トラウマの心理療法について整理をしてみよう2 安全の技術その4 少しずつ進もう
シートベルト、ブレーキ、エアバックは確認した。ライトも点くし、エンジンの調子も悪くない。地図はカウンセラーが持っているし、お互いの信頼関係も作りながら強化していこう、カウンセラーはこころと心理療法の、クライエントはクライエント自身の専門家として進んでいこうという気持ちも持てた。
トラウマの心理療法だけではなく、カウンセリングもそんなふうに例えられうのかなと思います。トラウマの心理療法は、きれいに整備されたトラックを回るスピードを競うレースよりも、道なき道を進みながら、無事に目的地に到着することが目標になる旅に似ていますね。おそらく、ですが。
取り組むからにはたくさん進みたい、一気に処理したいという気持ちももちろん十分にわかります。長いこと苦しんできていますし、生活に実際に問題が出ていて、生きにくさに直接つながっているのですから。
けれども、全体の方向を示す地図を持っていて経験のあるカウンセラーと言っても、はじめから目の前のクライエントのほとんどのことを知っているわけではありません。走りやすい道だけではなく、多くの場合、穴が突然空いていたり、大きな石が行く手を防いでいたり、行けるはずと思っていたところが行き止まりだったり、あるは悪天候など、ほとんどの場合走り出してみなければわからないことも多いのです。
車の旅の比喩をそのまま使うと、
カウンセラーの持つ地図には、「治療計画」、「理論的な背景・技術」、「クライアントの個人的な生活史」「現在の状況」「ものごとの捉え方の傾向」などが書き込まれています。
日々の車の整備は、カウンセリングのスキルや知識でしょうか。カウンセラーが常にスキルアップし、新しい情報を学び続けること。また、クライエント自身のリソースを増やすことや利用が上手になることを示しています。
運転技術はクライアント自己認識能力や問題解決能力に例えられますね。クライアントが自身の内面を探求し、変化を促すプロセスです。心理療法・カウンセリングが進むことによって、より走りやすい道になっていき、より適応的な運転ができるようになっていきます。
そして少しずつ心理療法が進むことには、心理療法での安全の確保以外にも
・段階的にトラウマを処理していくことで、クライエントの心理的な負担を軽減することができます。
・小さな成功体験を積み重ねること自体が、クライエントの自信を深めカウンセリングや生活でのモチベーションの維持に繋がります。
というようなメリットもありますね。
すべてが書かれた地図はありませんので具体的な目にしたことを書き込みながら、大きな怪我をせずに無事にゴールを目指してたどり着く。そのためにクライエントとカウンセラーは協力しながら、特に初期の頃はそうですが、少しずつ進むことはその事自体がとても大切です。もちろん注意していても不測の事態というか、どうしても大きなトラウマを一気に扱わなければいけない場面が出ざるを得ないこともあります。そういった事もふまえて、安全に気を配りながら少しずつ進むことはよいことなんだと、トラウマに取り組んでいきたいですね。