Trampoline から辿る (Family#1-t)

まずは牝祖 Trampoline の母 web から

web (1808)
父 Waxy
母 Penelope

共にエプソムダービーを勝利するだけでなく、種牡馬としても成功を収めた Whalebone (1807) と Whisker (1812) 。この優秀な牡馬二頭と全く同じ父母を持つ(= 同血)牝馬が web です。英国至高の種牡馬 Stockwell (1849) が《Whalebone = Whisker = Web》の 4*4×4 を内包する事実からも競馬史上における重要な血筋であることが窺えます。

娘 Filagree (1815)(La Troienne などのライン)と Trampoline (1825)  の二系統が拡大を続けて現在まで続き、 Tregonwell's Natural Barb Mare (1657) からはじまる一号族の中でも大きな勢力となりました。

Trampoline 一族の全体像については『世界の名馬列伝集』様の牝系血統図にて 2015年までの流れをご参照いただけます。(Fillagree 系はこちらから 2ページを使う大ボリュームです)

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さらなる源泉、web の祖母で Penelope の母である名牝 Prunella (1788) 。こちらについては『クラスターメアからの競走馬の生産』という古い書籍を再編されているBKC様のページで詳細を読むことが出来ます。

Trampoline から Royal Sash までの系譜

ひとつひとつ進める前に累代を書き出しました。
ファミリーナンバー分岐(1-t)の起点となった1825年生の Trampoline から 1966年生の Royal Sash に至るまで全ての母が英国産馬。最初の100年は父も英国産馬のみという流れ、完全にイギリスの箱入り娘です。

01. 1825 Trampoline by Tramp ⁃ GB
02. 1838 Glencairne by Sultan ⁃ GB
03. 1851 Glengowrie by Touchstone ⁃ GB
04. 1869 Highland Lassie by Stockwell ⁃ GB
05. 1875 Sonsie Queen by Musket ⁃ GB
06. 1891 We Shall Remember by Isonomy ⁃ GB
07. 1901 Trust by John Morgan ⁃ GB
08. 1912 Security by Simon Square ⁃ GB
09. 1921 Dandelion by Rochester ⁃ GB
10. 1926 Weeds by Arion ⁃ GB
11. 1932 Good Deal by Apelle ⁃ ITY
12. 1938 Salecraft by Orpen ⁃ GB
13. 1948 Sylko by Nearco ⁃ ITY
14. 1957 Sash of Honour by Prince Chevalier ⁃ FR
15. 1966 Royal Sash by Princely Gift ⁃ GB

はじまりの Trampoline

英1000ギニー(桜花賞のモデルとなったレース)2着の記録を残している Trampoline (1825) は Sultan と交配され、同血の兄妹を産みます。
種牡馬 Glencoe (1831) と繁殖牝馬 Glencairne (1838) です。

Glencoe

英2000ギニー(皐月賞のモデルとなったレース)馬で、グッドウッドカップとアスコットゴールドカップなど長距離G1も制覇。
種牡馬成績はブルードメアサイアーとしての結果が色濃く、特に初項で触れた Stockwell の母 Pocahontas を送り出したことが最大の成功となりました。Pocahontas は他にも彼の全弟 Rataplan 、さらには King Tom などの産駒がいる偉大な牝馬。King Tom は St. Simon の母父です。

Glencairne

名馬の全妹として生まれた Glencairne は、セントレジャーステークス(菊花賞のモデルとなったレース)馬 Touchstone との娘 Glengowrie (1851) が五頭の後継牝馬を授かったことによって、ファミリーを爆発的に増加させることになります。Touchstone の父父が Whalebone であるため、Glengowrie は《Whalebone = Web3×3という強いクロスを持っていました。

Stockwell × Glengowrie

濃厚な Glengowrie 、次の世代ではさらに凝縮されます。

産駒のうち Highland Lassie (1869) を含む四頭の父が Stockwell なのです。(ただし彼女は父 Caterer(Stockwell 産駒)とされている記述もあります)
兄 Monarch of the Glen (1863) が種牡馬となり、姉 Highland Sister (1864) はフランスに渡って直仔や孫の代でクラシックウィナーを輩出しています。そして Highland Lassie はコロネーションステークスを制覇、娘である Sonsie Queen (1875) からも次々と大レースを勝利する子孫が現れました。

Stockwell とGlengowrie の組み合わせはもちろん凄いことになります。
Glencoe = Glencairne 3×2
Whalebone = Whisker = Web 5・5*5×4*4

WaxyとPenelopeの血がこれでもかと散りばめられた血統表は壮観です。

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Sonsie Queen 以降も Stockwell を含む配合への偏重が続き、孫の We Shall Remember (1891) は3×3 、曾孫 Trust (1901) が4*5×4*4という濃さで彼の血を抱えることになります。

Membrilla

* Trust の半妹である Membrilla(Stockwell 4×4*4)の系統は来日した種牡馬がたくさんいます。 Bon Mot[ボンモー] Dr Devious[ドクターデヴィアス] Pluralisme[プルラリズム] Markofdistinction[マークオブディスティンクション]など。さらにはエリザベス女王杯勝ちのクイーンズリングや仏ダービー馬 Saonois に英2000ギニー馬 Saxon Warrior など近年でも様々な活躍馬が出ています。

他系統の牝馬クロス(3/4同血ニアリークロス付)

半世紀を超えて我に返ったか、ただ行き詰まってしまったのかは不明ながら、そろそろ方向転換を図りたい気持ちが見え隠れしてきました。

Security - Windermere

Trust の娘 Security (1912) は Windermere4×4

Windermere (1870)
父 Macaroni
母 Miss Agnes
彼女の3/4同血となる姪には生涯無敗の英国三冠馬 Ormonde を産んだ Lily Agnes 。母 Miss Agnes は多大な影響力を獲得した名繁殖牝馬です。

血統内にある Windermere の息子たちは其々の父父と父が Doncaster ですから《Kendal ≒ Muncaster》の3/4同血3×3です。
※ 細かく見れば血統表の3/4は Stockwell クロスで埋められており、父系には St. Simon を経由する Pocahontas まで登場しているので、主要血脈の背景に大きな変化があったとまでは言えません。

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Dandelion - St. Marguerite

次世代の Dandelion (1921) では St. Marguerite を4×4で重ねています。

St. Marguerite (1879)
父 Hermit
母 Devotion
牝馬最強世代に生まれ英1000ギニーを勝利、産駒の競走成績も素晴らしい名牝中の名牝。Touchstone の3×3クロスを持っています。

ここでは St. Marguerite とその娘 Sweet Marjorie が産んだ St. Simon 産駒が血統表に仲良く同居しておりまして、つまり父父母と母父の位置にいらっしゃる《Roquebrune ≒ Simon Square》の3/4同血3×2になっています。

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* 牝系を巻き戻してみれば Glengowrie も Touchstone 産駒なので、Dandelion から数えて七代目には彼が勢揃いしています。Touchstone はひとつ前に出てきた Macaroni の伯父にあたるため、母 Banter の牝馬クロスが発生していたりしますがさすがに遠すぎるので割愛。

名種牡馬のクロス

本頁最後となる Weeds (1926) の父は Arion です。その五代父を見れば Stockwell 。まだまだ当然のように登場してくる帝王……を父父に持っている Bend Or の4×5*6を抱えた Weeds は他にもいくつか。

Galopin (1872) 4×6*5
Dandelion でクロスしていた St. Simon の父。Galopin はエプソムダービーを勝つなど優秀な競走馬かつ複数の後継を残した名種牡馬です。

Barcaldine (1878) 5×5
不敗でありながら絶妙に地味な戦績、種牡馬としてきちんと直系を伸ばしたりもしたけれどやはり主役感が薄め。ただし血統表はド派手。
Birdcatcher Mare の牝馬クロス2×3(父 Birdcatcher の 3×5*4)。
もはやおまけに見えますが Touchstone の4×5もついてきます。

Weeds の母 Dandelion はかなりの父母相似型で、五代に絞ってみてもあちらこちらと全体的に塗りつぶされています。
St. Simon 4×3
St. Marguerite 4×4
Springfield 4×5
Bend Or 4×5
そこで娘には希薄系の Arion を持ってきたにもかかわらず、主要種牡馬がないまぜになってしまうのですから、英国産馬のみとの配合継続に限界が来ていたのかもしれません。

というあたりで一旦打ち止めます。
続きは Good Deal からです。あと五代ぶん。


いちいち調べながら試行錯誤して書いていることが多いです。 新たに気が付くこともあるので加筆修正はわりとすると思います。 どこまで続けられるかは気力と体力と時間次第です。