推しエッセイ 紙の上の人を推す

ひさしぶりに二次元に推しができた。ひさしぶりなので文字のことを「二次元」と言っていいものかどうかちょっと迷ったけど、でも紙に印刷されているんだから二次元だよなぁ。
ミステリー小説にはどうしてもグロテスクな表現が出てくる。私はこの歳になってもグロとホラーが極端にだめなので、そういうものを見るとお風呂でシャンプーをしてるときに怖くなったり、夜ベッドに入ってもなかなか寝付けなくなったりする。そういうリスクを背負ってでも、おおげさに言えば自分の生活を犠牲にしてでも読みたくなる作品と出会ってしまったのだ。単なる怖いもの見たさじゃそこまでのリスクは背負えない。文章が美しくて、ストーリーに引き込まれて、キャラクターが魅力的なせいだと思う。
百鬼夜行シリーズ2作目ではとにかく冷たくてずっと機嫌が悪かった推しは、さかのぼって読んだ1作目ではめちゃくちゃかわいくて戸惑った。饒舌だし表情豊かだし、他人を素直に褒めることさえある。魍魎のときはそんな顔しなかったじゃん。魍魎のときは学生時代の設定なんて出てこなかったじゃん。ずるいわ。好きに決まってる。思い返せば、二次元で好きになるのは10年以上前からいつもこういう機嫌の悪いキャラクターばかりだ。人の好みはそうそう変わらないのかもしれない。
そして今日、推しが推しを演じる舞台のビジュアルが解禁され、そのあまりの美しさに「美」という概念を作り出した人類に感謝した。美しいという言葉は推しのためにあるに違いない。間違いない。

おいしいものを食べます