#2 サカナクションと僕

 

「SAKANAQUARIUM2019 "834.194" 6.1ch Sound Around Arena Session」について、少しではありますが書いているので、これから行かれる方、内容を知りたくない方はご注意ください。


まずサカナクションとは

 2005年に結成され、2007年にデビュー。ボーカル、ギター担当の山口一郎を中心とした男女5人で構成される。
 バンド名は「魚」と「アクション」の単語を組み合わせた造語。山口一郎はインタビューで、ひねくれたこと・いい意味でふざけたことをやりたく、バンド名にはあまり用いられない「サカナ」を入れ、変化を恐れずにやっていこうという意味をこめて「サカナのアクションでサカナクション」にしたという趣旨を述べている。(Wikipediaより引用)


ナイトフィッシング

 僕がサカナクションに出会ったのは2013年。フジテレビ系ドラマの「dinner」でサカナクションの「ミュージック」という曲がエンディング曲として使われていた。テレビが新ドラマを自動的に録画するタイプで、その流れで「dinner」の1話を見た。その時12、13歳で今から6年も前なので「ミュージック」がどのタイミングで流れたかは覚えていないが、初めて「ミュージック」を聴いた時、いや当時曲名も知らなかったので自分にとって新しく、心地良く、不思議な音楽が流れてきた時、心の深くに垂らしていたルアーは一瞬で食い付かれた。エンドロールを凝視し、誰の何という曲かを探した。そこにあったのはサカナクション「ミュージック」という文字。僕の目は藍色に、ではなく光り輝いていたことだろう。

 サカナクションとの出会いは、まさに運命的で、かかった魚のあまりの大きさに僕はサカナクションという大海に投げ出された。

 その後、すぐにサカナクションについて調べた。あのモード学園のcm(夜の踊り子)もサカナクションの曲だったことを知り、なんとなく通り過ぎてしまっていたことに後悔した。現在に至るまでの変遷の中で多くの曲を聴いた。それはもちろん、サカナクション以外のバンドや、アイドル、洋楽も聴いた。曲の好みは変わるものだが、サカナクションだけは絶対的な存在だった。僕の中でずっと変わらないであろう、音楽の根幹になっている。

 僕の夢の1つにライブで「ミュージック」を聴くというものがある。正しくは「あった」。

 今回のライブ「SAKANAQUARIUM2019 "834.194" 6.1ch Sound Around Arena Session」に参加した。初めてのサカナクションのライブに分かりやすく胸が踊っていた。スピーカーが全方向に付いていて、幕張メッセの地面も震えていた。それはさながらエンジンの振動のようで、大きな船に乗り、みんなで釣りに出かけているようだった。何曲かの後に「ミュージック」が来た。Macの演出がきたらほぼ「ミュージック」が確定する。暗転して最後のサビを歌う部分がある。その最後のサビの盛り上がりは、実際に経験しないと分からないくらい迫力のあるものだった。山口一郎さんの声と演奏が、1匹の魚のように楽しそうに暗闇の中を泳いでいた。それに続くように4匹の魚が自由に、でも群れを成して泳いでいるように見えた。聴こえた。その時間が本当に楽しかった。サカナクションのライブは、アイドルのライブのようにコールなどはない。コールにはコールの魅力があるが、正直僕はコールが苦手で、意識がアーティストではなくコールに集中してしまうからだった。それに対しサカナクションは音楽に合わせて思うままに踊る。手を叩く。声を出す。これが僕には心地良かった。純粋に心から楽しめた。正解はない。自分だけの楽しみ方。それでいて、会場が一体になっているなんて、とても素敵なことだと思う。全ての演出が楽しくて、芸術的で、今まで参加したライブの中で(そもそもの母数が少ないのだが)最高のライブだったことは間違いない。

 最後に、この文章の中で「サカナクション」と何回言ったか数えていただろうか?もし834.194回だったらより良い文になっていただろう。僕に、音楽は自分が思うように楽しめばいいと教えてくれたのはサカナクションだった。山口一郎さんの「良い違和感」という言葉がずっと心に残っている。まさしくその通りで、サカナクションの曲からは、僕の語彙力では上手く言葉にできないけど(言葉にしなくて良いのかもしれないが)「なにか不思議で、でもしっくりくる。どこか新しいけど聴いたこともあるような。そして、なんか良い」。僕はサカナクションが好きだ。これからも「変わらないが、変わり続けるサカナクション」に釣り糸を垂らし続ける。

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