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『キングスマン ゴールデンサークル』

 ということで、珍しく大作映画を観てきました。

 スパイアクション! 悪趣味! 悪趣味! スパイアクション!

 英国紳士を強調しつつ、スーツの胸襟一つ開いたらばおおよそグロテスクでシモネタまみれな007と現実のパロディが、塊になってテラテラ光っている感じだった前作、評判を聞いて映画館に足運んで、威風堂々で堪え切れず笑ってしまってから四年。期待して見に行きました。

 いや酷かった。そりゃもう期待通りの意味で。二重三重の意味での露悪趣味の塊(ドギツイ社会風刺をてんこもりにするばかりでなく、わざわざ低予算みたいに見える演出使ってみせたり。皮肉屋の横っ面が見えるようだった)。

 それでいて、アクションシーンには一切手抜きなし。異常なテンションの画面で跳ね回るスーツのイケメンを見たいならぜひ見に行くべきですが、問題はそういう層の期待するものがこの"すべての精子は神聖なり"とか大合唱始めそうな映画に(そういうシーンはないです)嵌まるかどうかってところで……。

 ただ、グロテスクと悪趣味に振り切っちゃいるんですけど、(ある意味では馬鹿馬鹿しいほど美化されてるとも言える)英国人的意地の張り方や、ひどい状況に翻弄される登場人物たちのドラマやらはえらい綺麗で、そっち方面でもかなりリキ入ってましたので誤解なきよう。それで酷いことやってるからなおさら酷さが際立つんですけどね。エルトン・ジョンとかハンバーガーとか。

 個人的な見どころは、メインキャストとして前作から続投のマーリンとハリー。マーリンはいっそ脚本上ヒロインと言ってもよさそうな勢いの愛すべき男っぷりを披露してくれるし、前作のどう考えても死んでるだろから辛うじて生還したハリーについては……

 なんというかネタバレになっちゃうんですが、これは触れずにおられない。ハリーは主人公エグジーの師匠枠で、できる男のスーパースパイなんですが、瀕死の重傷から復帰したんで 身体は鈍りきってる し、それよりもなによりも頭のほうが完全にやられてしまって て……頼れる男どころか 曖昧な状態 で……
 要するに、中盤の展開でスリルを引っ張るのが 前作で悲劇的に退場 した、スーパーイケメン師匠が 大丈夫なのこの人 ? という、まあ大凡良識的な映画じゃあまずやれないというか、 障害者団体からの苦情を恐れてできない 的な状況設定だったりするわけで、見たことないです。共感性羞恥とかある人は悲鳴上げるかもしれん。

 小道具から有名人ゲストの類、社会問題の切り方に至るまで、すみずみまで行き通った最悪の、スタイリッシュ趣味の悪さの固め打ち。少なくともこれ地上波じゃあ絶対流せないだろうから、今のうちに映画館で見ておこう。

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