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|影山多栄子の小部屋|

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人形作家・影山多栄子が物語世界を旅しながら、共に時を刻んでゆく人形たちを発表します。
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#霧とリボン

影山多栄子《1》|月光菓子ケーキセット

*  都会の街で、屋根裏部屋に暮らす若く貧しい画家の青年。でも、子どもの頃からの友達である月が、世界中で見た光景を夜ごとに語ってくれるから孤独ではありません。ディケンズとも深い親交のあった作家アンデルセンが紡いだ『絵のない絵本』は、そんな美しく不思議な物語。  第七夜、月が自然に囲まれた石の塚を見下ろしていると、たくさんの人が通りかかります。しかし、本当にその美しさを理解しているのは貧しく祈りに満ちた少女だけでした。  第九夜、月はグリーンランドに光を伸ばし、人と自然の

影山多栄子|霧とリボンと私

 夏のある日、きょろきょろワクワクとあちこちを見回しながら、菫色に華やぐストリートにたどり着きました。モーヴ街開通4周年をお祝いする《菫色の実験室vol.9~菫色×デザート》展から、正式に5番地のサティス荘に入居することになりました、影山多栄子です。どうぞよろしくお願いいたします。  もうずいぶん長い間、粘土、布、木、紙、他にもいろいろ、その時々に一番しっくりくる素材を使って、人のかたちのようなものを飽きずに作っています。人形をつくるということに、何故こんなに惹き付けられる

熊谷めぐみ & 影山多栄子|ART & ESSAY《5》|アリスとアリシアの物語

 これは7歳の女の子アリス・レインバードがつくった物語。  むかしむかし、あるところに王さまと王妃さまがいました。二人には19人(7歳から7ヶ月まで)の子どもたちがいて、長女のアリシア姫がみんなの面倒をみていました。  ある日、お仕事に行く途中に、王さまは妖精のおばあさんに出会います。おばあさんは、王さまが買った鮭をアリシアに食べさせるように言い、その骨はぴかぴかに磨いて、正しい時に願えば、願い事を一つだけかなえてくれる魔法の魚の骨であるとアリシアに伝えるようにと告げます。

熊谷めぐみ & 影山多栄子|ART & ESSAY《6》|可憐で不思議なクリスマスの光

 クリスマスを祝う人々であふれるロンドン。だが、人間嫌いで強欲なスクルージにとってクリスマスはくだらないものでしかない。あるクリスマス・イブの夜、スクルージの前に七年前に死んだはずの相棒マーレイの亡霊が現れる。そしてマーレイの予告通り、過去・現在・未来の三人のクリスマスの精霊がスクルージのもとを訪れる。 *  クリスマスなんてくだらない! そう言ってクリスマスを、そしてクリスマスを祝う人々を強く拒絶するスクルージ。一方、ロンドンの街では、人々が、クリスマスの歓びを家族や大

二人展《空はシトリン》|巻頭エッセイ|森 大那|曲がり角へと歩いてゆくだけ

 宮沢賢治は鈍い。それは彼の武器だった。  これまで宮沢賢治は、その作品群が無数の観点から読解されてきた。のみならず、遺された膨大なテクストは後世の人々の創造の源泉となり、あらゆる芸術ジャンルで派生作品が創られている。  彼に匹敵するほどのフォロワーを生み出せた作家は世界規模でも例がほぼ見当たらず、わずかにアメリカのエドガー・アラン・ポーが思い浮かぶだけだ。  しかしそれは、彼が時代のなかで先進的であろうとしたからではなかった。反対に古くあろうとしたのでもなかった。  宮沢

二人展《空はシトリン》|永井健一&影山多栄子|春から生まれしもの

 初夏は幻のように過ぎ去り——まるで生きとし生けるものすべてがじっとわたしたちを見つめているような暑さのなか、本展は幕を上げる。  この熱暑はまぎれもなく、今は遠き〈春〉が産み落としたものである。春は、冬の間ねむっていた生命がいちどきに噴出する季節であって、そこで生まれた命は一直線に、だが静かに夏へと向かってゆく。  本展メインヴィジュアルのひとつ《私の知らない林》に描かれている、煙る記憶のなかに通り過ぎる子どもたち。その幻想は、汽車の窓から眺める景色のように、あっという

二人展《空はシトリン》|永井健一|光彩を纏う空

 淡い色合いを用い、風景にきらめく生命の瞬きを描く永井健一さまの作品が、宮沢賢治の詩群と溶け合います。  最初の作品は、企画展のタイトルともなった「空はシトリン」が含まれた詩に捧げる一作。何度も口ずさみたくなるような繰り返しによるリズムが楽しくもせつないこの詩を、絵画の中の幾層もの重なりが連想させます。  シトリンが降り注ぐ空。地平線が幾重にも交わり、すれ違い、繰り返していく。動物、人間、植物がそれぞれ運命に揺れながら生きる。それぞれ異なる地平を生きながらも、安らぎに満ち

二人展《空はシトリン》|DAY 1

本記事はオンライン展覧会《空はシトリン》DAY 1の配信記録です。 Text|霧とリボン  コントラストの強い陰影が空気を刻む盛夏の頃、翻って菫色の小部屋には、霧けぶる淡やかな色彩世界が広がっています。  私たちの夏フェス、影山多栄子 & 永井健一 二人展「空はシトリン〜宮沢賢治『春と修羅』に寄せて」が本日開幕致しました。初日の今日、オンライン・ギャラリーを訪れて下さいました皆様に厚く御礼申し上げます。  霧とリボンで長くご活躍頂いてきた二人のアーティストが『春と修羅』

二人展《空はシトリン》|影山多栄子&永井健一|誰もが一人の

 本記事では、影山多栄子と永井健一が、宮沢賢治の詩「春と修羅」をテーマに創作した4点の作品を紹介する。  自由な想像と創造の世界。両作家の感性を具現化する力には圧倒される。それぞれの個性にふれて、賢治の詩の世界にひたりたい。  気高さの中に反骨心を秘めた挑むようなまなざし。仕立ての良い服は身分の高さと揺るがない個性を示している。作家が「春と修羅」の詩から創り出したのは、意志の強さと繊細さが同居する孤高の王子。  表情に滲む余裕は、まだ本当の意味で世界を知らない恐れ知らず

二人展《空はシトリン》|影山多栄子|白く、やさしい幻想

 日常を生きていて、ふと「ここにはいない誰かさん」を思うことがある。  その「誰かさん」がほんとうに存在するのか、何者なのか——そういった問いはたぶん、あまり意味がない。でも、小さいとき「誰かさん」はいつも側にいて、もっと身近に実感していた気がする。  宮沢賢治『小岩井農場 パート9』は、こうした精神世界の友だちを唄った詩ではないかとわたしは思う。  影山多栄子氏はこの詩に現れる「ともだち」ユリアとペムペルを、人形作品としてみごとに表現されている。初夏に差し掛かる頃に降る

二人展《空はシトリン》|DAY 2

本記事はオンライン展覧会《空はシトリン》DAY 2の配信記録です。明日8/2は配信お休みとなります。 Text霧とリボン  酷暑が続いていますが、皆様、お健やかにお過ごしでしょうか。水分補給をされながら、どうぞくれぐれもお気をつけてお暮らし下さいませ。  私たちの「観て読む」夏フェス、影山多栄子 & 永井健一 二人展DAY 2——本日も麗しのシトリン団が堂々と菫色のステージを飾りました。オンライン展覧会をお楽しみ下さいました皆様に深く感謝申し上げます。  本日最初のス

二人展《空はシトリン》|永井健一&影山多栄子|夜汽車の希求

 「青森挽歌」の対照的な2つの声、亡妹トシへの願いと遺された者の哀嘆が、永井さまの2作に響き渡ります。影山さまの人形1点は、私たちをトシの無邪気な面影へと誘います。  夜の静けさが、遠くから聞こえるさまざまな声を総動員して、心にのしかかってくる。風景がびゅんびゅんと通りすぎる汽車の中、トシの姿が詩人の頭の中に往来する。  水族館のように光る窓は、焦点を集めるように降り注ぐ光として描かれている。苹果の香気が漂うガラスに閉じ込められているのは「わたし」。  たおやかな花咲く

二人展《空はシトリン》|永井健一|彩筆のイリデッセンス

 『春と修羅』より選ばれた「休息」。草叢に身を投げ出し空を眺めた心象が綴られた一編です。  極上のクッションに例えられたからくさは丸まって眠る猫のよう。永井様を透過させた詩は記号より解き放たれ具象として漂いはじめます。星座のように巡るモチーフ。空に投げた帽子、とんぼ、黒い雲からにじむ雨滴───網の目となった青空のかけらが空を覆います。  そのひとつに虹の欠片を見つけることができます。宮沢賢治が眺めた曇天に虹を出現させた永井様。画家のクリエイションが立ち上る瞬間を捉えたよう

二人展《空はシトリン》|DAY 3

本記事はオンライン展覧会《空はシトリン》DAY 3の配信記録です。明日8/4最終日は最終日となります。 Text霧とリボン  一日のお休みをはさみ、夏フェスの後半が本日よりスタートしました。  影山多栄子 & 永井健一 二人展DAY 3をお楽しみ下さいました皆様に厚く御礼申し上げます。菫色の小部屋を翔るシトリン旋風、宮沢賢治『春と修羅』と出会った新しい風を感じて頂けましたら幸いです。  盛夏の遠雷のように、夜汽車の走る音が聞こえてきました。  本日最初のご紹介は、詩人・