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日本人を辞めた日

2022年6月27日、自分はアメリカ人になりました。それと同時に法律上、日本国籍が自動消滅したことになります。書類上は正式に国籍消滅届というものを領事館に届けないといけないのですが事実上国籍は既に消滅しています。正直言ってアメリカ人になって嬉しいかと聞かれると答えるのに困ります。アメリカ人になれて嬉しい気持ちは日本人としての自分が戸籍上いなくなった悲しみに掻き消された感じというのが正直なところです。もちろん心も体も自分は日本人だと思っています。戸籍を奪われたところで心のアイデンティティーは無くなりません。例えていうなら千と千尋の神隠しのように、佐藤という名前がSatoになってしまった感じですかね。ただ、今でも決断が正しかったかどうかというのは悩むところです。

ではなぜそもそも帰化したのかですけども、それには理由がありました。自分は6年前に大学で出会ったアメリカ人の妻と結婚をしてグリーンカードを取得しました。永住権というものは細かい事を除き、選挙権以外は全てアメリカ国民同様の扱いです。もちろん銃を購入することも可能です。グリーンカード発給はまず3年からの仮発給から始まります。3年が終わると同時に10年のグリーンカード申請ができます。ところが、、、自分は10年用を申請してからなんと3年も申請手続きが終わりませんでした。これは申請初期の書類不備とトランプ政権の就任が重なって遅れに遅れてしまった感じです。申請中でも基本的に永住権というものはアメリカに滞在している限り無くならないものなので特に心配はしておりませんでした。さて、話は去年の11月に飛びますが、欲しい銃がありましたので購入手続きをする事にしました。実はこの1週間前に既に他の銃も購入ずみで、問題なくバックグラウンドも通っていたんです。ただこの日は違いました。通常の流れはペンシルバニア州の場合、PICSと呼ばれるバックグランドチェックが連邦政府のデータを参照して行われます。逮捕立件歴のないアメリカ人の場合はAIレビューで、ものの10分程度でOKが出るものですが永住権保持の外国人の場合は担当者が確認するためReviewというステータスに入ります。これが早いときは1時間、遅い時は数日かかる時もあります。平均で言うと丸1日です。私は過去にペンシルバニア州で銃を何回も購入してたんで今回も同様かと思っておりました。それが3日たっても返答が来ない。そして結局4日目になんとDENIED(拒否)との結果がおりました。

これはただ単に拒否というものではなく、データベース上になんらかの犯罪歴、悪質な虚偽、そして違法ステイなど深刻な違反があるという事になります。更に購入申請書に虚偽の情報を書いたと判断されると逮捕事に発展します。パニクった自分はペンシルバニア州警察に電話して事情を問いただしました。すると答えは、”君の滞在ステータスが違法移民になっていて国外退去の進行中だ”という回答が。全く思いもしない回答でした。書類は完璧で犯罪履歴もありませんので何故そのようなステータスなのか検討もつきませんでした。州警察担当者は彼らでは何もできないので移民局に電話するよう言われました。さて、ここから更にアメリカならではのカオスが始まります。まず自分はICE(Immigration and Customs Enforcement) 移民捜査局に電話をします。彼らのデータベースが州警察の問い合わせに対し自分のステータスが違法であると返答してきたからです。問いただすと答えはなんと、、、”君の情報など全くない。無いので何もいう事もない。” でした。何度聞いても同じ答えなので無駄と判断し、次はUSCIS (US Citizenship and Immigration Services) 移民局へ電話しました。彼らはもうちょっと協力的で色々調べてくれたのですが結局何も見つからないとのことでした。ここで確かめたのは国外退去の対象ではない事です。それで少し安心したのですが、同時に政府側のちょっとしたミスで自分は国外退去処分になってしまうという恐怖感も味わいました。

さて、これらの情報を元に州警察に電話して話し合うのですが、ICEのデータベースが再度確認しても同じ事を言うので拒否は拒否だとの一本張り。弁護士相談も一時は考えたのですが、それから一ヶ月後にグリーンカードの進展があり、その結果を待つ事にしたんです。そして翌年3月に無事10年カードが届きます。それと同時に州警察に確認したところ疑惑は無事晴れて申請が通りました。本当に冷や汗をかいた数ヶ月でした。そういう事もあり今度は市民権を申請するわけですが、これが早い早い。4月に申請し、たった2ヶ月の6月末に通ると言う、完全に意味ワカメな状況になったわけです。なぜ永住権に3年かかり、帰化が2ヶ月で通るのか?市民権取得時の面接で面接官に聞いたのですが、彼も2ヶ月と聞いて驚いていました。
さて、アメリカ人になって国外退去にならない意外に何かメリットがあるのかですけども、それは海外にどんなに長くいても国籍が消滅しない点です。どう言うことかというと、グリーンカードの場合、最長2年(更新は一応可能)国外に滞在が可能です。ただし特別な申請が必要で更新の際にはなぜ国外滞在が長いのか説明責任がつきます。場合によっては剥奪というケースも多々あるそうです。アメリカ人であればそれを気にする事はありません。他にメリットは、自分ほどよく銃を買う人は認可が早くなって買い放題という事になります。それはもちろんウチの妻が私の暴挙を発見して妻に殺されるまでの話ですが、、、そしてもう一つ自分が思うのは選挙権です。アメリカに移住して16年。もはやアメリカの政治の方が日本の政治より詳しいし、直接影響を受けるのもそうです。ですので選挙を通して政治に参加するということは特別な意味を持っておりました。そして何よりも、今までやはりゲスト感覚がどうしても残っていましたが、やっとこの国の一員となったんだなと感じることができました。ただこれは日本人で無くなってしまった悲しみと比べるとあまり意味を持たないものかもしれません。
自分は日本を裏切ったのか?非国民であるのか?そう言われても仕方ない面もあると思います。ただ自分はアメリカという国で、そして日本人がいないアメリカの会社で元日本人として頑張り、そしてYouTubeやブログなどを通して日本の方や在米日本人の方達に自分しかできないこと発信していければそれはそれで母国への恩返しになるのではないかと考えております。長くなりましたがご静聴ありがとうございました。

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