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鶴が如く 第5話「鶴の雛」
慶長4(1599)年。二人の男が、浜松城の天守にいる。一人は後ろ手に縛り上げられている。
徳川家康。織田信長の同盟者として律義者として知られた彼は、本能寺の変に際し混乱の生じた甲信の切り取りを画策。しかし、滝川一益の知恵袋・真田昌幸により押さえられ、わずかに南信を領有するにとどまった。
滝川辰政。滝川一益の遺児として関東平定を行いつつ飛騨へも侵攻。家督争いで兄・信孝を排した織田信雄との対立姿勢を崩
鶴が如く 第4話「タヌキと狸」
上田城奪還の翌月。続けて海津城の奪還を目論む一益の元に衝撃の知らせが飛び込む。小諸城に向けて9500もの大軍勢が出立したとの知らせである。無論、撃破したばかりの上杉家ではない。
「徳川どの、だと。」
これまで不気味なまでの沈黙を保っていた徳川家康が突如として滝川家に矛先を向けたのである。本能寺の変の際には堺に滞在中で、辛くも三河に脱出したという噂は一益の耳にも届いていた。織田信長との軍事同盟の誼か
鶴が如く 第3話「左近よあれが上田の灯だ」
沼田城に滝川一益の軍勢が向かっている。上杉による真田領への侵攻の可能性が高いことが判明したためである。一益は動員可能な最大限の兵力を集め、沼田に向かった。城門の上の櫓には真田昌幸と信幸の姿がある。やはり昌幸はしぶとく脱出していたようである。しかし、
「何故、城門を閉じている…?」
城門は閉じられ、さらに塀や櫓には塀の姿も見られる。上杉の兵が出立したとの報告はまだ入っていない。不審に思う一益だったが
鶴が如く 第2話「その男、表裏比興につき」
真田安房守昌幸、という男を表現するのによく用いられる言葉がある。「表裏比興の者」である。天正14年の上杉景勝宛書状の添書において、石田三成が評した言葉である。「機を見るに敏で、油断ならない者」くらいの意味合いであろう。史実では武田家滅亡後、織田家に臣従、本能寺の変後の混乱にあった関東甲信越において上杉、北条、徳川を手玉に取り家を存続、独立大名となった手腕を買われてのことである。しかし、本世界線では
もっとみる鶴が如く 第1話 「大殿、死んだってよ」 〜信長の野望 創造PK〜
その知らせを、滝川左近将監一益は厩橋で聞いた。新緑が色を失っていく。自分を引き立ててくれた大殿、いついかなる窮地も乗り越えてきた大殿は、もういない。しかし、それとは別に一益の頭を悩ませているのは、自身の進退である。関東管領などと大層な役職をつけて乗り込んだは良いが、所詮は織田軍団の元締めの一人でしかない。今回の急報に接し烏合の衆の彼らは相互不可侵を約し自領の防衛に汲々としている。そして一益はその最
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