推しエッセイ フッ軽オタクが行くはじめての街頭演説

政治にまったく関心がないわけではないけど、かといって関心があるというわけでもないし、議員の誰々が今日の国会でどんな発言をしたかよりも、推しが今日のライブのMCで何を話したかのほうが2億倍は興味がある。選挙前に各政党や候補者のことをちょろっと調べたりもするけどせいぜいその程度だ。
そういう私が今日読んだのがこの記事。

お〜、わかりやすい! そして手っ取り早い! 質問に答えると自分に合った政党がわかるWebサービスが3つほど紹介されていたから、とりあえず3つ全部やってみたら複数の政党が上位にきた。自分の選挙区の候補者をざっと見てみても「推したい!」と思う人はいなかったけど、「この中ならこの人かな」という人が見つかった。嫌なところがない人だった。
候補者の個人Webサイトには街頭演説の日時が載っているということをここで初めて知る。え! すごい! こんなにたくさんやってるの! どうりでしょっちゅう街頭演説を見かけるわけだな〜と思った。私は気になるアイドルを見つけるとすぐにイベントスケジュールを確認して週末にはもう足を運んでいるようなフッ軽現場厨なので、この街頭演説という名の無銭現場にもなんだか興味が湧いてきてしまった。すぐに見に行けそうな日時の演説もいくつかある。そもそも名前と写真と政策だけで推しを決めろなんて無理な話だ。推しを決めるには現場に行くのが一番いいって3億光年前から決まっている。
というわけで、さっそく「推しになりそうな候補(以下、推し(仮))」の街頭演説を見に行ってきたのでレポートを書きます。上の記事を今日読んで今日のうちにもう見に行ってきたよ。我ながら早いね。

・場所がわからない
よく使う駅なら「あのあたりでよく演説やってるな」というのがわかるけど、たまにしか降りない駅だと「◯◯駅何口」と書かれても具体的な場所まではぴんとこない。とりあえず駅の外に出てうろうろしていると選挙カーの声が聞こえてきて、あそこだ! とわかった。集客したいなら場所をもうちょっとわかりやすく書いてほしいな。他の候補者の演説日程を見ると「◯◯交差点前」とか「◯◯(建物名)前」とかもう少し詳しく書いている人もいた。

・チラシをなかなか渡されない
演説場所周辺でチラシを配っている人、なかなか私に渡してくれなかった。仕事帰りのサラリーマンっぽい人には走って追いかけてまで渡してたのに、立ち止まって見ている私は何回かスルーされたあとでようやく渡してもらえた。街頭演説が始まるのを最前で待っているような人はもうすでに支持者だから今さら渡さなくてもいいと思われたのかもしれないし、私くらいの年代の人はチラシを差し出されてもスルーしがちだから最初から諦められていたのかもしれない。もしくはたまたまかもしれない。でもやっぱり、演説場所で立ち止まっている人たちの中に私と同年代の人は全くいなかったから、「演説場所で立ち止まる」とか「チラシをちゃんと受け取る」っていうだけでもみんながやるようになれば「若者も政治に関心があるよ」っていうアピールができるんじゃないかなってちょっと思った。選挙にちゃんと行くことが一番大事だとは思うんだけどね。

・応援の人の話が長い
推し(仮)を見に来たのにいきなり知らない議員の人が出てきてまぁまぁ尺使ってしゃべるから正直退屈だった。応援演説というやつだ。その内容もなんだかその政党の人なら誰にでも当てはまりそうなありきたりな話だったから、もっと「この人はこういう個性がある人で、この人にしかできないことがあるんです!」っていう話をしてくれたらいいのになと思った。中には面白い応援演説をする人もいるんだろうか。オープニングアクトだと思って耐えた。
応援演説をしている間、推し(仮)は簡易ステージ(本当にめちゃくちゃ簡易)の上に立って通行人に手を振ったり、チラシを手渡ししたりしていた。ここで「本物だ〜! 推し(仮)生きてた〜!」となるあたりアイドルオタク根性が染み付きすぎている。あと応援演説の知らない議員の人、話し終わったあと見てる私たちのところに握手しに来たけど、私は別にあなたに興味があって来たわけじゃないし知らないおじさんと握手とかしたくない。

・推し(仮)の演説、悪くない
長くて眠いオープニングアクトのあとようやく推し(仮)がマイクを手にした。街頭演説なんてこれまで通りすがりに耳に入ってくる程度にしか聞いたことがなかったけど、立ち止まってちゃんと聞いても印象はだいたい同じで、「ああ、選挙のときの演説ってよくこういう話するよね」という感じだった。具体的な数字を出すと説得力が増すのかもしれないけど、それよりはもっとその人らしい、血の通った話が聞きたかったかな。
政治家はよく「みなさんはこう思いますよね」という言い方をするイメージがあったけど、推し(仮)は「私」を主語にして話しているところがいいなと思った。ある話題のとき、「私は嫌です」ときっぱり言った。あくまでも自分はこう思う、という言い方は人に押し付けない感じがして好感が持てる。

・無銭握手会がある
演説終了後、立ち止まって見ていた人たちのところに推し(仮)がやってきて握手をして回り始めた。剥がしはいない。話し放題。正直、今日のところはまだ接触するほど推せる感じではないし話題もないな…と思ったので立ち去ろうとしたところ、そんな私を見つけた推し(仮)が「ありがとうございました!」と声をかけてきたので「がんばってください」とだけ伝えて帰った。

街頭演説を見てみての一番の変化は、投票するにあたっての安心感が増したこと。それは「顔と名前と政策しか知らない人」が「知ってる人」に変わったからだ。応援したい! とまでは思わなかったけど、実際に見て話を聞いたうえで「まぁこの人でいいかな」とは思えたので、何も知らないまま選挙に行くよりは自分の1票にちょっとだけ自信が持てるような気がする。
それから、これはちょっと自分でもびっくりなんだけど、他の人の街頭演説も見てみたくなった! たぶん推し(仮)よりも演説がうまい人っていっぱいいると思うんだよね。他の人と比べてみたいし、演説が面白い人を見つけたら推し変してしまうかもしれない。とりあえず生活圏内で街頭演説を見かけたら立ち止まって聞いてみようかなと思う。
昨日までただうるさいとしか思ってなかった街頭演説、行ってみると案外ちょっと面白い無銭現場だったので、推し候補がいる方はぜひ軽率に足を運んでみては!

おいしいものを食べます