トラウマについて整理してみよう 2  「トラウマの症状」

トラウマによってつらい思いをしているひとはたくさんいます。トラウマは「自分の対処能力を圧倒してしまうできごと」から引き起こされるものであるのなら、対処能力が圧倒されてしまったとき、私たちには一体どういう事が起こるのでしょうか。トラウマの症状とはいったいどういうものなのでしょうか。

一口に「トラウマの症状」とは言ってみても、それはとても広く様々な症状として現れます。何と言っても、トラウマは、私たちの脳の働き、身体の状態、こころのあり方を変えてしまいます。トラウマの症状はさまざまなところに「生きづらさ」として見られるのですね。

トラウマで代表的な症状と言われるものには、「再体験・侵入思考」「回避」「否定的感情と認知」「過覚醒」「解離」といった状態があげられます。

「再体験・侵入思考」は文字通りショックな出来事が今起こっていることのように繰り返し体験されたり、考えたくないのに勝手に頭の中で脈絡なく急に思い出されたり、考えずにはいられない体験のことです。考えることが自分の思い通りにならずに、今のことに注意を集中することができなくなってしまいます。

「回避」は人やもの、場所や行動を避けてしまうこと。それだけではなく、考えることや、感じ、関係性、経験といったものも避ける対象となってしまいます。もちろんそれはつらいから避けてしまうのですけれども、生活そのものや考えることも狭くなってしまってしまいます。

「過覚醒」は主に身体の症状として現れます。不眠やじっとしていられない。イライラしたり頭の中が忙しくて、落ち着いてリラックスすることができません。そのため、胃腸の消化器官の不調として現れることもあります。空気が十分吸えない感じがしたり肩こりや頭痛なども目立ちますね。

「否定的感情と認知」は不安、落ち込みを中心に、怒り、嫌悪感、罪悪感、恐怖、緊張といった感情を多く感じることです。また、自分や周りの人やものごと、将来に対して悲観的になっている状態です。「自分はダメだ」と考え勝ちになってしまったり、「まわりの人たちは迷惑とかんじているだろう」とか「自分は嫌われている」と考えがちになるじょうたいです。

「解離」は近年特に注目される症状です。いろいろな段階がありますが、現実感が薄くなること、自分自身とのつながりが感じにくくなること。世界との距離ができてしまうこと。こころとこころ、体とこころ、自分と他人、過去と現在、自分とものやこと、いろいろなものと隙間ができてリアリティーを感じにくくなってしまうことを意味します。

ここに挙げたものだけに限らず、トラウマの問題は多くの場面に生きづらさとして表れます。体調だったり、気分だったり、考えだったり、人との関係だったり、脳と体とこころの関わるところ・・・言うなればそれは私たちの生活のすべての場面で問題となることがある、ということでもあります。多くの場合、気のせいだ、自分が弱いから、そんなふうに自分や誰かを責めてしまいがちですけれども、一度立ち止まってみて何かしらの問題があるのかもしれないと考えてみることは大事ですよね。

トラウマは対処することや変えていくことができるものでもあります。知ること、相談すること、専門的な支援を受けること。こうしたコラムを読むことも大切なトラウマへの対処のひとつなのです。

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