カーリングを「匿名」から守れ! ~カーリングという競技・スポーツ・文化・楽しみの危機~

まえがき

あくまで「感想」です。提言も特にありません。
あまり明るい内容ではない、という事を最初に書いておきます。

要約

匿名SNSなど、匿名発言環境が普及した2024年現在、カーリングの応援が過熱して、選手・関係者・ファンへの直接的な非難が大量発生し、選手やファンはもっと積極的・明示的に守られる環境が不可欠であると感じました、という内容になります。
(カーリングに限らず、ですが)

概要

2024年世界女子カーリング選手権大会、ラウンドロビン(予選)が終了しました。
(主に自分のために)記録・記憶しておきたい事柄がありましたので書き残します。
この大会は、各国の代表が集まる、年1回の世界一決定戦であると同時に、2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の代表枠を争う大会でもあります。
2024年大会と2025年大会の順位により「上位7か国」に五輪出場権が与えられる仕組みです。実際には、開催国イタリアと、ここで五輪出場権を得た7か国、別に行われる世界最終予選から2か国が五輪に出場します。
日本からは、1月~2月にかけて行われた日本選手権の優勝チーム「(女子)SC軽井沢クラブ」が出場しています。世界選手権は初出場のチームで、メンバー5人のうち西室選手は18年前に出場経験がありますが、他の選手は成人大会では初出場になります。
重要な背景としては、人気・実力・知名度で圧倒的首位のチーム、ロコ・ソラーレが日本選手権で4位に終わったこともあります。SC軽井沢クラブは新興チームで、人気としては国内で3~4番目であり、また、カーリングは北海道で特に人気のあるスポーツで、北海道以外のチームが世界選手権に出るのは5年振りです(人気などは個人の推測です)。
この流れで、日本のカーリングファンには「日本代表のSC軽井沢クラブには頑張って欲しい」という思いの他に「自分の推しチーム・選手が五輪に出られるためにも、SC軽井沢クラブには是非頑張ってもらいたい」といった「間接的な応援」の気持ちを持つファンが多数いたであろう事は容易に想像できるかと思います。
結果、SC軽井沢クラブは3勝9敗、13チーム中11位という結果に終わりました。期待はさておき、チームの世界ランキングからすれば比較的順当な結果ではありました。大会は上位6チームによるプレーオフ中です。
追記すると、私は国内外どのチームも良さがあって好きですし、私が今年一番課金(?)した先はロコ・ソラーレです。

ファンの反応はどうだったか

五輪出場権である「2大会合計で7位以内」を達成するために、過去実績から「ノルマは6位以内=プレーオフ進出」という独自目標を立てたファンからは失望の声が聞かれました。
この「プレーオフという独自ノルマ」については、SC軽井沢クラブの選手やTV放送を担当したNHKも、名言はせずとも意識はしていたようで、言葉の隅にはそれとなく表れていたこともあり、ファンがそうした感想を持つこと自体は自然な流れだったと思います。
鍵となるのは、日本においてカーリング専門誌のようなものはなく、応援や議論は主に匿名SNS(X=旧Twitterなど)や「応援解説Youtube放送」の匿名チャット欄などで行われていたところです。
「負けたらプレーオフ進出の可能性がなくなる」アメリカ代表との試合がMLB中継の影響で録画放送になり、Youtube放送も「いわゆるネタバレは禁止と明言した上で録画放送に合わせて応援・解説する」という状況のなか、結果をほのめかす嫌がらせの書き込みが相次ぎました。録画放送でSC軽井沢クラブの敗戦=プレーオフ進出消滅が報じられた直後には、SC軽井沢クラブに対しての非難、代表選考方法を決めたJCA(日本カーリング協会)への非難などが多く書き込まれました。カーリングで他者への直接的な非難が相次ぐのは非常に珍しいことです。直後、国内トップ選手がSNSに「そういった非難は適切でない」という内容の投稿がされるほどでした。こういった「雰囲気」は、選手にも伝わっていたように感じました。
その後、予選最終戦イタリア代表との試合でも、SC軽井沢クラブはリードしていた状況から敗れ(個人的には、格上イタリアによく善戦した試合だった、と思います)、Youtubeチャット欄には「馬鹿」と直接的に罵倒する単語まで見られ、もはや観客同士の乱闘のようでした。特にカーリング界では見たことのないものです。
多くの選手・関係者からの「自重を求める」書き込みをよそに、(主に)SC軽井沢クラブ選手・ファンへの「おおよそカーリング精神とはかけ離れた書き込み」は続きました。

「匿名発言環境」の功と罪

匿名SNSなどの「匿名発言環境」では、発言のしやすさはありますが、そのせいもあり、自分の普段言えない気持ち、特にネガティブな言葉が書き込まれやすくなり、それを読んだ人が更に…という連鎖まで含め、避けることが困難です。それが「匿名という環境」です。

カーリングには「カーリング精神」がある

カーリングには「カーリング精神」という考え方があります。いわゆるスポーツマンシップや思いやり・尊敬より更に踏み込んだ内容で、ルールブックの最初に記されるほど重要視されていて、決して相手を見下さない、相手のミスや敗北を願うことはしない、違反は自主申告することなどが明記されます。これは選手はもちろんファンにも遵守が求められるものです。

人気ゆえの宿命

会員制の社交場であればまだしも、カーリングも世間一般に広く観戦される現在「ルールは知ってるけどカーリング精神は知らない」というファンが(特に新規ファンに)ある程度存在することは避けられないことです(カーリング精神はカーリングのルールの最たるものですから、本当はこの時点で矛盾があるのですが)。そして、カーリングファンの人口が増えれば、そういった人の数も増えて当然です。
当然ではある…のですが、じゃあ全て許容すべきか、とは別の話です。

「カーリング」は「全ての非難」を許容しなくてよい

では、カーリング(選手・関係者・ファン・競技などなど)が非難の類を全て許容すべきか否かといえば、否です。なぜなら「カーリングとはそういうもの」だからです。
サッカーであれば「そういったものも含めてサッカー」という文化があると感じていますが、カーリングというスポーツは、歴史だけでなく、ルールなどあらゆるものが上記の「カーリング精神」が前提となっています。仮に「そういったもの」を認めるのであれば、ルールを大幅に変える必要がありますし、それは全く別の競技になり、全く違う雰囲気で行われる競技になり、旧来のカーリングとは「選手に求められる資質」「全体の雰囲気」「ファン層」などあらゆるものが異なる競技になるでしょう。「スポーツにはスポーツマンシップが求められる」としたら、それはもはやスポーツではないでしょう。仮にニーズがあるとしても、それは別の競技であり、カーリングではありません。
そして匿名SNSなど匿名発言環境が普及した現在、「カーリング競技・選手・関係者・ファンが守られていない、危険だ」と思います。「スポーツ」「一般生活」などでも似たことがいえると思います。匿名のあらゆるものを廃止せよとまでは言いませんが、匿名で人を非難できる環境はある程度規制されるべきで、その点で現代社会に欠陥や不足があるとは思います。
なお、この文脈だと「サッカーはスポーツではない」と受け取られるかもしれませんが、「サッカーはスポーツである前に文化である」という考え方が一般的です。そしてまた「カーリングもスポーツである前に文化である」のです。そこに明確な線引きはできません。人のすることはそんなに単純明快にはできていません。
追記すると、私はサッカーもカーリングも好きです。

このままでは誰も得しない(楽しみは非難より優先されるべき)

「全てのスポーツの全ての競技者・ファンはスポーツマンシップを遵守せよ」という話ではありません。「カーリングは閉じられた環境で厳粛に崇高に行われるべき」という話でもありません。「あらゆる匿名環境を廃止せよ」という話でもありません。
「全てのカーリング競技者・関係者・ファンはカーリング精神を遵守せよ、そのために選手やファンはもっと積極的・明示的に守られる環境が不可欠だ、これはカーリング選手の危機、カーリングファンの危機、カーリングというスポーツ(文化)そのものの危機だ、何かしら手が打たれるべきだ」と感じた、というだけの話です。
もっと簡単に言えば、自分達(選手やファンなど)が損するよね、誰も得しないよね、というのが理由です。楽しくプレイする、楽しく運営する、楽しく観戦する、そういった「楽しみ」を阻害するからです。
「楽しみ」が「他人を非難してスッキリする権利」に負けるのは、おかしなこと、もったいないことだからです。

「カーリングに限らず色々とおかしなことになっているよね」という感想

それだけの話です。それ以上のことは分かりません。対策の提案もできません。
ただ、現状では、カーリングにせよ、スポーツにせよ、社会にせよ、色々とおかしなことになっているよね、そう感じた、という話です。

一応あとがき

急ぎ、思い感じたことを書いた都合上、乱文や繰り返しの多い内容であることをお詫びしておきます。

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