東アジアの早期公開特許推移

 各国とも、特許出願後、1年6か月が経過したときは出願公開をしなければならない、と定められていますが、出願後1年6か月前であっても出願人の請求により、出願の早期公開が可能となっています。出願から公開までに第3者に模倣されることを防ぐために、とも言われていますが、その目的は定かではありません。

 日本の場合、早期公開が出願と同時であれば約5か月程度、出願の方式審査が完了し、出願公開請求手続完了後早ければ2週間程度で公開特許公報が発行される、とされています。
 さらに、日本では2022年5月に成立した経済安全保障推進法により「特許出願の非公開に関する制度」も設けられることとなりました。

 これまでに中国の早期公開状況については機会あるごとに紹介してきましたが(中国早期公開特許の最新動向など)、ここでは、台湾、韓国、日本の早期公開にも目を向けて東アジア4国の状況を概観してみたいと思います。

 2021年の19~24か月および2022年の7か月以降のデータは、2023年11月時点ではまだ公開(登録)データが満足に取得できないため欠落した状態となっています。

 中国においては圧倒的に出願から6か月以内に公開になるものが多いことがわかります。登録特許も出願から6か月以内に登録となるものが少しずつ増えてきました。
 これに対して、韓国や日本では出願から6か月以内に公開になるものはわずかです。韓国や日本で出願から19~24か月公開のものがほとんどとなっているのは、「特許出願後、1年6か月が経過したときに出願公開」というルールが順守されているために1年6か月が経過した19か月目にほとんどが公開されるためです。

 さらに掘り下げ、出願~1年以内の公開状況を見てみたいと思います。ここでは2019年出願~2022年出願について出願から1か月ごとの公開状況を4か国について図5~図8に示しました。

 中国の出願から6か月以内の早期公開もその多くは出願から4か月~5か月に集中していることが図5からわかります。
 台湾の出願から6か月以内公開はほとんどなく、出願から7か月~12か月に集中しています(図6)。
 また、韓国は不思議なことに出願から3か月~6か月の公開がありません。韓国の場合には「公開になる前に登録となった場合には公開公報は発行されない」というルールがあるためにこの部分の公開公報が欠落しているのでしょうか。さらに考察が必要です。

 通常は早期審査請求をしない限り、公開公報が出る前に登録になることはないので「特許のwatchingはまずは公開公報情報で」という常識は韓国の場合には通用せず、公開特許+登録特許を同時にwatchingする必要があります。(検索Tips:韓国における「公開前登録」

 韓国特許情報院データベースKIPRISにおける2020年出願案件(一部)を下表に示しました。黄色でマークした部分が公開公報が発行されない公開前登録情報です。

 また、韓国では出願自体が日本より少ないにも拘わらず、出願から1年以内の登録が日本より多くなっていることから、韓国特許庁が早期審査に力を入れていることが窺えます。

 これまで早期公開特許情報は中国を中心に見てきましたが、中国ほど顕著でなくても台湾、韓国、日本の概要についても把握できました。

2023/11/20
アジア特許情報研究会:伊藤徹男