PATENTSCOPE若干の問題点

1.はじめに
 PATENTSCOPEにおけるIPCの欠落、タイIPC表記の異常、中国出願番号異常などの問題点を2019年のJapio yearbookおよびJETRO報告書で指摘させていただき、検索Tipsとしても同様の内容を詳細なデータで紹介しました(PATENTSCOPEのIPC異常およびPATENTSCOPE における中国特許情報の出願番号異常)。
 
 そしてその問題点をWIPO本部にデータを送付して改善をお願いした結果、IPCの欠落、タイIPC表記・検索の異常は5年後の現時点では解消された模様ですが、中国出願番号の異常について再確認したところ、未だ未解決です。
 
IPCの欠落:
 3D printerの主要IPCである「B29C67」は付与されているのに「B33Y」や「B29C64」などが全く付与されていない問題。
 
タイIPC表記・検索の異常:
 「B32B27/00」や「B32B27/10」などは「B32B27//00」や「B32B27//10」と、メイングループのあとの「/」(スラッシュ)が「//」(ダブルスラッシュ)でないと検索できなかった。
 
 そこで改めて注意喚起のつもりでPATENTSCOPEの中国出願番号異常についての現況を紹介します。
 
2.PATENTSCOPEにおける中国出願番号の異常
 2003年10月以降の中国の出願番号の表記は以下の形式となっています。
 
NNNNPnnnnnnn
NNNN;西暦年 4 桁
公報種別P(1;特許、2;実案、3;意匠)
nnnnnnn;7 桁の連番
 
 ところが出願番号CN201510131984で検索されるべきものがPATENTSCOPEではCN102015131984で検索しないと検索できません。つまり、公報種別Pは西暦年の後に特許では「1」となるべきところ、特許では10(実案では20)が先頭にきて「10NNNNnnnnnnn」の形式で表記され、検索もこの形式でないと検索されないのです。
 
 中国の出願番号の一部が以下のような韓国の出願番号形式に倣った表記となっているものです。この誤表記と言えるものが修正されているかどうか確認してみました。
 
 韓国の出願番号形式
10NNNN0nnnnnn 内国出願特許
10NNNN7nnnnnn PCT 出願特許
公報種別:10(特許)、20(実案)、30(意匠)
NNNN:西暦年 4 桁
内外国別:0(内国出願)、7(PCT 出願)
nnnnnn:6 桁の連番
 
3.中国特許出願番号異常の確認
 表1は2019年時点の、表2は現時点での出願番号の出現数です。

 AN(内国) 20101*はCN20101以下の出願年番号2010の内国特許出願番号の出現数(PS2)を示し、AN(PCT)20108*はCN20108以下の出願年番号のPCT出願番号出現数(PS3)を示します。
 
 出願番号年2011年~2019年の表2の出現数も表1の2019年検索時よりも若干増えています(異常表記のPS1、内国出願のPS2およびPCT出願のPS3とも)。
 表2のPS1(異常表記)の件数合計は2024年7月末時点で748,755件にも達します。
 
 最右列のPS1+PS2の値がCNIPRの内国出願(表左から5列目)に近い値となっていますが、わずかにPS1+PS2値(PATENTSCOPE検索値)が少ないです。
 PCT出願のP3とCNIPRの値を比べてもCNIPRよりわずかに小さな値となっています。したがって、異常表記の問題とは別にPATENTSCOPEでは中国特許の収録に若干問題がある、とも言えます。
 
 また、出願番号年検索は出願日検索に近いものがありますが、出願番号年は必ずしも出願年を示すものではありません。年を跨いだ出願番号年もわずかですが存在します。
「PATENTSCOPEの中国出願番号異常」の論点から少し外れますが、「年を跨いだ出願番号年」についても参考情報として紹介しておきます。
 
 出願番号年2010および2020について、その前後の出願年を掛け合わせると以下のようにわずかに存在することが確認できます。
 AN=CN20101* and AD=2009*  4件
 AN=CN20101* and AD=2011*  3件
 AN=CN20201* and AD=2019*  16件
 AN=CN20201* and AD=2021*  1件

2024年8月2日
アジア特許情報研究会:伊藤徹男