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【アイドルオタクのお仕事04】元No.1キャバ嬢は、結婚と自担のデビューを経て地元に帰った

社会人のアイドルオタクはどんな働き方をしていて、オタ活と仕事をどのように両立させているのでしょうか。
今回インタビューしたKさんは、就職を機に上京したもののわずか3ヶ月で退職。その後はキャバクラで働いていたという経歴の持ち主です。Kさんが感じた仕事のやりがいや、夜のお仕事ならではのオタ活、そしてキャバクラのお仕事を辞めた経緯などについてお話しいただきました。

「卒業したら絶対東京に行く」と思っていた学生時代

——現在もジャニヲタは続けているんですか?

ゆるく続けています。最初は小学生のとき、母がSMAPが好きで一緒にコンサートに行ったのが始まりです。そのあと嵐を経て、何気なく見た少クラがきっかけで自担に出会い、ジャニーズJr.にハマりました。担歴は8年間くらいです。
地元の専門学校に通い始めたころから「自分でバイトをして稼いだお金で現場に行く」という行為を始めて、そこからどんどんハマっていきました。

——上京した理由もオタクのためですか?

はい。在学中から夏休みや冬休みを利用して東京の現場に行っていたので、「卒業したら絶対東京に行ってやる」って強い気持ちがありました。子どものころに親の仕事の関係で関東に住んでいたことがあって、そのときの友達や地元から先に上京した友達、親戚も東京にいたので、完全に一人ではなかったんですよね。だから東京に行ってもなんとかなるかなと思って。

——地元に残って遠征を続けるか、上京するかで迷うオタクは多いと思いますが、実際に上京してどうでしたか?

間違いなく東京に行ってよかったなって思います。デビュー組は別ですけど、Jr.は東京しか現場がないくらいだったので。

——就職を機に上京されたとのことですが、最初はどんな仕事をしていたんですか?

医療関係の仕事をしていました。でも、3か月で辞めました(笑)。

——辞めたきっかけは?

当選した「ザ少年倶楽部」の収録と仕事のシフトがかぶっていたんです。「当たったのに行けないのは無理!」と思ったんですけど、その瞬間、「そうか、辞めればいいんだ」と思って。決断力はあるほうなので、そこですぱっとやめました。

普段はアイドルを応援し、仕事ではお客さんに応援される

——その後、水商売のお仕事を始めたきっかけは?

自由な時間がほしかったからです。東京生活は6年近くあったんですけど、そのあいだはずっとキャバクラで働いていました。最後の2年間は医療系のパートとのダブルワークをしていましたね。

——お仕事は実際に始めてみてどうでしたか?

楽しかったです。最初は時間がほしいだけだったんですけど、いざ始めてみると競争社会というか、ダイレクトに数字が出る世界なのでやりがいがありました。負けず嫌いだったので、「一番をとりたい」という気持ちで頑張りました。
普段はアイドルを応援している身じゃないですか。でも、仕事になるとお客さんが応援してくれて、私にお金を使ってくれる。原理が一緒だなと思ったんです。自分がオタクなので、「こうすれば喜んでくれるな」というお客さんの気持ちもわかるから、オタクの自分を生かしながら働くことができました。その結果、たくさんの方が応援してくださいましたね。

——ちなみに、一番はとれたんですか?

とれました、無事に(笑)。戦ってる感じが楽しかったです。

——オタクの自分を生かせた、というのが興味深いです。

私、自担に転がされるのが好きで(笑)。コンサートでもファンサをしてくれるときとしてくれないときがあって、その感じがうまいなと思ったんです。自担にキュンキュンすると同時に、感心しちゃって。そういうテクニックを取り入れてお客さんに使うこともありました。自担のエピソードトークをそのままお客さんに話したこともあります(笑)。

——水商売を始める前と始めた後で感じたギャップはありますか?

最初は「ただしゃべるだけでしょ、余裕そうじゃん」と思ってたんですけど、始めてみたら大変なこともありました。それはどの仕事もそうだと思うんですけど。たとえば24時間連絡を返さないといけないとか、なかにはストーカーみたいなお客さんもいたので、その対応は大変でした。でもやっぱり、時間を自由に使えるというメリットは大きかったですね。

——自由に時間を使ってオタクをする、という目的は果たせたんですね。

果たせました。たとえば夕方から始まる公演に入って、そのあと9時から仕事して、夜中に帰ってちょっと寝てから昼公演に行く、みたいな生活もできました。休みは自由に取れるし、自分が頑張ったぶんだけお金もいただける。水商売を勧めるわけじゃないですけど、オタクにぴったりだとは思います。

「やってよかった」という思いしかない

——その後、地元に戻ったのは結婚がきっかけで?

はい。東京にいたころは正直、めちゃくちゃ現場に入るオタクだったんですよ。でも自分の年齢を考えると、「ずっと東京にいるのもなぁ、これからどうしようか」と考えてはいて。そんなとき、過去に一度付き合っていた地元の人から連絡が来たんです。そのとき私は自担の舞台に通っていた時期だったので、「今!?」とは思ったんですけど(笑)、うれしかったですね。連絡を取り合うなかで「もう一度やり直したいから帰ってきてほしい」と言われました。そのときは「もう一度この人と向き合ってみたいな」という気持ちはあったんですけど、まだ東京でオタクをしていたい気持ちもあって決めきれなかったんです。でもその後、ひさしぶりに帰省したときにプロポーズしてくれて。「ここまで言ってくれる人はもう他にいないだろうな。こういうことはきっとタイミングが大事だから、決めてしまおう」と思ったんです。舞台期間中に連絡をもらってから2か月後には東京生活を終えて地元に帰ってきました。今は専業主婦です。

——なかなかの急展開ですね。

まさかこんなことになるとは思わなかったですけどね。舞台期間中にもよく電話をしていたんですけど、「ほぼ毎日同じ舞台を見に行って楽しいの?」なんて言われてました。

——辞めた今、水商売の仕事のことを振り返って感じることはありますか?

やってよかったな、って思うことしかないです。水商売の世界って偏見を持たれがちじゃないですか。確かに最初は「お客さん」と「お店の女の子」という関係だから、お客さんも下心がないわけではない。でも、期間が経つにつれて人と人とのつながりみたいなものができてきて、一人の人間として接してくれるようになるんです。お店を辞めたときも、私の結婚をお祝いしてくださるような温かいお客さんがたくさんいました。周りを見て気を遣う仕事だったので、マナーや所作、言葉遣いなども身に付いたかなと思います。

——私も正直、お話を聞く前は「大変だったんだろうな」と想像していたんですが、ポジティブな感情が多いんですね。

私も始める前は怖いイメージがありましたし、確かに多少はそういう部分もあるんですけど、私はすごく人に恵まれた環境で働かせてもらったなと思います。

——お話を聞いて、Kさんの決断力が印象的でした。

地元に帰る決断ができたのは、自担がデビューしたからだと思います。デビュー組だと年に1回はツアーがありますけど、東京でしか現場がないJr.のままだったら地元に帰ることはできなかったと思う。
先日、久しぶりに遠征をして1公演だけコンサートに入ったんです。以前はたくさん入るのが当たり前だったので、1公演だと物足りなく感じるかなと思っていたんですけど、公演が終わったあとは「楽しい! かっこいい!」と素直に思えました。こんなに晴れ晴れとした気持ちで楽しめるとは思わなかった。今は茶の間のような感じで、テレビやYouTubeをメインに楽しんでいます。こうしてゆるく追っていけるのもデビュー組だからこそなので、デビューしてくれてありがとう、という気持ちです。

(取材日 2022/2/11)


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