「花束みたいな恋をした」を観たんだ

※記事中に物語のネタバレになる可能性がある記載があります。

1月に映画を見てすぐ8割方書きあげたくせに、まとめかたがわからなくなり断念していました。が、昨日深夜に読み返したらやっぱり書くべきだと思って書き上げてみました、以下本文ですどうぞ。


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すこし前から、お花を愛でる気持ちが生まれてきた。
それまでもお花を見て「きれいだな」とは思っていたし、たまにいただく花束は純粋に嬉しかった。けれどそれはお花だから、というよりもプレゼントに込めてくださった想いに対してだったように思う。
それがこの1年くらいで、お花を飾りたいという欲が生まれた。ステイホームということばに違和感を覚えなくなったころ、100均で100円に見えない小さな花瓶を買って、お花屋さんで500円のブーケを買った。飾った。じぶんの意思で持ち込んだ部屋の隅の600円ばかりの彩りに、こころが満たされる気がしてたまーにやっている。人生に喜びやご褒美が増えるのはきもちよい。


最近ではセルフサービスのお花屋さんも多く、店頭に並んでいるお花や葉っぱから自分ですきなように花束を作ることもできる。花屋の店先に並んだ、いろんな花を見ていた。完全に「世界に一つだけの花」の冒頭状態。
目についた花を中心に、合わせるお花や葉っぱを選んでいくのだが、これが想像以上に上手くいかない。すでにブーケになっているものを参考に、なんとなくつむいでいくのだが、なかなかピンとこないのた。選んではすでに左手に束ねられたものに重ねては、「ちがう?」「いや、いける」「うーんでも、」「これだ!」を繰り返す。そしてすこしの歪さも感じながら、じぶんだけのオリジナル花束ができあがる。それはなんだかとてもたいせつなもののように感じられた。


「花束のような恋をした」を観た。
先日の記事で、脚本を買った日の話を書いたけれど、とにかくこの映画を楽しみにしていた。
わたしは邦画を見る割に(?)ドラマをあまりみない。今まで見たドラマを書き出そうと思えばできるレベルで見た作品は少なく、そして代わりにそのほとんどを強烈に覚えている。
そんな中で圧倒的に多いのが坂元裕二脚本のものなのだ。
「わたしたちの教室」にはじまり、近年では「カルテット」がわたしの好き好きドラマ1位である。(いま、現在放送中の『天国と地獄』が塗り替えそうになりつつあるが)
その坂元さんが脚本を書き、菅田将暉さんと有村架純さんが演じると言うのだから待ち侘びていた。

お話は、菅田将暉さんと有村架純さん演じる男女2人の5年間のラブストーリー。
2人の間には身分の差のような立ちはだかる壁もなければ、どちらかが大病を患ったり、衝撃の過去が明らかになることもなく、もちろん入れ替わったり、パラレルワールドに行くこともない。特異なキャラクターでもない。
すこしの奇跡を交えながら出会い、生活し、別れる。
その過程が、坂元さんの脚本によりリアルで繊細に紡がれていく。

この2人の物語は、絹と麦、2人の物語でありながら、こうしてこの世に生きているすべての人間に起こりうる物語だった。

彼らはファミレスで注文違いのパフェを食べ、350mlの缶ビールを飲みながら夜の街を歩きながら会話し、時にはカフェのコーヒー、時にはコンビニのコーヒーを片手に帰路へつき、ファミレスで別れ話をする。

ていねいに相手を思いやる日もあれば、そうでない日もある。ひとつひとつのできごとを、大きな愛しさを、小さなすれ違いまでを すでに持ち合わせた経験へと束ねていく。

それはタイトルに重ねて、まるで花束をつくりあげていくように感じられた。
うつくしいものにしようとしながら、そうはいかない過程も含めて自分らしさが添えられて完成していく花束のように。

きっと、恋に限らず生活とはそういうことの積み重ねで、そうやってできていく「思い出」が、部屋で小さくも豊かさを与えてくれる花束のように、こころの中で咲き続けるのだとおもう。


追伸:わたしの家にはいま生誕祭でいただいた大きな花束が飾られています。ありがとう。

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