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理想の人物像

今の自分は、『こんな人みたいになりたい』と『こんな奴にはなりたくない』という取捨選択によってできている。

そう何かに書いてあったのを記憶している。

なるほど、そうかも知れないと思わされた。

そして、今回は『こんな人みたいになりたい』のお話。

任天堂の元社長、岩田聡さんの本を読み、『こんな人みたいになりたい』、と僕はつよく思った。

岩田さんはファミコン黎明期からソフト開発に携わり、大乱闘スマッシュブラザーズやMOTHER2の開発にたずさわった天才プログラマーである。さらに15億もの借金を抱えたHAL研究所の社長を引き継いで立て直し、その経営手腕の高さを買われ40代前半の若さで任天堂の社長に抜擢された。

そして、同時にとてつもない人格者でもある。

特に、15億の借金を抱えて傾いたHAL研究所の社長に任命されたら、ふつうは逃げるだろう。だけど、岩田さんはそうしなかった。彼はその時の心境をこう語っている。

――もし逃げたら自分は一生後悔する。

痺れるほどに、最高にカッコいいセリフだ。自身が大切な何かから逃げ出しそうになったとき、エヴァンゲリオンの名台詞「逃げちゃダメだ」とセットにして思い出すよう心に刻み込んでおきたいセリフである。

さらに岩田さんはこう続けている。

――理科系的に期待値を計算してなにが得かと考えたら、十何億もの借金を背負うという選択肢はないんです。ですから、逃げないと決めたのは、美学か倫理かわかりませんけど、そういう類のものです。一緒に汗をかいた仲間がいるのにどうして逃げられるか、というのがいちばん大きい要素でした。

この判断こそが、岩田聡という人物の生き様を表している、と勝手ながら僕は思った。

『人の喜ぶ顔を見るのが楽しい、好き』というポジティブな動機を行動原理として、岩田さんはその能力をフル活用して、みんながハッピーになれるように尽力した。

他人の喜びを自分のエネルギーに変えられる力こそが、岩田聡という人物をつくりあげた才能だ。そこに岩田さんの恐るべき有能さが組み合わさったことで、「みんながハッピーになれる」をただのキレイゴトで終わらせなかった。

そして、この有能さと人格の両方をあわせ持った人ってなかなかいない。大概の場合、イイ人はビジネス的には有能でない傾向にあるし、仕事のできる人間は他人を見下して優越感に浸るという罠に陥りやすい。

だけど、岩田さんはそうではなかった。

岩田さんがなにより大切にしたのは”人とのコミュニケーション”だった。「伝わらないときは相手が悪いんじゃなくて、自分の伝え方に問題がある」というプログラマー経験から導き出した独自の哲学を元にどこまでも社員と真摯に向き合った。

相手の立場に立ち、相手の視点に立ち、相手に伝わるように様々な角度からアプローチを試みる姿勢を崩さなかった。それは任天堂の社長という非常に多忙を極める役割に就任してからも、最優先事項として貫かれた。

――わたしは思うんですけど、考えてもしょうがないことに悩むんですよ、人って。悩んで解決するなら悩めばいいんですけど、悩んでも解決しないし、悩んでも得るものがないものを人間って、考えてしまうんですよね。(本文より抜粋した岩田さんのコメント)

とてつもない有能者でありながら、そうではない側の人間の心理をよくよく理解している岩田さんはまさしく理想の上司像だ。日本が世界に誇る人物だと僕は思う。

僕はこの本に書かれている内容を全人類が理解できたとしたら、世界平和すら実現するんじゃないかと思えた。

仮に世界平和が言い過ぎだとしても、日本人全員が共有すれば日本は間違いなくもっといい方向に進む。家庭内で抱えている問題だって、改善の方向に向かう。すべての仲違いは、相手の視点や立場に立てない・理解できないということから起こってるんだから。

そして、本書の最後に書かれていた言葉は、迷い、戸惑うぼくたちに何よりも勇気を与えてくれる。

――わたしの経験してきたことで、無駄だったと思うことなんてないですよ。

チャレンジしたいこと、人のためになるって思ったことは、恐れずトライしよう。

全人類にこの本を読んでもらいたい。

僕も、岩田聡さんのような人物にほんの少しでも近づけるよう、努力をつづけていきたい。


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