トラウマについて整理してみよう 3  「トラウマへの対処」

トラウマは安全の感覚自体をいためつけてしまいます。そのため、影響はこころとからだの関わる私たちの生活のあらゆる面に広がります。人によってそれは体の症状だったり、精神的な状態だったり、人間関係の問題として出たり、あるいはそれらを含む生活のほとんど全てに影響が出ることもあります。

このように、私たちの生活の多くの面に影響を与えるトラウマ症状になってしまったときに、どのような対応が可能なのでしょうか。トラウマをかかえることは厳しいことではありますが、対処によって回復することもわかってきています。効果のある心理療法も開発されています。


1.知ること
どのようなカウンセリング、心理療法にも言えることですけれども、「知ること、知ろうとすること」はとても大切な回復のための力となります。

知ることは本を読んだりインターネットで調べたりしたときの一回限りの知識の受け取りとかだけではありません。自分の状態や知った知識を用いながら、カウンセリングや周りの安心できる人との関係の中で、話をすることや一緒にいること、安心感を感じたり理解を深めることで作り上げていくものです。そのようにして知る活動自体に、私たちの心身を回復させる大きな力があります。

また、「ポリヴェーガル理論」、「アタッチメント(愛着)」「自己調整・相互交流調整」は、様々なトラウマの心理療法に共通する基礎知識としてあるものです。こういったことを知ることも自分の状態をうまくコントロールしたり、心理療法をより効果的に行うためにも大切な知識ですね。


2.安全・安心を求めること
トラウマの症状にとって、安全・安心はとても大切なものです。自分や他の人たち、あるいは世界との関係において「安全・安心」がおびやかされている状態がトラウマの中心の課題でもあります。

「こころやからだの安心感」は心理療法が必要なところです。一方で「現実的な安全、からだの安全」については、ある程度現実的に対処される必要のあるところです。しっかりと安全であると感じるには現実の安全だけではなく、こころの安心・安全がないと難しいことですから、少なくても今体がおびやかされる心配はないことを目指すことが大切です。なるべくなら体もこころも安全に過ごせる。そのように生活の状態を調整していきたいですね。


3.カウンセリング・心理療法
これらのことは独立して行われるのではなく、同時並行的に行わるものですけれども、知ること、安全・安心を求めることともに、カウンセリングや心理療法もトラウマへの対処として効果があります。

近年のトラウマへの心理療法は、「からだ・こころ・認知・脳機能・関係」への働きかけを意識した、総合的で、より安全で速やかな効果が期待できる心理療法が増えてきています。エビデンスも蓄積されてきており、積極的な回復を目指しているものです。


トラウマは周りのものの見え方自体をとて苦しいものにしてしまいます。回復すること、良い方向に変化することがうまく想像できずに、回復に期待を持つことそのものが難しいというときも多くあります。そういった状態でも、回復する方法や考え方があるんだ、変わっていくことができるんだ、そういう思いを目にすることも大切ですね。

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