ASEAN IP DATABASE(商標)

特許情報が各国横断的に検索できるデータベースとしてEsp@cenetやPATENTSCOPEが知られており、無料で検索できます。各国特許庁データベースを個別にアクセスするより便利な面があります。

いずれも特許情報のみで、Esp@cenetでは原則、英語(フランス語)情報のみなので中国語やハングルおよびタイ語など東アジアやASEANの情報の収録は不充分と言わざるを得ません。
その点、PATENTSCOPEには原語情報も収録されていますので英語の誤訳などをカバーする点では優れています。

概して日本にいる知財情報担当者(出願担当も含め)には特許情報が収集できれば充分、と考える方が多いようですが、ASEANなど現地に出向して商売をしている担当者からすると特許情報以上に商標や意匠の粗悪なニセモノで自社商品の信用を落とされていることが少なくありません。

その辺のニセモノ摘発や各国での法改正などによる取締り事情は、JETROバンコクが発行するメルマガ「東南アジア知財ニュース」(ほぼ毎週無料で発行されています)で紹介されています。

ASEANの知財情報が各国横断的に検索できるデータベース(ASEAN IP REGISTRY)では特許の他、商標や意匠もミヤンマーを除く9か国の情報が収録され、検索できるようになっています。
ASEAN IP REGISTRYの商標について検証し始めたところ(詳細はこちら)、いくつかの問題点も見つかっています。
その1つが国別収録数を確認しようと「Applicant Country」を使って各国の内外国出願数を調べたのが以下の表です。

表には出願数上位の 20 か国を示しましたが、数件以上の収録がある 36 か国を集計した総計を100としてその割合も示しました。

ブルネイ(BN)とラオス(LA)を除く各国は、当然のことながら内国からの出願が多数を占めています。しかし、シンガポール(SG)には「Applicant Country」の情報が入っていないようです。ベトナム(VN)にも「Applicant Country」の情報はほとんどないようです。タイ(TH)も全体の収録率86%とふるいません。その他のデータにもこのような欠落があるかどうかは現在検証中です。

特許および意匠データベースについても「Applicant Country」の収録が欠落しているかどうか調べたのが以下です。
左が特許、右が意匠のSG, TH, VNの各国収録です。
やはり、SGは特許も意匠も「Applicant Country」の情報がありません。THはほぼ問題なく収録しているようですが、VNの特許情報は不充分です。

今後は商標の出願人ランキングや商標分類による出願状況などを調べる予定です。

2024年1月10日
アジア特許情報研究会:伊藤徹男