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最後のホモ・サピエンスはきっと野郎で温もり不足で死んでゆく
「国際環境保護局の報告によると昨夜、保護していたホモ・サピエンスの番の雌『イブ』が死亡したとのことです。この番に子はなく、雌の死亡によりホモ・サピエンスの自然繁殖は不可能となりました。保護局は、今後、残った雄『アダム』と手元にある研究用の生殖細胞を使用した人工繁殖を試みるとの方針を明らかにしています。では、続いてのニュースです。」
特に信心深いわけでもないけれど、『アダム』が最初の人間の男の名
Girly angrily
願わくば、
早く帰りたい日に限って、妙な打ち合わせをねじ込まれて、 予定が台無しになることが往々にしてある。
今日もそんな日だった。
社会に出て数年経てば、そんなもんだと飲み込めるものも多くなるけど、それでも心の何処かがささくれだたないわけでもない。
(段取り悪いんだよなぁ)
と、心の中で呟きながら、ただいま、とドアを開ける。
「ねえ!聞いてよ!」
おかえりよりも先に耳に飛び込んできた言葉に
Can't escape
「逃げたい」
「何から?あたしから?」
止めろ、見せるな、暴くな。
俺を、
そっとしておいてくれ。
「逃げたい」
「何から?あたしから?」
「全部」
「そんなことが可能なのかしら?」
「だってあなたは此処にいたのよ」
「確かに此処にいたのよ」
「それは覆せない」
「あなたの痕跡はあなたが死んでも残るのよ」
「俺が一体何をした!!」
「何もしてないわ」
「ただ、息をして、食事をして、適度
Love enough
それは、時間にして30分くらいだったと思うけど、
重苦しさが永遠に続くのではないかと錯覚した。
私は、彼の眼を見ることができなかった。
彼は、私を見ていた。
少し前に、髪を切ったことを後悔した。あと数日、どうして待てなかったの。私は、顔を上げることができない。
彼は、私の言葉を待っていた。
私は、彼が好きだ。過去形にできない。
今も、こうしている瞬間も好きで好きでたまらない。
けれど、相容れな
---CUT HERE---
「○○ちゃんは、工作が好きなのね」
幼稚園の時に、先生に言われた言葉だ。
確かに、私はお友達の誰よりも手先が器用だった。
お絵かきも、粘土遊びも、砂場でお城を作るのも上手にできた。
なかでもいちばん得意だったのは鋏で切り絵を作ることだった。
それに気づいたのは小学4年生の時だった。
(先生、違うわ。私、工作が好きなんじゃないの)
(鋏で切るのが好きなのよ)
高校生の時、観た
mail to (business)
明日の方が近いくらいの時間帯に、ひっそりと静まり返ったオフィスでキーボードを叩く。エアコンやプリンタが駆動している中で、その音はことさら大きく聞こえた。あまりにも静かなので、カバンの中のスマホが震える音もきちんと聞こえる。通知がやけにたくさん届いているようだった。
ディスプレイに表示されている日付と時刻に、ああ、と合点がいった。
今日は誰もが知る国民的アニメ映画と言っても過言ではない映画の地
Justice in my hand
Are you ready ?
「私、何か間違ってる?」
ああ、萎える。
僕は目の前に座る自分の彼女の顔を直視することができなかった。
この前オープンしたばかりの雰囲気のいいカフェで、こだわりのマシンで淹れたというエスプレッソの香りも台無しだ。本日のケーキも、本当はきっと美味しいはずなのに、途端に味気なくなってしまった。丁寧に作られたはずのケーキに、その後ろに見える店員さんに声にならない
under full bloom of the cherry blossoms
夢を見た。
裸足の女が歩いている。
白いノースリーブのワンピースを着た女が歩いている。
桜が咲いていた。
手を伸ばせばすぐ届きそうな距離で、桜の花が咲いている。
その枝先をくぐるように女は歩く。
まるで踊るように。
俺はしばらく、その様子を遠巻きに眺めている。
女の周りが淡い光で彩られ、そこだけが夜の中で浮かび上がっている。
女が振り返った。
呼んでいる。
手招きしていた。
俺はおそ
Please become a substitute.
side M
床に放られた携帯が震えている。
俺は無視してコントローラーを握る手を離さない。
とうの昔にクリアしたRPGを再び始めてもう三日。
ずいぶんと長いこと携帯が震えて、不愉快。
相手が誰かはわかってる。
ようやく止まった携帯に、手を伸ばして番号を確認する。
名前は表示されない。
電話帳からアドレスと番号を消したのはもうずっと前のことだ。
88秒、ご苦労さん。
着信履歴はそいつの番号で