不完全な月
眠れない夜に
まんまるには少し足りない月を見上げながら
静かな街を散歩する
誰もいないのに赤に変わる信号
ひとけもないのに明るいコンビニ
私は存在しているのだろうか
ふっと疑問に思う
もしかすると
私は透明人間で
この世には存在していなくて
誰の目にも見えていないのではないか
あの不完全な月のように
何か足りない気持ちが私を否定する
あの欠けた月の裏側には
まんまるな完全な世界があって
たくさんの人たちが楽しい時間だけを過ごしているのかもしれない
どれだけ手を伸ばしても
いけないあちら側の世界
新聞を積んだバイクのヘッドライトで引き戻された
私のいる場所
あの足りない月が飲み込まれようとしている
反対側の明け始めた空を残して
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