは、とことん話し合い、テーマ設定を取っ払って、現実から逃げずに書くことを決めました。

私が伝えたかったこと。中国山地の暮らしの「確かさ」

 中尾さんの案内で、中尾さんの暮らしの舞台である畑を歩き、中尾さんが先祖代々受け継いできた山や田んぼを見ながら、じっくりとお話を聞かせていただきました。「自分たちで食べる分だけ」の野菜を作り、体を動かし自分で作ることを楽しんでいる中尾さんの暮らしぶりや、この地に暮らし続ける思いを綴りました。

 私がこの紀行を書くときに心がけたことは、私が見聞きし、感じたことを「ありのまま」に表現することでした。私が思い描く理想を押しつけないこと。過度に美化しないこと。安易に分かったような気にならないこと。常に自分に言い聞かせていました。録音を何度も聞き返し、メモをしたフィールドノートを読み返し、写真をくまなく見て、あの場にいたときの感覚を思い出し、パソコンに向かっていました。

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出来上がった本を手にして

 出来上がった本を手にしてページをめくりながら、とにかくスゴイ本ができたと、心が震えました。写真とデザイン、編集の力が加わって、本当に素晴らしい紙面が生まれました。出来上がった本を中尾さんにお届けしたところ、温かいお礼のお電話をいただきました。「嬉しくて何度も読み返している」との言葉に、胸が熱くなりました。

 過疎をくぐりぬけてきた中尾さんの暮らしの「確かさ」、自分で「つくる」暮らしの楽しさ。これまでの中国山地の暮らしが決して理想だとは言えないけれど、これから持続可能な地域社会を目指して、理想を追い求めていくための基盤になるものがここにはあるということを、少しでも感じてもらえれば嬉しいです。

 私たちの思いが詰まった第2号。面白い企画が盛りだくさんです。少しずつ、じっくり味わって読んでみて下さい。少し時間を置いて読み返すと、そのたびに新しい発見があるのではないかと思います。

 気になった方は、ぜひホームページをチェックしてみてください。ネット販売のほか、山口県内の取扱店も掲載していますので、お近くにあればぜひ手に取ってみていただけると嬉しいです。

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