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日経デザイン 「デザインシンキング時代のデザイナーの新たな役割とは?」の座談会に出て思ったこと

今月号の日経デザインの鼎談は、元々SONY→NECのイノベーションプロデューサー佐藤さん、YahooのUXデザイナー清水さん、そして、P&G→SONYのデザインリサーチャー佐宗による座談会が行われました。
この座談会はほぼ2時間、ほぼファシリテーション無しに盛り上がったので本誌にはスペースの都合上載っていなかったけど面白かったことを書いてみようと思います。

1.デザインのキャリアにおいてもたこ壷か→越境化が進んできている

NECの佐藤さんは元々工業デザイナーで、現在はNEC研究所でデザインリサーチを元に先行デザインを提案するようなお仕事をしている。清水さんは、元々グラフィックデザインからUXデザインに携わりつつ、グラフィックレコーディングのスキルをTokyo Graphic Recorderという活動で社外でも実戦しています。
お二人が一様に言っていたのが、境界を越えていく大事さ。日本のインハウスデザインの仕事は、工業デザインは工業デザイン、UIはUIという風にカルチャーが固定されていることが多い印象があったけど、デザイナーサイドからも積極的に変わろうとしている動きを感じました。
2.「どの武器を使って」統合するか?というのが共通の問い
全然違う分野の3人が、無意識に共通言語で話していたのは、様々な専門性や部署、背景の違う多様な人の知恵や能力を、束ねて一つの方向に向かわせる「統合」を自分の付加価値として見いだしていること。清水さんはグラフィックレコーディングによって、「議論のビジュアル可視化」をすることでバラバラな意見の空中戦を集約することを実行しているし、佐藤さんや僕は、ユーザーリサーチという「カスタマーの生活や息吹」を共通言語にしたり、その共通理解や擦り合わせを行う「ワークショップ」という体験作りに依って、統合を行おうとしている。
デザイナーが特にこの分野で活躍できるのは、統合が右脳で行われる行為だからだと思います。統合は、分類の反対で、様々な違う物をゆるく、大きく包含する思考が必要で、そのためにビジュアルというのはとても相性が良いです。世の中には「対話」などのビジュアルではない統合の方法もありますが、スピード感ではビジュアルにかなわないと思います。

3.正しいかどうか→好きか嫌いかの世界への体験作り

企業の中で、デザイナーが他と明確に違うのは、珍しく「好きか嫌いか」という主観でモノを言うことが許されているということでしょうか?企業社会は、「客観的に言えるのか?」という問いを常に聞かれる風土の中で生きています。その中で、デザイナーは、エスノグラフィーなどのリサーチや、ブレスト、プロトタイプなど、いずれも、主観的な感情を呼び起こす様々な体験を提供することで、「正しいかどうか」という世界で生きている人に全く違った体験を提供しているのだと思います。それは、大人の世界に生きる日々に、子どもの心を呼び起こすようなものですね。
イノベーションを起こすアイデアは、最初は個人の妄想にも近い主観から生まれることがほとんど。全員が正しいと思うことは、ロジカルにイノベーションでは有りません。そのような意味では、個人個人の心の中に眠るイノベーションの種を孵化させるには、日常に「好きか嫌いか」を問い直したり感じる体験を作る必要が有ると思うし、デザイナーはそれを出来る数少ない人だと思います。

上記のように、改めて企業の中でデザイナーは風土作り、バラバラの統合、共創の演出という意味で、ユニークな付加価値を提供している、と気付いたのですが、個人的な過去の体験として言うと、「正しいか否か」で生きていた自分に取って、「好き嫌い」ってなんだろう?と思ったことがあります。


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