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カールチュディクの「エーゲ海」紹介(Aegean Sea by Carl Chudyk)

この記事はぐらさんの「ボドゲ紹介 Advent Calendar 2023」3日目の記事になります
https://adventar.org/calendars/8780



みなさん、カールチュディクのゲームやってますか?
そのデザイナーの名前を知らない?誰だって?

今年、テンデイズゲームズから日本語版も発売された「ラ・グランハ」の説明書にも紹介されている有名ゲーム「Glory to Rome」のデザイナーですよ!

旧版だけでなくデラックス版でもGtRへの敬意を評してくれるチュディク信者に優しいデザイナー

BGAでも長らくプレイされていて、今年キックスターターで最新バージョンが発表された「イノベーション」のデザイナーでもあります。イノベーションやユークロニアなどは日本語版が出ていたので、10年前くらいからボードゲームをやっていた人はその時に名前を知っていて、その後は特に何も聞かないなあと思っているかもしれません。

この記事を書いている人は、イノベーションにハートを撃ち抜かれて以来、このデザイナーを欠かさず追っています。
そして、今回たまたまアドベントカレンダーを書く機会があったので、このデザイナーの最新ゲーム、「エーゲ海」を紹介しようと思った次第です。

ただし、微に入り細に入り紹介をしても、輸入して購入する人はそんなにいないだろうし、正直なところ、チュディクの最高のゲームが更新された!マストバイ!!というわけでもないので、概要とシステム的に注目すべきポイントのみを紹介します。

カールチュディクのゲームには特徴があります。カード1枚に複数の役割を仕込んでおいて、それを特定のシートの下に差し込んで、差し込んだ方向に応じて、役割を変える。また、カード自体にも能力・テキスト効果がついているので、テキスト効果として使うか?それとも、差し込んでしまうか?どのカードをどう使うかのハンドマネジメントをさせることが、基本的なゲーム性になっています。

ゲームの様子は画像のような感じになります。

本作でも基本的なプレイ模様は変わらずです。たくさんのカードが様々なところに差し込まれます。
手前に写っている大きめのシートが、本拠地の島と呼ばれ、中心の青いシートの上に乗っているカードも島として扱われます。

左が出ていると船、上が出ていると神殿、
右が出ていると大理石の品物、下が出ていればAthensの住民
真ん中はカードの効果として使ったときのテキスト

この島に、左にカードを挿すと「船」、上に挿すと「神殿」、右に挿すと「品物」(本拠地の島にある品物がゲーム終了時の得点)、下に挿すと「住民」として、それぞれ扱われます。
基本的には船や住民を使って、品物を本拠地に持ち帰ってくるということを目指します。

チュディクのゲームの例にもれず、このゲームも1つ1つのカードに書かれたカード効果を使って相手より有利な行動をしていくことが目的になります。
ただ、こういったゲームを作り続けてきたチュディクはこのゲームにおいて、ひと工夫をしています。
それが「カードの効果を全て実行できなければカードの効果が使えない」というルール!これはカードゲームの始祖、マジック・ザ・ギャザリングが持っていた黄金律の一つで、今でもデファクトスタンダードである、「実行不可能な指示は無視する」という処理にあえて反発したルールとなっています。このテキスト効果の制限がこのゲームで独特のコントロールを要求されるポイントです。

ルールにはあまり触れないで説明をすると、こういったカードゲームでよくある効果として、「この島に3つ品物を作成する」というものがあるとします。このゲームでは品物を作成すると言われたら、手札のカードを3枚捨てて、島に右にカード挿すとしてください。(注:実際のルールとは差があります)
一般的なカードゲームでは特に指示がなければ、手札が1~2枚でも品物は1~2つ作成できるのですが、このゲームでは手札が3枚以上でないとこの効果を使うこと自体ができません。
このルール変更によって、強くて大きい効果が書いてあるカードより、弱くて小さい効果のカードのほうが実行し易いといったことが起こります。
カードを選ぶ際にただただ強いカードを残しておいたほうがいいということにならない。効果が小さい方がうれしいといったことが起こります。
大きい効果のカードは、その前提を満たすために動くのかといったことを考える指針となる可能性もあります。
もちろん、他のゲームでも一部の効果がこういった性能をしていることはあると思いますが、ゲーム全体で「実行不可能な指示があったら、カードの効果は使えない」としたものは珍しいと思います。

テキスト効果によるハンドマネジメントゲームをずっと出しているカール・チュディクの挑戦、また、ルール自体の面白さという部分で評価ができるゲームだと考えています。カードゲームのデファクトスタンダードへの挑戦によるテキスト効果の制限によって、新しい味を出すことに成功していました。(200枚近いカードを実行可能かどうかの条件を変更せずに日本語化するという作業は非常に大変でしたが…)

ゲームの他の特徴としては、全てのカードがユニーク(テキスト欄が異なる)であること。プレイヤーが担当するエーゲ海の文明5種類がそれぞれのデッキに分かれていて、それぞれに特色や固有のルールがあることなどがありますが、今回は概要のみとします。
(この部分が学習曲線を極端に上げていて、非常にゲームに慣れるのが難しい=なかなかプレイ機会を作りづらいというのは、明確に欠点だと思います)

ずっと同じデザイナーを追っていき作家性や、作者のチャレンジしたテーマを味わえるようになるのは非常に面白く、私はボードゲームの面白さの一つでもあると思っています。
皆さんも比較的時間のある年末年始に同じデザイナーのゲームを遊んでみてはデザイナーという面からシステムなどを見てみるのはいかがでしょうか。

https://asmadigames.com/sea/index.php



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