🍊① マルチサンプリングが魅力なサンプラー ▶︎ 1010music nanobox tangerine　通称みかん

2024年8月20日 09:23

2016年にMicrosoftの元技術者であるアーロン・ヒギンズ(Aaron Higgins)さんが設立、アメリカはテキサス州に拠点を置く1010music(テンテン・ミュージック)が2023年11月に発売したコンパクト・ストリーミング・サンプラー

nanobox tangerine(タンジェリン)

を購入したのでご紹介します。

▼1010music　公式サイト

【主な機能】

・ステレオポリフォニック演奏可能なサンプラー
(内蔵メモリ64MBに収まる場合は24ポリ　SDカードからストリーミングの場合は8ポリ)
・ひとつのプリセットに複数ベロシティーのマルチサンプリング可能
・サンプルの開始位置、長さ、ピッチ、レベル、フィルター、ループモード、ADSR、スライスの配置等の編集可能
・小型軽量
・２つのロータリーエンコーダー、４つのボタン、タッチスクリーン装備
・プリセットごとに最大 16 個のシーケンス
・メイン出力をリサンプリング可能
・最大4GBのサンプルのストリーミング可能
・ライブループ機能あり
・動作に遅延なし

詳細は1010music公式サイトを確認してください

【スペック】

・8 つのサンプルパッド(タッチスクリーン)
・電源: USB-C接続 5V、500mA
・3.5mmオーディオ入力と出力(ステレオ対応)
・DACおよびADC解像度: 24ビット
・内部解像度: 32ビット
・サンプルレート: 48kHz
・MIDI入力: 3.5mmタイプA/B自動検知
・MIDI出力: 3.5mm、タイプAまたはタイプBを選択可能（付属のMIDIケーブルはタイプB）
・クロック入力: 1、2、4、8、12、または 24 PPQ から選択可能
・MIDI サポート: プログラム変更、ノートオン/オフ、ベロシティ、モジュレーションホイール、アフタータッチ、共通パラメータへの CC マッピング、プログラム変更、クロック
・重量:110g

1010music公式サイトから引用し翻訳

【なぜ購入したのか？】

購入の最大の理由は、

複数のベロシティレイヤーでマルチサンプリングができ、最大24ボイスでポリフォニック演奏が可能

な点です。（マルチサンプリング時はポリ数異なる→1パッドあたり16音ポリ）
▼参考
https://forum.1010music.com/forum/products/general-topics/learning-materials-general-topics/41647-comparison-sampler-selection-guide

2024年8月現在、5〜6万円台(購入時価格)でこれらの機能を備えたコンパクトなサンプリングマシンは、nanobox tangerine以外に筆者は知りません。

特に

ライブでの使用を主な目的

としており、レコーディングではなく、ライブパフォーマンスに焦点を当てています。

また

ライブルーピング(録音後に即再生)
の機能があることも、購入の大きな理由

のひとつです。ライブパフォーマンスする際に、表現の引き出しが増えるのでワクワクします。

【マルチサンプリングの魅力とは？】

マルチサンプリングとは、

例えばピアノの音を
任意の鍵盤範囲で
一音ずつサンプリングし、
それを一つのプリセットとして
使用できる機能

です。さらに、tangerineでは、ベロシティを最大16段階に分けてサンプリングが可能で、

サンプリングの録音も自動で行ってくれます。

通常のサンプラーでは、ピアノのC3の音をサンプリングし、それを基準にピッチを変えて他の鍵盤に自動で割り当てます。

しかしこの場合、C3以外の鍵盤を弾くと

リアルなピアノの音は得られません。

シンセの音なら問題ない場合もありますが、

ピアノなどの生楽器のサンプリングの場合は、ライブでの使用が実用的ではありません。

【 tangerineを導入することで解決できること】

ライブでアンビエントを演奏する筆者にとって、

柔らかなピアノの音色は必要不可欠

です。

現在、Korg microSAMPLERをマスターキーボードとしてライブで使用しています。この37鍵で同時発音数14音の機種には、NIのソフトウェア音源una cordaの音色をC2〜B4の範囲でインポートしています。

しかし古い機材のためメモリ容量が少なく、

すでにインポートしているシンセなど他の音色を犠牲にせずに、新しいピアノ音色を追加することが難しい状況です。

一方、tangerineには32GBのmicroSDが付属しており、サンプリングするための十分な容量があります。

これにより、ソフトウェア音源からお気に入りのピアノ音色を複数マルチサンプリングし、さらにRhodes(ローズ)やWurlitzer(ウーリッツァー)のエレピ音や他の機材で作った音色も、容量が許す限りインポートすることができます。

これにより、

ライブ用にお気に入りの
音色だけを収録した
音源モジュール

として機能させることができます。

さらに、本体が非常に軽量でコンパクトなため、

ライブごとに
MIDIマスターキーボードを
選べる

というメリットもあります。(ステージに余裕のある場所では49鍵で、コンパクトな場所では37鍵など)

筆者にとってこれは夢のような話

です。

試しに適当に設定してソフトウェアのピアノをマルチサンプリングしたところ、簡単にできました。マルチサンプリングについては後日改めて記事を書く予定です。

ちなみに

ライブでラップトップに
ソフトウェア音源を立ち上げて
演奏すればいい

のではないかと思われる方もいらっしゃるとは思います。

もちろんそれが

一番効率のいい方法に間違いありません。

しかし、筆者は見た目も含めてそのスタイルがあまり好きではないので、ラップトップを使わない方法を模索し解決策のひとつとしてこの機材を取り入れました。

「どういう機材をどのように使うか」もアーティストの表現の一部であり、楽曲と同じくらい大切にし、こだわりたいと考えています。

【 UI 】

ユーザーインターフェイスの画像をいくつか載せますので、よろしければ参考にしてください。(すべての編集・設定画面ではありません)

時計回りに各モード
プリセット選択、サンプル・パッド(これがデフォルト)、ショートカット、ミキサー

時計回りに各モード
編集、ADSR、ディレイエフェクト(別にリバーブもあり)、詳細編集(config)

【良くない点】

まだマルチサンプリングしか使っていませんが、現時点でtangerineのよくないと感じた点を書きます。(あくまで筆者の主観になりますので、ご了承ください)

・筐体が熱くなる
・電源ボタンがない
・本体をUSBケーブルでPCに接続してもドライブとして認識しない
・S/N比がそれほどよくない
・IN/OUT端子がステレオミニジャック
・ヘッドフォン端子がない

・筐体が熱くなる

→思ったより少しの時間使っているだけで筐体が熱くなるので、ライブで長時間の使用に耐えれるのか少し心配です。

・電源ボタンがない

→マニュアルに記載がある通り、USBケーブルから電源を供給した時点で電源ONになります。

・本体をUSBケーブルでPCに接続してもドライブとして認識しない

→これもマニュアルに書いてある通りSDカードを抜いてカードリーダー等でPCに認識させる必要があります。サンプルをカードに移す際に少し不便を感じます。

・S/N比がそれほどよくない

→Digitakt等他のサンプラーと比較して、かつ個人的な主観ですが、音質はものすごく良いというわけではないと感じました。かといって決して悪くはないです。ライブでの使用だと十分だという感じです。

・IN/OUT端子がステレオミニジャック

→筐体をコンパクトにするのと相殺されるので仕方がないですが、標準のフォン端子でL、Rが個別だとさらにうれしかったです。

・ヘッドフォン端子がない

→ヘッドフォン端子がないことでライブルーピングする際、モニター音にだけクリックを返すことができません。

ヘッドフォン端子は価格に上乗せしてでも実装して欲しかったので残念です。

以上、個人的にデメリットに感じる点ですが、

許容範囲内

です。機能やスペック、価格を考えるとメリットの方がはるかに上回ります。

最後に興味のある方に参考になるように開封した画像を載せます。

付属品:

・MIDIケーブル(タイプ B TRS MIDI から MIDI 5 ピン DIN アダプター)
・USB Type-C - USB Type-A 電源コード(約150cmあるので長いです)
・32GB micro SDカード(85個のプリセットと1500 個以上のwavファイル含む)
・クイックスタートガイド(英語)

MIDIケーブルの比較：

上がmodel:cycles付属のもので下がnanobox tangerine。tangerineの方が少し長めです。

お読みいただき、ありがとうございました。

▼マルチサンプリングの手順について書きました。

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