トラウマの心理療法について整理をしてみよう2 安全の技術その1 内的リソース

安全の技術にはどのようなものがあるか。前回は安全の技術にはカウンセラーとの関係性、自分の内的なもの、外的なものがあるというお話をしました。そこから話を続けていきましょうか。

はじめに今ある内部のリソース(自分のもつ資源)から考えてみましょう。とても苦しいことがあった生活の中でも、あるいはだからこそ、自分が忘れてしまうことも多い自分の中の強みを確認しておきたいです。また、なるべく機会を捉えて思い出したいものです。


カウンセラー: 内的なリソースにはいろいろなものがあります。例えば、つらい体験をしたけれどもここまでやってきたということ、自身の持つ信念や希望。苦しい中でも誰かへの思いやりを持ってきたこと。認知能力。感情をコントロールする力。グラウンディング。ボディリソースなどが挙げられます。

クライエント: それらを全部持っているとは思えません。でも、一部はあるかもしれません。

カウンセラー: そうですね、一つずつ見ていきましょう。まずは、つらい体験を乗り越えた経験から。これまでたいへんな状況・生活でもここまでやってこられたということは、自分の中にリソースがある証です。

クライエント: これまでにたいへんなことを乗り越えたことは確かにありました。その時のことを思い出すと、少し自信が湧いてきます。

カウンセラー: その感覚を大切にしましょう。そして、次に信念や希望について考えてみましょう。どんなたいへんなな状況でも、何か信じるものや希望を持ち続けてきたはずです。

クライエント: 希望なんて感じたことはありませんでした。ただ前に進むしかないという感じでした。でも、それも一種の信念かもしれませんね。

カウンセラー: その通りです。信念や希望は、自分を支える大切な内的なリソースです。また、他の人への思いやりを持ってきたことも、あなたのリソースです。

クライエント: 他人への思いやりは、大切にしてきたと思います。それが自分の支えになっていたかもしれません。

カウンセラー: それも大切なリソースですね。さらに、認知能力・考える力や感情をコントロールする力も重要です。これらを活用することで、たいへんな状況に対処することができます。

クライエント: ときどき感情のコントロールがとても難しくなってしまいます。けれども少しずつできるようにしてきました。

カウンセラー: そう考えられること、感じられることは大切なリソースですね。最後に、グラウンディングやボディリソースについて話しましょう。これらは、心身の安定を保つための技術です。

カウンセラー:グラウンディングは意識を体と体につながっている地面に向けることで、心身を落ち着かせ、体感と意識を「今ここに」現実に結びつける技術です。また、ボディリソースは体の今の状態を感じることで落ち着きを取り戻し、グラウンディングと同じように「今ここに」いるための技術です。また、トラウマを処理する際には「パーツの居場所」としてつらさを処理するための重要な気付きの場として機能します。



たとえそう思うことや気づくことが難しくても、毎日を生活している私達には必ず何らかのリソースがあります。たとえばこのように、カウンセラーともに自分の内的なリソースを再確認しそれを活用することで、トラウマに向き合うための「安全」を少しずつ作り上げることができます。

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