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冷え性女子、ダラットの寒さを知る。

ベトナムなのに? 震え続けた一日

「……、舐めてた」。
吹きっさらしのカフェで、ようやく給仕されたコーヒーカップに手を伸ばしたとき、自分の腕が大きく震えていることに気がついた。まるでコントのように。11月半ば、重くのしかかる曇天、高台にあるオープンエアの空間。熱かったはずのカフェラテがあっという間に冷めていくのを手のひらで感じながら、寄る辺のない我が身をフビンに思い始めていた。

「なぜ私は薄手の長袖一枚しか持ってこなかったのか」。

こんなに寒いと思っていなかった。「2年間暮らすことになるその前に、どんなところか下見」と登ってきたダラットは、語学訓練を受けているサイゴンとは全く違った。11月と言えどサイゴンは日本で言う初夏の陽気で、夜も冷房がないと寝苦しいほどだった。いくら標高1500mの高地とは言え、ダラットも同じベトナム南部に位置している。ちょっと肌寒く感じるくらいだろうとタカをくくっていた。が、間違いだった。
「ここ、ベトナムなんですけど……」。つぶやいてみても虚しく響くだけ。外を見やるといつの間にか小雨が降り始めており、街は一層冷え込んで見える。
ダラットの第一印象、それはただただ「寒い」に尽きた。 

ダラットはなぜにここまで寒いのか

ダラットの寒さについて考えてみよう。一般的に気温は標高差1000mで6.5度下がる。つまり1500mのダラットはサイゴンより10度ほど低いことになる。年間気温は25〜15度程ということだ。また、夜でも10度を下回ることはまずないと聞いている。なぜここまで寒く感じるのか。それはやはり「雨季」ということが挙げられると思う。ダラットは8月から本格的に雨季になり12月まで降り続く(※年によって時期にズレがあります)。日が照らなければもちろん寒く感じる。そこに雨である。湿度が身体にまとわりつき体温を奪う。また、標高の高さから天候が変わりやすく雨が降ったりやんだりを繰り返すのだが、気圧の変化ゆえに風が生じる。風が吹けば当然、体感気温が下がるのである。 そういうことなのだと思う。

さらに、ここに人的被害も加わる。ベトナム人はどうもオープンエアが好きらしい。自分たちは厚手のコートやジャケットを羽織った上で、ドアや窓を開け放つのである。公共機関もオープン! カフェや衣料品店もオープン! そして走行中のタクシーも「閉めて」と頼まない限り窓は基本オープン! もちろん暖房なんてモノはない。アウターを持たない者は、悲しいかなどこに行っても寒さをしのぐ手段はないのである。
(※四ツ星以上のホテルでは暖房があります)

快適な暮らしに向けて防寒対策

「冷え性だけど、たくさん着るのは嫌い。だって重いから」。
日本にいる時の私はそんなヤツだった。寒さ対策は完全に空調頼み。起きる1時間前に布団の中からリモコンでエアコンをつけ、部屋が温まってから起きる。職場までは愛車でガンガンに暖房をつけ、ほとんどドアトゥドア。夜は長風呂につかり、充分に温まってから布団に入る。寒いの大っ嫌いなんだもん。みんなこんな感じでしょ? って、違うかな。
しかしそんな空調はダラットにはない。シャワーはあれども湯船はない。2年間の生活をより快適にするために物品追加は急務だった。サイゴンに戻った私は日本に住む家族を遠隔操作して必要なものを追加購入した。念のためヒートテックを2枚持ってきていたが、3枚買い足した。そのうち1枚はスーパーヒートテックにした。アウターはダウンを持ってきている。しからば、足。パンツスタイルであれば心配はないけれどスカートもあるので、裏起毛のある黒タイツを3枚追加した。そして冷え性女性が怠ってはいけないのが腰回りの保温である。ハラマキを買った。日本だったらハラマキとカイロは1セットだが、さすがにカイロを買うのは際限がないので諦めて湯たんぽを送ってもらった。お湯ならいつでもどこても沸かせるから。ふぅー、これで安心。
事実これでなんとかダラットの雨季と、気温が最低まで下がる12月を越えることができた。

バスタブが無くても冷え知らずなワケ

しかし、物品が揃っても、どうしても寒さをしのげない場所がひとつだけあった。シャワースペースである。水周りなだけに、そもそも寒いというのもあるのだが、たまにお湯が出ない、お湯が足りないなんてことが起こるのである。
ダラットに来てはじめの頃は、同僚の家にお世話になっていた。いわゆるホームステイだったのだが、こちらのシャワースペースがどうも私と相性が悪かったらしい。どんなに待っても、どんなに操作してみても水しか出ないことがあった。地獄である。その度に、凍えながら着替えて同僚を呼びに行ったものだった。
半年程して引っ越し、今の安ホテル住まいになった。ここではお湯が出ないということはないが、使いすぎると段々ぬるくなるので、出しっ放しは禁物だ。シャワー中に凍えるということがトラウマになってしまっており、十分身体を温めてから浴びることにしている。もちろん湯船はないので足湯である。バケツにお湯をためて足を付ける。すぐ冷えるので、あらかじめ沸かしておいた熱湯を足しながら20分ほどつけると身体中が温まる。最近はバスソルトなんかを使って足湯自体を楽しめるようになってきた。これでシャワータイムを暖かく恐怖なく乗り切っている。

寒さは嫌えども、やはり日本の冬恋し

寒さ対策ができるようになった頃に帰国だなっとしみじみするが、早く空調や湯船のある日本に帰りたい気持ちは正直大きい。いくら寒いと言えどもダラットの寒さは日本の寒さの比ではない。それでも、前述の通り温度調節が自分でできるし、なによりも寒さゆえの楽しみ(鍋であったり、熱燗であったり、やっぱり家族とコタツみかんかな!)があるからだ。それとも、あの極寒を忘れてしまっているからこんな呑気なこと言っていられるのだろうか。
それでもいい。いずれにせよ「今年の冬は2年ぶりの日本で」と思いをはせつつ、今日も足湯でマッタリしているのである。

#ダラット #ベトナム #dalat #vietnam  

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