トラウマの心理療法について整理をしてみよう2 安全の技術その3 クライエントとカウンセラーの間主観的関係
クライエントとカウンセラーとの関係性。間主観的関係も、心理療法において、安全に大切な役割を持ちます。
カウンセリングにおける間主観的関係とは、「カウンセラーがクライエントを、そしてクライエントがカウンセラーを理解しようとする関係」のことです。主観と主観が出会い、交換し合い、それぞれに影響を受ける場面。カウンセラーとクライエントだけではなく、あらゆる関係性において間主観的関係が存在します。
特にトラウマの心理療法においては、程度はあっても傷に触ることが必要とされます。その際に、カウンセラーとクライエントの間に信頼できる関係性ができている、あるいは信頼を作っていこうという意欲があることは、トラウマを扱う際の安全に直接関わることです。信頼できないなという相手に対して、傷ついているところやとても個人的なことをオープンにするわけには行かないですから。
カウンセリングの効果のコラムでも触れたように、カウンセラーとクライエントとの関係性はカウンセリングの効果だけにとどまらず、心理療法の安全性にも大きな役割を果たします。
それでは、カウンセラーとクライエントとの間主観的関係はどのようにして安全の装置として働くのでしょうか。もう少し詳しく考えてみましょう。
・お互いを深く理解する・・・カウンセラーはクライエントの言葉だけではなく、表情や態度など、様々なサインからクライエントを理解しようとします。また、クライエントもそのようなカウンセラーの言葉や態度から、自分を理解しようとしていると感じられます。理解しようとする人がいるところで、少しずつトラウマを開示することができるようになります。
・共感・・・共感を通じてカウンセラーとクライエントに深い信頼関係が築かれます。共感があることで、クライエントは自分の気持ちや自分に起こったできごとを安心して打ち明けられるようになります。またカウンセラーも共感することによってクライエントの心や状態に寄り添うことができるようになります。
・ともに問題解決を行う・・・カウンセラーとクライエントが協力して、問題の解決策を探していきます。お互いの意見を尊重し、ともにに成長していく過程の中でクライエントは自信を取り戻し、困難を乗り越える力を身につけることができます。
・新たな意味づけ・・・カウンセラーとの対話を通して、クライエントは過去のトラウマ体験に新たな意味を見出すことができます。これは、トラウマ体験を単なる苦痛な出来事として捉えるのではなく、自己成長の機会として捉え直すことを可能にします。
・自己整合性の回復・・・トラウマ体験は、自己イメージや自己肯定感を大きく損ないます。間主客観的な相互作用を通して、クライエントはより統合的で肯定的な自己イメージを再構築することができます。
カウンセラーは回復に向かっていく際に地図を持つ専門家です。一方で、クライエントはその人そのものの専門家です。カウンセラーとクライエントが間主観的関係においてともに協力できるとき、より安全で効果的な心理療法が可能になります。
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