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安楽死を遂げるまで、を読んでの感想



どんな本?

ジャーナリストの著者が、世界各地で安楽死について取材(安楽死現場にも立ち合い)し、それをまとめたルポルタージュ。


読んでの感想

本書を読み、これはノンフィクション小説のようなものだと感じた。著者の文章力が高く、さながら一冊の小説を読んでいるかような気分になるのだ。

著者は安楽死する人の
心情・人生に重点を置いて
本書を描いている。

だがこれは、
良い点もあり、悪い点もある。


良い点は、
自死を幇助する側、自死する側の人間性や人生が見えてくることである。生い立ち、性格・性質、家族、恋人に至るまで様々なことが解る。また情景描写も素晴らしいため、自分がその自死現場にいるかのような臨場感を味わえる。


悪い点は、
簡潔に「どういう国にどういう団体があり」「どういう条件」があって「どういう人(国籍・病気など)」が安楽死をした(できた)のか?

そしてそれは「本当に安楽死だったのか」、という要点だけを迅速に知りたい方には、本書はかなり難解だと感じた(膨大なルポルタージュの中から、そこのみを抽出することが、私は大変であった)。



安楽死に関心を持つ、
大半の人が知りたい
ことは、
ズバリ、


【自分でも
 安楽死できるかどうか?】


これに尽きると思う。




本書の自殺志願者は次のいずれかに該当する、と著者は書いている。


1.余命が解っている人、恒久的な強い痛み(精神含)がこの先ずっと続く(ことが解っている)人
2.悔いのない人生を送ってきた人


逆に言えばこのいずれでもない場合、人は本気で死にたいとは思わない、と著者は書いている。



本書で紹介されている、安楽死が可能な国


スイス
オランダ
ベルギー
アメリカ(オレゴン州)



日本人は安楽死できるか?


本書によれば、日本人が安楽死を望むならば可能な国はスイスかベルギーである(ただしベルギーは外国人は黙認であり、公式には認められていない)。
だが言葉の壁や医師の診断などの問題もあり、決して安易に実行できるものではない。2018年現在では、本書を読む限り日本の一般人が海外で安楽死を実行するのは、ほぼ不可能であるように受け取れた。


私見では、安楽死の法整備や理解は世界各地で年々進んできており、今後数十年先まで考えるのであれば、日本人も比較的安易に安楽死が行える状況が整う可能性もままあると思う(それでも日本国内では難しそうだ)。


私自身、安楽死は決して他人事などではなく、自分が老境に至ったとき、また難病に侵され回復の見込みがないときなど、安楽死で死を選ぶことを実際に考えている。


その時に、今(記事執筆時2018.11)よりも楽に安楽死が可能な世界になっていることを願う。