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イロイロな保険の色々

note初投稿記!まともなブログ形式の投稿はオレンジ色のSNS以来数万年振りとなります(世代が限定されてきますね)。

こんにちわ。Sasuke Financial LabというInsurTechベンチャーでデザインに従事しているオオハシと申します。保険業界という対面販売の伝統が色濃く残る業界におけるDX化を進めています。

今回の投稿では、「保険と色」について、2022年3月現時点での所感を、以下の4項目に分けて記載していきます。

  1. 根本問題 〜 概念の視覚化 〜

  2. 根本問題の解決 〜 と、そこから発生してしまう課題 〜

  3. DX化におけるソリューション 〜 色使いにおける解決案 〜

  4. 未来の可能性 〜 オルタナティブな表現は? 〜

① 根本問題 〜 概念の視覚化 〜

保険商品をオンラインでどうやって視覚的に表現するか?

保険商品はブツとしてカタチがない!?

→ 「保障/補償」という概念をサービス化した商材であるため、一般的なECサイトのように、魅力的な商品画像を中心とした訴求方法・レイアウトのデザインは行えない。

実は、ブツとしてないわけではない・・・が!

→ 保険商品が実体化するケースは主に2つ、保険証券と、年末調整ハガキ。保険証券はたいてい、見たことない/覚えていない。おまけに両者とも販促的な視覚訴求を意図してデザインされているものでもない。

販促的視覚素材はある・・・ものの!

→ 商品ロゴ、商品パンフレット、商品の公式広告が存在!

ただし、いづれも利用にあたって制約が強い。パンフはオンライン上掲載不可な会社も存在、頻繁な商品改訂後に速やかな表示止め/差替えの発生、広告塔との契約の関係上広告も自由に転用できない/保険会社との協力(審査)なしでオリジナル制作も難しく、業界の人以外ほぼ誰も知らない商品ロゴの訴求力は限定的…(以下略。とにかく、視覚的な情報が少なく枯渇している商材なのである。

※ 公式キャラは保険会社に紐付いているため、商品自体の訴求というよりは会社ブランドに対する訴求である。

どうする!?

→ 結果、商品ロゴとテキスト以外で、概念をいかに視覚表現化させるかという課題が存在し続ける。販売商品の視覚表現は、訴求・絵解き解説機能以外にも、区切り、興味の持続、目線誘導、ブランドイメージなどさまざまな役割を果たしているため、何かしらの施策が必要となっている。

② 根本問題の解決 〜 と、そこから発生してしまう課題 〜

保険商品をオンラインでどうやって視覚的に表現するか?

色分けして説明だ!

→ 保障/補償という概念を視覚的に説明するため、見出し、テキスト、表、グラフ、カテゴリーなど、比較対象/分類項目の整理において、色分けという手段が用いられてきた(少なくともカラー印刷が普及されて以降)。

対面説明では強力な説明手段

→ 保険業界はその商品の販売経路として、対面販売がほぼ全ての売り上げを占めてきた業界である。そのような伝統も踏まえ、販売時の商品説明を外交員/相談員/FPが商品パンフレットをはじめとした紙資料を指差しで補足説明を行ってきた。全体像を紙面で広く確認することが可能で、拘束された環境下では、概念を色分けして整理した説明がユーザーに伝わりやすかったという背景が存在する。

オンライン表現として…有効?

→ 全体像を把握しやすい紙面とは違い、限られた領域内でのスクロールビュー、非拘束環境下での自主的なリサーチといった特性上、色数が多くなるとユーザーが理解するための処理要素が増えてしまう。また、ボタンやリンク等の機能的なUI箇所は特徴的な色で表現・認識させる必要もあり、さまざまな色がさまざまな箇所で展開されると混乱を引き起こしてしまうためあまり望ましくない。

結果、オンラインでの保険概念の説明のためには、色数に頼らないとならない点があるものの、パンフレット等の保険資料に比べて極力色を減らす努力は必要。編集の妙、テキストの整理、概念を色に頼らずに説明することも重要。

③ DX化におけるソリューション 〜 色使いにおける解決案 〜

保険商品をオンラインでどうやって視覚的に表現するか?

新興インシュアテックでのトレンド!

→ 海外の新興の「オンライン」型インシュアテック系サイトの色使いとしては色数を限定したUXを提供している傾向にある。The ZebraLemonadePolicy Genisusoscarなどの新興Insurtechにおいても、色数を限定させたりプライマリーとセカンダリーのカラーを中心に展開。国内においては、アクサダイレクト生命の配色も比較的その傾向にある。

コのほけん !VI 計画

→ 弊社の自社開発分野のデジタル保険代理店「コのほけん!」のブランディング企画としてのVI設計もその傾向を踏襲し、ウェブUIで必ず使う強調色/注意色の赤リンクカラーの青を盛り込んだ施策を行った。サービス/ブランドカラーとUIカラーを一致させることでサイト全体の色数が限定しやすい環境を整備させている。

面倒臭さのUX

→シンプルに/整理されて見えるといった観点で色数を限定することの重要さは存在する。ただし、それに加え、ウェブサイトと紙面というメディアの違いもまた、ユーザーが理解するにあたって影響が出る。ウェブは便利であるのと同時に楽さも伴う性質がある。固定された紙面は、対面説明等の拘束環境下での説明を踏まえた前提でその真価を発揮してきた。対して、ウェブはいつでも、どこでも、読まずに限定された画面をスクロール(非固定)しながら眺めていることの多いメディアである。楽な環境下において、脳に面倒な情報処理をさせないユーザー体験を提供する手段として、色数の少なさは有効と言える。

④ 未来の可能性 〜 オルタナティブな表現は? 〜

色数をむしろ増やす!というか無くす?

トレンドは揺り戻す?

→ インシュアテックベンチャーの基本施策/既存プレイヤーの改善施策としても、色数を絞る傾向は強くなっている。このUI施策の傾向が保険業界が提供する、理解/把握しやすいUXのスタンダードとなった「その先」はどうなるのだろうか?一定程度の「揺り戻し」が来ることはあるのだろうか?

例)Webデザインのトレンドとしてもたった10年くらいの間でも、

Webリテラシーが低いユーザーでも理解しやすい「スキュモーフィズム」と呼ばれる、UIパーツを現実に存在するオブジェクトに似せた装飾を行うデザイン(券売機で押すような、めっちゃボタン風なボタンなど)

よりシンプルに必要な情報に集中させ、装飾を削いだフラットデザインの追求(ウェブ空間にしか存在しない長方形のベタ塗りのようなボタンなど)

実行可能/不可能なオブジェクトの判別をしやすいよう、シャドウを含めた立体要素の復活(多少のシャドウや、物質的重なりを意識したボタンなど)

ユーザーが実行させたと気づきやすいインタラクションなどの積極的な追加(間違って押したら、ブルって震えたりするようなボタンなど)

と言った感じで、大きなトレンドで言うと、立体 > 完全な平面 > 平面的な立体 (+ インタラクション) といった、程度の差はあれど一定程度の「揺り戻し」も発生している。要因としては、ユーザーのリテラシー、デバイス環境、通信環境、デザイントレンドなど複合的である。

色数を増やす可能性は?

→ シンプルで削ぎ落とした、わかりやすさを追求したデザインを踏まえたうえで、ブランディング、デバイスの表現力、トレンドなどを踏まえた総合的なユーザー体験として、色数の多さの有効性は果たしてあるのだろうか?

多色使いでもコントロールされている/より訴求内容を魅力的に表現できていればそれは有効なのではないか。Webの世界が中心ではないものの、SPREADの2人が行っているカラフルな色のデザイン/ディレクションは魅力的な訴求力がある。

※ 例外として、保険申込や比較・検討ではなく、保険会社において商品ごとにカラーを設定している際の「紹介」としての有効性は現時点でもある印象。

色数を徹底的に削る?

→ CVボタンをブラック、リンクを薄グレーにすると言った「モノトーン」のウェブサイトが近年増えている。ラグジュアリー感、シンプルさ、落ち着いた、丁寧な印象を与えることが出来、コンバージョンへの「推し」の強さを感じさせない。また、色弱等アクセシビリティの観点などでも有効性があるとされている。

ただし、魅力的な商品イメージが存在しない保険商品において、訴求につながるのか?商品の特徴説明において、わかりづらさの問題が発生しないか?ブランド認知施策として特徴が出せるのか?といった懸念点も現時点では存在する。

結論として

色数を絞る努力(保険分野では意識しないと絞るのが難しい)は原則論として継続しつつ、

状況や案件に応じて絞るだけが効果的かは、それぞれのブランディング、時々のトレンド、案件全体のサイトディレクションを含め、色を効果的に多色で展開していく可能性がないか?

絞るどころか無くすに近い状態なども有効か?

など、原則論としての「色数の限定」と、「その先の可能性」を見据えつつ、プロトタイプやテストなどでイロイロと保険の色々を、検証/測定していきたい。


余談ですが、わたし個人が好きな色は「白」となります!






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