Stockwell の血統構成から考えたこと
生まれてすぐ両親は売りに出され、彼自身も生涯で幾度となく低い評価を与えられていたと伝えられている Stockwell。しかし最後には "The Emperor of Stallions" と呼ばれるようになります。Trampoline から牝系を紐解いていたときにも彼の名前が幾つも現れてはクロスされ、代を重ねて遠ざかっても多くの後継馬が血統内にその名を刻んでいました。
Stockwell の血統
五代血統表を眺めてみれば一目瞭然、《Whalebone = Whisker = Web》の同血(同父母)を網羅した4*4×4が特徴的です。
同血 = 父 Waxy 母 Penelope にある主要な組み合わせは以下。
Herod 3×4
Snap 4×5*4
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Herod と Snap は〈Curwen Bay Barb Mare / Fox / Flying Childers〉が共通している相似な関係です。
同血を内包していない1/4 部分、母母 Marpessa については下記。
Whiskey 3×3 - 父父 Eclipse / 母父 Herod
Diomed 4×4 - 父父 Herod
↑ 合わせて《Eleanor ≒ Marmion》の3/4同血2×2
Mercury 4*5 - 父父 Eclipse
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Eclipse 5*5×5*5
Herod 5・5*5×5*5
Herod と Snap の組み合わせはもちろん、Herod と Eclipse のニックスなど多数の名馬を送り出している血なのだというあたりまで辿りましたが、深淵が覗いてきて我に返りました。「父と母が同じだけれど全て違う馬」が四代目に揃っていることに興味を惹かれたのがきっかけです。帰れなくなる前に引き返すことにします。*『血統SQUARE』内の「黎明期の血統(10)」がプロフェッショナルによるこの近辺の記事です。(テキストに書き起こしたくなる画像PDFですが……)
息子と父、それから
さて Stockwell の血統構成をなぞってみようと考えるならば、まずは父の The Baron から手を付けなくてはなりません。初っ端から難題です。「両者ともに種牡馬の後継を残した同血牡馬」を曽祖父に持ち、少なくともそのうち一頭がサイアーラインを二代まで繋いでいる必要があります。
「母父で生き残る」or「そもそも一方が牝馬」であれば可能性は高くなりますが、彼は同血牡馬が父父父と母父父の位置で並んでいるのです。
牝系に関連する種牡馬で考えてみます。
ドリームジャーニー = オルフェーヴル = リヤンドファミユです。
とりあえずオルフェーヴルの後継としてエポカドーロがスタッドインしました。今後また孝行息子が出てくる可能性もあるとして、彼らが種牡馬となる仔を生み出すことが出来なければスタート地点にも立てません。
次にドリームジャーニーかリヤンドファミユにも跡継ぎが必要です。いまのところはヴェルトライゼンデに希望を見い出すしかないでしょうか。
つまりエポカドーロ(もしくは別のオルフェーヴル産駒)の息子が種牡馬となり、ヴェルトライゼンデ(もしくは他のドリームジャーニー産駒かリヤンドファミユ産駒)が種牡馬入りして娘を授かる。その二頭を配合してやっと実現するのです。ただしその先に進むためにはその産駒が将来的に「種牡馬となる牡馬」である必要があります。そこまでしてやっと The Baron です。
苦難を超えて辿り着けば、オルファンやデルニエオールの曾孫が颯爽と登場して Stockwell を生み出してくれるかもしれません。気性が大変なことになる気しかしませんが、彼も折り紙付きの悍馬だったようですから仕方ないと割り切りましょう。ただしこの配合の手前には別のハードルが存在しています。web は母父のラインにいるのです。なので「全姉妹の孫も種牡馬になる」条件が追加されます。心が折れそうです。
さらに突き詰めてみると母母に位置する血統(Stockwell における1/4異系 = Marpessa)との相性こそが最重要になる気がしますが、ここまできてしまうと果てしなさすぎるのでやめておきます。
* ちなみに日本の至宝ディープインパクト。自身と全兄が後継を得ているのでいけるかと思いきや全姉妹が存在しないため、この構成を再現出来ません。
同血なら良しとしない?
よーし、わかりました。やっぱり「種牡馬同士が同血」だの「母父のボトムに同血牝馬」だの細部にこだわるからつらいのです。
厳しすぎる縛りから解放されればもう少し現実味を帯びるはず。しかも直接の牝系を使って考えることができます。
サツカーボーイ = ベルベットサッシュ = ゴールデンサッシュ。
ステイゴールドの息子たちが頑張っていること、サツカーボーイが長期間でたくさんの産駒を残してくれたことが何より有り難い。
サツカーボーイの孫娘にステイゴールド後継馬を迎えた仔については、既にゴールドシップとフェノーメノで試されていて《ゴールデンサッシュ = サツカーボーイ》3×3 が実現しています。現状ではまだ選択肢も多めにありますし、種牡馬になれる産駒さえ出てくれれば(とはいえそれが最難関でもあるわけですが)先へと向かえます。
ホールオブフェーム産駒の[インダクティ / デューイガール / アストレア]三姉妹は現役繁殖牝馬で既に後継となった娘もいます。彼女たちとの配合が実現すれば……《ゴールデンサッシュ = サツカーボーイ = ベルベットサッシュ》4*4×4 !やったー!
ロイヤルサツシユ牝系ならではの
さらに進んで別の可能性を模索します。
Royal Sash の孫には父 Dictus 母父 Northern Taste の[サツカーボーイ = ベルベットサッシュ = ゴールデンサッシュ]と父 Northern Taste 母父 Dictus の[ホットスポット = ホットプレイ = ハウリングサクセス]がいます。
近似中の近似ですからほぼ同血として扱っていいってことにしてしまいましょう。ある意味ではこちらの方が貴重なケースだと思いますし。
ホットスポットのラインは代が進んでしまっているもののホットプレイとハウリングサクセス(ヤマカツカトリーヌ→アイノロマンのみ)の孫娘は現役競走馬として走っている段階です。ステイゴールド産駒との仔が実現すれば《ゴールデンサッシュ ≒ ホットプレイ or ハウリングサクセス》3×3。
サツカーボーイかベルベットサッシュを3代目に持つ馬を配合出来れば綺麗に並びます。もし前項の全兄妹クロス種牡馬が実現したケースを考えると、一世代下の娘で《ゴールデンサッシュ = サツカーボーイ ≒ ホットプレイ or ハウリングサクセス》4*4×4 を実現可能です。
同血網羅の同世代クロスにこだわってみたらこんな有様でぐるぐると。ロイヤルサツシユ牝系まわりは最高に時間泥棒で楽しい。
さいごに
このページは牝系のいちファンである一般人がなんやかんやで脱線し勢いにまかせてざくざくっと書いた文章です。Stockwell の血統構成を実現する(=同血が後継を出し続ける)ことの難しさについての雑感です。
日々実馬と接して体質と気質を把握し、競走や繁殖の傾向と擦り合わせながら血統表を見比べて配合を決定している生産牧場様からすれば、机上ならなんでも言えるからね程度の戯言です。仔を売るならばなおさらです。
しかも妄想部分では Northern Dancer やサンデーサイレンスの濃度を一切考慮していません。諸々察していただけますと幸いです。
追記
現状の Royal Sash クロス配合は下記にメモしていくことにしました。
いちいち調べながら試行錯誤して書いていることが多いです。 新たに気が付くこともあるので加筆修正はわりとすると思います。 どこまで続けられるかは気力と体力と時間次第です。