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モンゴル体験、その後の目と耳 1

0 はじめに / 1 なぜ行ったか / 2 行き方 / 3 建物 / 4 合宿の感じ / 5 馬に乗る / 6 馬を知る / 7 草原のディテール / 8 服 / 9 鞍のマット / 10 祭り

0 はじめに

2019年7月、「モンゴル武者修行」という名の団体旅行か合宿のようなものに参加した。その経験自体が新鮮さと驚きに満ちたものだったのはもちろんのこと、参加をきっかけに、日常の中に意外とモンゴルに関連するものや動きがあることを認識しはじめて、気づくたびに、ちょっと面白い。

モンゴル合宿の記憶、その後のモンゴル関連で目と耳にひっかかってきたことなどを一度書き出してみたくなった。

なお、頭から言葉で出せたものだけを書いているので、全容は書けておらず、情報としての有用性は極めて薄いと思います、あらかじめご了承ください。

1 なぜ行ったか

モンゴル自体にものすごく思い入れがあったわけではなく、自分にとって、これまでにない体験をしてみたかった、という気持ちが動機としては最も強い。

それまでの海外体験といえば、ヨーロッパか台湾など、自分イメージにおいてアグレッシブでなさそうな、つまり危機管理能力低くても何とかなりそうな国に1人で行き、ひたすら美術館や展覧会を巡る、というものばかりだった。次第にその行動パターンだけでは物足りなくなってきたところだった。

動機につながる興味といえば、それらしく見えるもの、程度のあいまいなの含めて、システムを盲目的に頼ったりせず、自分で考え、自分のポテンシャルを活かして生きている人たちに憧れがあること。DIY、DIWO、小商い、セルフビルド、独立系〇〇、等の文言には、つい目や耳が反応する。

それで、この「モンゴル武者修行」を主催したりして、自分に合った「ナリワイ」を複数組み合わせていく生き方を推奨する伊藤洋志さんの活動は気になっていた。2019年2月頃、仕事でよい機会が作れたので、レクチャーへの出講を依頼し、武者修行含めさまざまなナリワイの話をしてもらった。レクチャーは好評で、良い記憶として残っている。

今回の参加については、決められたスケジュールに合わせて仕事を休む、ツアーになることにより一人旅よりは確実にかさむ出費、に、自分が参加するという発想には繋がらず、全然現実的に考えていなかったが、その後しばらくして、募集開始の知らせを見た時、あれ、行けるかも?と気づく。

その夏頃に、ちょうど仕事を辞めることにしていたので、有給休暇を充てられる、そこまで高くない。自分で調べて一緒に行ってくれる人探して、は想像できないし。団体旅行に1人、は他の人と楽しい時間を過ごせるか、嫌な思いをさせないか心配だけど、まあ主催者との面識はできているし、この内容で集まる人たちはきっと良い人ばかりだろう、と思えた。いつもと違う旅に一歩踏み出すには好条件が揃っていた。

期間中に参加動機の話になった時、モンゴル自体が好きで、すでに来たことがある人、前から草原や遊牧生活に憧れを持っていたという人、受験中にその気持ちを抱いてずっとあたためていた人などがいるらしいことを聞いた。参加前後に仕事を辞める人も多いらしい。なお、自分が、モンゴルに行く・行った、と周囲の人に言った時は、反応が、へー!いいね!草原だね、というのと、?なんで?に分かれて興味深かった。

2 行き方

ウランバートルへは直行便もあるが、武者修行では乗継便を採用。今回はいなかったが、違うルートで行きたかったらそれでもいい。中国から電車で来る猛者も過去に居たとのこと。全国各地から参加者がいるので、仁川で合流。今回は成田(仙台から含む)、中部、関空、福岡の4ヶ所から集まっていた。

3 建物

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ウランバートルの空港から滞在場所に車で向かう中、たびたび見た建築途中の建物みたいなものにまず驚いた。廃墟かと思った。外枠から作っていく工法なのか?窓、中の壁が全然ない、コルビュジェのドミノシステムの図に外壁が少しだけプラスされたみたいな見た目の構造物。日本でいうと幹線道路沿いみたいなところに複数建っている。大きい開口部がなんか怖かった。住んじゃう人とかいないのか、ゴミや砂が吹き込み放題ではないか、いろいろ気になった。

4 合宿の感じ

泊まる拠点は、ウランバートルから車で1時間弱。等間隔に建ててある移動式住居・ゲルと、ダイニングやキッチン、シャワーやトイレがある管理棟のような建物がある、ゲルキャンプ場みたいなところ。ゲルの中はベッド等がすでに備えてあり、快適。
気候は乾燥していて汗をかかない、洗濯物が即乾く。手ぬぐいなんか一瞬だった。

日本の大学に留学が決まっているような、よどみなく日本語を操る20代前半モンゴル人女性が2人、期間中面倒を見てくれる体制だったので、ずっと日本語を話し、特に不自由もなく過ごした。他に、モンゴル側コーディネート代表的な方、ゲルキャンプ場オーナーファミリー、遊牧民ファミリー、アルバイトに来ている高校生?等が、期間中お世話になった方たち。

参加者仲間は13人。うち男性は2人。毎回女性が多めらしい。期間中のスケジュールは、募集時にざっくり書いてあるのを把握してはいるが、その他は特に何日何時に何をするかが前もって知らされるようなことはなく、会話の中でなんとなく決まっていく感じ。みんなその感じに自然に委ねていた。詰め込みスケジュールに追われて観光スポットをとにかく回る、みたいなツアーのイメージとはかけ離れていた。

5 馬に乗る

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まず馬に乗った。参加者の挙動からか、その人と相性が良さそうな馬を見つくろってくれる。

あなたには一番おとなしい馬を選んでくれたんですって、と言われる。なぜかずっと他の馬の左後ろに密着しながら歩を進める馬で、その擦り寄られた馬に乗っている参加者仲間の左足に馬の轡がずっと当たって、痛い、離れてほしい、と悲痛の訴えを受ける。でも、手綱を引っ張っても、イヤイヤ、みたいに首を振られ、もっと擦り寄っていく、みたいなことが続き、まったく乗りこなすことはできなかった。最初はみんな遊牧民ティーチャーの方が手綱を持ち、誘導されながら乗ることに慣れていく。ティーチャーがOKと判断したら、おもむろに手綱が離され、独り立ちしていく。私の独り立ちは最後で、最後の1人状態の時間も長かった。

乗りこなせなくても、馬は団体行動が染み付いているので、先導するティーチャーや早く慣れた参加者仲間の馬の後を追って、進むべき方向に歩いてくれるし、みんながスピードアップしたらそれに合わせて走り出す。パカパカ、という穏やかな乗馬を超えた、パカラッパカラッ、という、恐ろしく早いスピードで群れで走る状態を味わった。馬に座っていられない、跳ねるのに合わせて体をホップさせないと吹っ飛ばされそう。激しく揺れる馬に合わせてホップするには、鞍に紐で繋がれぶらぶらする鐙の上に立ったり中腰になったりするため、足や腰や腹筋にずっと力を入れてたりする。ただ素人だからそうなるが、ティーチャーは裸馬にも乗るので、コツを掴んでいる人は力は必要ないのだろう。駆ける状態になる前の練習の時間で、すでに体はガタガタになっているので、それに加えての試練。必死であった。死にそうに怖くても1人スピードを緩めることなどできず、くらいつくしか選択肢がない。そんな猛スピードのパカラッパカラッがなかなかの長時間あった。この時間が最も武者修行だった。

乗馬は前半の3日ほどに集中的に行った。最後の方の、やりたいことを自由に選んで別行動する時間に、もう一度馬に乗りたい、というグループに入った。前半でお世話になった馬が居らず、別の馬に乗った。なんだか背中が広くて、腰が安定する。恐る恐る手綱を引っ張ると、その方向に曲がってくれて、おお…、こういうことか…!と感動した。この時は疾走する時間はなく穏やかに終わった。

6 馬を知る

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馬はとても臆病な動物だから、と近寄る角度や服装、持ち物は厳しく制限があった。後ろと左前から近づいたらダメ。シャカシャカ擦れる音がするような服はダメ。乗ってる時に上で上着を脱ぎ着したらダメ。ケイタイ含めカメラを持って乗ったらダメ。乗ってる時に上でカメラのシャッター音をさせたらダメ。

ゆえに、至近距離の馬の写真、乗ってる時の写真、乗ってる目線での写真、など撮りがいのありそうな状況は基本的に撮れない。代わりに熟練したティーチャーたちがバシバシ撮ってくれていた。それを見ていたので、後半になって慣れてきた参加者仲間数人は、上着の胸ポケット等にケイタイを入れておき、適宜撮影をしていた。私は最後までそこまでする余裕はなかった。

一番最初に、馬から落ちる場合の受け身の取り方のようなことを教わる。実際、折々に何人か落馬した。下手かどうかではなく、慣れた人が落とされている時もあった。突然馬が立ち上がる。順番に乗って出発待ちしている時もあれば、移動してる最中の時もあった。私は出発準備の時、ゆっくりコロリと落とされた。

人を落とした後、彼方に疾走していく馬もいた。ティーチャーがシャーッと追いかけて先回りをして捕まえて、逃げた馬に乗っかって走らせながら見えなくなって、しばらくしたら落ち着かせて帰ってきていたのが素敵であった。

7 草原のディテール

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「見渡す限り草原」、モンゴルに対するイメージと直結する。また、一度身を置いてみたい景色のひとつ。たしかに素晴らしかった。ただ、草原を見渡したその時は、どうも実感が薄かった。

終わりのなさのスケール感が、自分の中の感覚の引き出しにはまだ無い感じだからだろうか。見渡した時よりも、遠くを見渡してから、足元に生えている草たちを見回した時のほうが、ああ、草原のディテールを想像したことがなかったな、と気付かされ、印象に残っている。

芝生みたいに密度が高くない。わりとまばらで、土の茶色もよく見える。高さ10センチくらいのいろいろな草花が、天に向かってまっすぐ生えている。つくしの生え方みたいな?草花の緑は濃く鮮やかの方ではなく、薄くくすんだような方が多い。ハーブっぽいのとか、ちょっと摘んでテーブルに飾りたくなるような、エーデルワイスみたいな花とか。誰かの美術作品で、こういう、チラチラと小さい花が生えている野原の写真を見たような記憶も蘇る。

あと、10円玉くらいのサイズに見える遠くの方で、車か馬が猛烈なスピードで走っている時、彼らの走った後にもうもうと舞い上がる砂煙。マンガみたいだった。それを見た時、草原のスケールを認識できた気がした。マンガはたぶんドラゴンボールかアラレちゃん。

ゲルの外に出ると、バチッ、バチッ、という音が聞こえる。なんだろう、と参加者同士で言っていた。バッタが出している音らしい。音の方向を見ていると、たしかに茶色い物体がちょこちょこ飛んでいるのが見える。飛ぶ時に羽が擦れてるのか、バッタ同士が偶然当たった時とかなのか。少し痛そうな音。触ったらバチッと静電気が流れるラケットの音みたい。

8 服

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ゲルキャンプ場という場所柄で特にかもしれないが、モンゴルの人たちは基本我々と変わらない、スウェット地の動きやすいスポーツ系みたいな格好だった。でもモンゴルらしい服装としては、デールという、腰から上はちょっとチャイナドレスにも近いようなかたちの民族衣装がある。腰に帯を結んで固定、重なった前身頃に身の回りのものを差し入れてポケット的に使えるらしい。
髪型は横刈り上げたツーブロックみたいな髪型が多かった。女性は美しくケアされたロングヘア多め。

合宿中、皆の面倒を見てくれてた遊牧民男性は見たところかなりオシャレ意識が高そうで、下はジーンズ、上が鮮やかな水色のデールを右肩だけ脱いで、下のTシャツ覗かせて着崩していた。その水色がモンゴルの景色の中でなんとも輝いて映り、しばしば見惚れた。

ウランバートルでデール仕立て屋さんの看板を見た。卒業式とかに仕立てるらしい?伝統的なのはチャイナドレスみたいなつるつる原色サテン生地みたいなイメージだが、看板は英国系チェックみたいな生地のデールを着たモデルの写真で、同じデールでもかなり印象が違った。

9 鞍のマット

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馬の鞍の下に敷かれた楕円形のマットが、色鮮やかで可愛かった。使い込まれているのも味がある。色彩の感じがすごく良いなと思い、何か手に入れて帰りたいと思ったが、残念ながら出会えなかった。

馬の鞍マットは、ウランバートルのデパートに売っているだろうと聞き、オプション都市編の時に確認したところ、鞍そのほか一式セットで売られていた。しかしマットは白、グレー、茶などナチュラル系の色で統一されたシンプルなものだった。

10 祭り

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ナーダムは年に一度のモンゴルのお祭りとのこと。乗馬レース、モンゴル相撲大会、弓射大会などが行われる。大会規模はご近所さんが集まったくらいの規模感だろうか。弓は草原に羊の革?が大人の身長一人分?くらいのけっこう高い位置に四方ビシっと棒と紐で張られて立っていて、それに命中させることを目指す。初心者の参加者仲間でもちゃんと当てている人がいた。馬乳酒が振る舞われたり、各種大会の上位3名にはちゃんとメダルや賞状が用意されていた。

合宿コンテンツの一つか祭りだからだったか、どちらも混ざっていたかもしれないが、モンゴル側のみなさんが歌、踊り、馬頭琴の演奏などを披露してくれた夜もあった。別途あったカラオケルームでは、現代的な歌も歌ってくれた。


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