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PROOF OF SHADOWS ep.12

「クソッ!!」 ゼヘムは悪態をつく。地上に出た後、護衛の車数台を引き連れて逃走していた。 「…もはや、全てを帳消しにするしかない」 ゼヘムは大きくため息をついた後、同乗している部下に指示を出す。 「"首輪"を起動しろ。…アレも不要になった」 突如、先頭を走っていた護衛の車が派手に横転、炎上して、ゼヘムの乗っていた車が急ブレーキをかける。 「…なんだ?」 前方に人影が見える。黒いマントを纏った男… その背には仏像の月輪のような、大きなリングが青白く輝いていた。

    • PROOF OF SHADOWS ep.11

      「お前を、本当に信用していいんだな?」 皇は仮面の男に問いかける。 「私はナタリアの為ならなんだってする。貴方の事を調べたが、ナタリアは貴方の元にいた方が良い。…彼女が貴方を殺せるはずがない」 その答えを聞いて、皇は少しだけ笑う。 「そう思ってもらえて嬉しいよ。その…ナタリアに"貴方のような"友人がいるとは思わなかった」 仮面の男はぐぐっと皇に顔を近づける。 「私は友人ではない。彼女の中でユーリはもう死んだ。ナタリアの今の友人…家族は貴方達だ。私はナタリアの影…ナ

      • PROOF OF SHADOWS ep.10

        ユーリの家系はヘルべチアで代々続く有力な財閥だった。 ユーリ、もといゲオルグ・シュタイアーは幼い頃から家督を継ぐ事を期待され、抑圧されてきた。 その反発からユーリはとうとう家を抜け出し、孤児として生きることを選択した。 ここはいくらでも自由で、煩わしい仕来たりもなく、自分を押し殺す必要もない。 アイルズと…ナタリア。皆の事を家族だと思っていた。 もう二度と、家に戻る事は無いと思っていた。 「長い間、姿を見せないと思ったらこんな形で帰ってくるのか、バカ息子」 父親がユーリに

        • PROOF OF SHADOWS ep.9

          私はひたすらに、歩いた。 ただただ、行く当てもなく彷徨った。 山を越え、谷を越え、都市の雑踏に紛れ、地下道や高架下で寝食をしながら、ボロボロになっていく体を引き摺って、行きかう人々の気にもされずに。 幸いな事にこの体はあまり食事をとらなくてもいいらしい。 疲労もさほど感じない。 仮面の男に言われたことが頭を過る。なぜ、私に"生きろ"と言ったのか。 ユーリにも同じことを言われたな、と思い出しながらふと、自分の手を見つめる。 冷たい義手の手。機械仕掛けの、人形のような私

        PROOF OF SHADOWS ep.12

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        • PROOF OF SHADOWS
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        記事

          PROOF OF SHADOWS ep.8

          「試験プログラムで重大なシステムエラーが発生。実験施設にいる作業員は直ちに避難を--」 耳をつんざくような警告音で目が覚める。 …意識が朦朧としている。私は、どうなってしまった。 アイルズと一緒に私は死んだ筈だ。ここは、どこだ? 暗闇の中、周囲に人影と、うめき声が聞こえる。 突如、前方から強烈な光が降り注ぐ。 銃声と共に、隣の人影が倒れる。 ---私と瓜二つの顔をした -----死体が 「まもなく、当区画は閉鎖されます。作業員は---」 逃げなきゃ、と生存本能が遠く

          PROOF OF SHADOWS ep.8

          PROOF OF SHADOWS ep.7

          私は引き金を引く "それ"は糸を失った操り人形のように、全身の力が抜け、どさっと地面に倒れる。 それをみた他の人形達は、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。 無機質な無線の声と共に一斉に攻撃が始まる。 命を奪う行為での感情の起伏は、もう、とうに消えた。 アイルズ…兄さんが生きていれば、それでいい。 「早く逃げるぞ!おいッ!アイルズ!」 仲間の呼び声も耳に入らず、視線の先の光景に見入ってしまった。 仲間の死体の前に立ち、見下ろす一人の兵士の姿を。 俺は確かに見た。見てし

          PROOF OF SHADOWS ep.7

          PROOF OF SHADOWS ep.6

          「君の名前は…確か、ナタリア…だったかな?」 ゆっくりと対面に座っている男に向かって顔を上げる。私は手錠をかけられ、暗く、厚いコンクリートで囲まれた狭い部屋にいた。私の顔を見るなり、男は不気味な笑顔を浮かべる。 ユーリが死んだ後、私はアイルズと別れた。突如として始まった圧政に対して、アイルズ達は武器を取って立ち上がる事を選んだが… 私はもう、仲間が目の前で死ぬ事に耐えられなかった。私は逃げたのだ。 自暴自棄になり、内戦で荒廃していくヘルべチアから避難する避難民に紛れ、

          PROOF OF SHADOWS ep.6

          PROOF OF SHADOWS ep.5

          「…ユーリ、もう駄目だ。大人しく捕まるしかない」 ナタリアが僕に言う。いつもの様に金持ちの屋敷に忍び込んだのはいいが、バレてしまった。 「また撃たれるだけだ」 警察の奴ら、躊躇なく撃ってきた。こんな事は初めてだった。 ナタリアが撃たれて、初めて感じる死の恐怖に怯え、無我夢中で逃げ、気がつけば退路を誤り、路地裏の袋小路にいた。 奴らの声と足音がどんどん近づいてくる。殺意が、地の果てまで追いかけてくる。 殺される。 ふと、ナタリアの顔が目に入る。 絶望と恐怖で歪み、

          PROOF OF SHADOWS ep.5

          PROOF OF SHADOWS ep.4

          新年を迎え、ヘルべチアは祝賀ムードを迎えている。 夜の街に雪が降りしきる中、郊外外れの酒場に明かりが灯り、若者達で賑わっていた。 「酒ってのは初めて飲んだがうまいじゃねえか!アッハハハ!」 特徴的な甲高い笑い声が聞こえて、アイルズは振りかえる。 テーブルの上で立ち上がり、一際はしゃぐ青年…。 アイルズは持っていたジョッキをダンっとテーブルに叩きつけ、彼の行動を制止させようと叫ぶ。 「ユーリ!お前飲み過ぎだぞ!…ナタリアも止めてやれ!」 騒ぐユーリをよそに、ナタリア

          PROOF OF SHADOWS ep.4

          PROOF OF SHADOWS ep.3

          おにいちゃんが駆け寄ってくる。なにか赤い物を私に向かって投げた。 「ほらっ」 投げられた物を受け取ると、真っ赤で美味しそうな林檎。 「わぁ!ありがとう…って!」 お兄ちゃんにお礼を言う前に、おもいきり手を引っ張られる。 「待てッ…!クソガキィ!」 お兄ちゃんの後ろから、先程のあんなに優しそうだった店主が鬼のような形相をして追いかけてくる。 「二人一緒なら、何だってできる!そうだろ?ナタリア!」 わけもわからず、お兄ちゃん…アイルズに手を引っ張られ、全力で走る。お

          PROOF OF SHADOWS ep.3

          PROOF OF SHADOWS ep.2

          「お兄ちゃん、あれ…」 妹が指をさす先には、市場の崩れんばかりにばかり積まれた林檎。 前にいる家族が、子供におねだりをされて一つ買っていった。 優しそうな店主が子供に優しく手渡し、子供は嬉しそうに頬張り、家族に連れられて帰っていく。 「美味しそう…」 思わず、口に出してしまった。ここ最近、僕と妹は何も食べていなかった。 妹は俯いたまま黙っている。幼いながら兄に気を使って我慢している様子。 「…ここでちょっと待ってて」 僕はそう妹に言うと、市場に向かって駆け出す。 「姉

          PROOF OF SHADOWS ep.2

          PROOF OF SHADOWS ep.1

          「入り口に歩哨2、内部にターゲット及び護衛1」 続けざまに無線機越しからパスッパスっと消音した発砲音が聞こえる。 「出口を確保」 下を覗けば二名の死体を速やかに隠し、建物に侵入していく部下が見える。 よく訓練された一連の動作は、機械的だ。殺人マシーンと言ってもいいだろう。 「配置についた。あとはそちらのタイミングに任せる。隊長」 屋上で待機していた私はゆっくりと空を見上げる。 土砂降りの雨が降っている。これなら、突入直前まで標的に気づかれることはまずないだろう。

          PROOF OF SHADOWS ep.1

          Epilogue

          街郊外の墓地に、雨がしとしとと降っている。 傘をさした女性が一人、歩いている。 ふと、一つの墓の前で立ち止まる。ゆっくりと屈んで、持っていた花束をそっと墓に手向ける。 墓標には"ローザ マクシム アイルズ ククーシュカ”と刻まれていた。 「…ナタリアも刻もうか迷ったよ。」 ナタリアは苦笑した後、ぼそぼそと墓標に問いかける 「なぁ、どうして私に、こんな運命を背負わせたんだ?きっと私がそっちに行っても居場所なんてないだろう。結局、私は家族全員を殺してしまった。」 声

          Epilogue

          GIDEON

          ギデオン 主に法執行機関向けの軍需製品を製造、納入している企業。民間向けの実用衣料品の生産販売もしている。 同社独自の高い技術力、堅実で合理的な製品は政府、軍部のみならず、民間でも人気が高い。 代表者 ゲオルグ・シュタイアー 年齢、経歴不詳。全身義体の男性。ギデオン社はシュタイアーの一代で築かれた。「自分で信頼できない物は売らない」という精神の元、自らの体を自社の新技術のテストベースにしている。 経営者のみならず、彼自身も優秀な開発者、デザイナーであり自社の製品の設計に深く

          THE DAY FALLS AGAIN EP.7   「Don't leave」

          「マクシム」 皇が歩み寄るマクシムに呼びかける。…マクシムの足が止まる。 ガメザ、瑠璃川、ナタリアは身構え、イオはauroraのスコープでマクシムを捉え続けている。 ≪課長…、これ以上動かれたらマクシムを撃ちます。≫ イオが構えたままAURORAが課長に呼びかける。課長は静かに頷く。 「私の憎しみは、親が子を愛する、夫が妻を愛すると同じように深い…。」 …先に口を開いたのはマクシムだった。その体、眼孔に焔を宿したまま。 左手…剣を顔に近づけていき、額に当て、祈る

          THE DAY FALLS AGAIN EP.7   「Don't leave」

          THE DAY FALLS AGAIN EP.6 「Remember」

          マクシムの錆着いた義体はギシギシと唸りともとれる音を立てながら、 「ナタリアッ!」 ガメザはナタリアの名を叫びながら、石材の床を砕かんばかりに叩き走り、 間一髪で彼女の前に飛び込む!構えた急造Harpeの側面が、 マクシムの巨大なフランベルゼを受け止め……きれない。 「…ってェな。娘に対しても遠慮なしかよ!」 重い一撃を食らい、金属のきしむ音がして、ガメザは背後のナタリアごと 大きく後ろへと下がる。苦い顔を上げると、ゆらりと剣を振り上げたマクシムが―― ――その

          THE DAY FALLS AGAIN EP.6 「Remember」