【アイドルオタクのお仕事03】嵐に会うために東京に来た

社会人のアイドルオタクはどんな働き方をしていて、オタ活と仕事をどのように両立させているのでしょうか。
今回インタビューしたTさんは、高校卒業後に国家公務員として内定をもらい地方から上京。その理由はまさに、「嵐に会いに行くため」だったそうです。国家公務員の仕事の特徴や、上京前後でのオタ活の変化についてもお話しいただきました。

——ジャニヲタ遍歴を教えてください。
小5で嵐を好きになり、高校生のときにファンクラブに入って初めてライブに行きました。そのあと2015年ごろ、たまたま映像を見たことがきっかけでバカレア組(現・SixTONES)にハマって、今に至ります。嵐では二宮和也くん、SixTONESだと森本慎太郎くんが好きです。

——就職して上京したときのことについて伺いたいのですが、どういう経緯だったんですか?
上京した一番の理由は、嵐に会うためです。高校生のときに嵐が大好きで、地元の新潟から東京に行く頻度が高かったので、東京に住んでしまうのが一番楽かなと思ったんです。
進学も考えたのですが、特に勉強したいことがなかったんですよね。「東京の大学に行きたい」と親に伝えたら「何をしに行くの?」と言われて、確かに何のために行くんだろうと思って。そのとき雑談のような感じで、「働くならいいよ」と言われたんです。当時はちょうど就職氷河期で、高卒で東京に出ても安定した企業で働くのは難しいだろうし、生活に困ることなくオタ活をするなら公務員が一番いいんじゃないかと思いました。
公務員の試験は地元と東京の両方で受けていたんですけど、先に東京の国家公務員のほうで内定をもらったので、その時点で他の選考は蹴りました。親には内定をもらったあとで「○○省に行くことにした」ってメールしたんです。親はまさか本当に東京に出るとは思っていなかったみたいで、びっくりしていましたね。

——なかなかの強行突破ですね! それでは、現在の仕事内容について教えてください。
とある省庁で働いていて、会計業務をしています。事務職なので、基本的にはカレンダー通りのお休みです。一般企業でいう経理のような仕事ですが、相手が国や県だったり、数字の単位が大きかったりするので驚くこともありますね。

——仕事のやりがいや、楽しいところはありますか?
考えたんですけど……「ない」っていう答えはありですか?(笑)

——それもありです(笑)。
公務員の仕事って結構ハードなんですけど、そのわりに何かを成し遂げても誰かに褒められるものではないですし、達成感がある業務でもなくて。仕事が楽しいかと言われると、楽しくはないですね。公務員って極端な話、仕事とプライベートを完全に分ける職だと思っていて。好きなことを仕事にする人もいますが、私の場合はその逆で、「オタ活が一番楽しいな」って思えるような生活をするためにこの仕事をしています。
今の仕事の一番いいところは、カレンダー通りにお休みがあるというところです。繁忙期を除けば、どんなに先のコンサートの日程が発表されても予定を立てられます。あとは、有給がわりと取りやすいですね。年間20日あるので、そのときの業務によりますが、平日のコンサートにも行こうと思えば全然行けます。一般企業に勤めている友人からは「そんなに休みが取りやすい職場は他にないよ」って言われるくらい。
もうひとつ、最近特に感じるのは、収入が環境に左右されないところです。オタクはお金と時間がないとできない趣味なので、収入が安定しているというのはオタクをする上ですごく強いと思うんです。お金をかけないオタ活もあると思うんですけど、「ちょっとでも売り上げに貢献できるならこれを買おうかな」とか「自担のグッズの在庫が残ってるなら買おうかな」とか、そういうのってお金がないとできない行動だなと思って。その点でいうと、公務員だからこそオタ活を自由に続けていられるんだろうなって思います。

——職場ではオタバレしてますか?
ずっとオタバレしていなかったのですが、今はしています。「言ってもいいけど、言わなくてもいいかな」と思っていたんですが、たまたま隣の席になった職員の人が「昔NEWSが好きだったんですよね」と話してくれて、そのときに「私、実は嵐が好きなんです」ってぽろっと言ってから抵抗がなくなりました。嵐が活動休止を発表した次の日に泣きながら出社したら、周りの人たちが「今日は来ないかと思った」「休んでもよかったのに」と言ってくれて、理解のある職場っていいなって思いました。
休みを取るときも、正直に「ライブです」と言ってしまったほうが休みやすいんですよね。繁忙期に横アリでライブがあったとき、当選したのが平日の公演だったので、上司に「この日は午後から抜けさせてください」って話したら「行ってきな」って言ってくれました(笑)。

——繁忙期はかなりお忙しかったと聞きました。
公務員の特性上、自分では業務量をコントロールできないので、繁忙期は大変でした。特に忙しい係にいたときはタクシー帰宅も1ヶ月ほど続きました。公務員は労働基準法の適用外なんです。当時はプライベートの時間が一切なかったですし、今思い返すとオタ活も全然していなかったですね。そこまで忙しい状態が続くとハイになってくるので、自分が疲れていることに気づかないんですけど、ある日突然ぷつんと切れたように体が動かなくなっちゃったんです。仕事のことは気になるんですけど、どうしても出勤できなくて。まさか自分がそうなるとは思わなかったのでびっくりしました。「職場に悪いことをしているな、辛いけど頑張らなきゃ」と思ってなんとか出社する、という状態がしばらく続いたんです。そのときの経験から、体が第一だなと思うようになりました。
今はときどき終電で帰ることがあっても、それが続くようなことはなくなり、家で過ごせる時間もあります。市役所で働いている友人からはそういう話は聞いたことがないので、一口に公務員といっても職場によって全然違いますね。

——地方在住のオタクって、地方に住みながら遠征をするか、思いきって上京するかで迷う人も多いと思うんです。Tさんは上京してどう感じましたか?
めちゃめちゃ上京してよかったなって思います。理由は主に2つあって、1つめは「嵐に会いたい」という目的が本当に叶えられたこと。ライブはもちろん、番組観覧にも行きやすくなりました。収録が深夜まである番組でも、終わってからタクシーで帰れます。
もう1つは、ジャニーズJr.の現場に行きやすいことです。デビュー組のライブは日程が早めに発表されますが、Jr.の場合は直前に発表されて慌てることが結構あるじゃないですか。しかも平日だったりするので、Jr.担にとっては東京に住むメリットが特に大きいのかなと思います。他にも、地方ではやっていない番組が見れたり、復活当選に応募しやすかったりという利点もあります。
でも、オタ活以外でいうと田舎のほうが好きですね。東京はなんでもあるし楽しいけど、やっぱり家族のいる地元のほうがいいなって思います。SixTONESがデビューしてくれてうれしいなって思うのは、自分がもし田舎にUターンすることがあっても、全国ツアーなどで会いに行ける機会があるから。デビュー組は地方にいても応援しやすい環境があると思います。

——最後に、就活中のアイドルオタクにアドバイスがあれば聞かせてください。
公務員といっても幅が広いのでひとくくりにはできませんし、私が話したのはほんの一部です。たとえば県や市など、単位が変わることで雰囲気が変わったり、窓口の有無によって服装の規定が違ったりもします。職場によって休みの取りやすさも全然違うので、公務員という選択肢を考えているのであれば、話を聞ける人にあらかじめ気になる点を聞いておいたほうがいいかなと思います。
あとは、「自分で稼げるようになってからのオタ活はもっと楽しいよ!」って伝えたいです。オタ活って学生のときがピークで、大人になったら落ち着くものだと思っていたんですけど、大人になってからのほうが楽しみ方がたくさんあることに気づきました。就職活動は大変なこともたくさんありますが、自担に会いに行くためだと思ってがんばってください!

(取材日 2020/7/23)

おいしいものを食べます