見出し画像

箇条書きやめろ音頭

さあ皆さん お手を拝借
パパンがパン
だ~れが ころした
うら じじょう
(歳がバレるネタ)

リストじゃない箇条書きが嫌い

突然なんですが皆さん伊藤計劃はご存知でしょうか。
日本で最も有名なSF作家のひとりで、恐るべき速筆であったにもかかわらず、上梓した小説はたったの3篇。
単著である『虐殺器官』『ハーモニー』、円塔城との共著である『虐殺器官』のみです。
というのも彼は2007年に『虐殺器官』でデビューしたあと、2009年に『虐殺器官』の序盤30枚を残して病没しているためです。

この時点で「箇条書きとSF小説家になんの関係が?」と思われること請け合いなのですが、あります。

……というのも『ハーモニー』は非常に変わった文体で書かれた小説であり、作中に何度か箇条書きが出てくるのです。
ネタバレを避けるために適当な例をでっちあげますが

〈遠足の持ち物〉
・300円までのおやつ
・バナナ
・お弁当
・水筒
・リュック

『ハーモニー』で使われている箇条書きっぽい例

という具体です。
本当に並列の物体を並べるためのリストとして箇条書きを使用しています。
(逆にこれを逆手に取っている部分もあるのですが、一旦それは置いておいて……)

いっぽうでわたし自身は見出し通り箇条書きがあまり好きではなく、なるべく業務チャットなどでも使いたくないな~と思っています。
ただ、箇条書きもまぁ良し悪しだよな~と宗旨替えしたりしたのでちょっと日記に書いておく次第であります。

箇条書きが嫌いなワケ

箇条書き嫌いをはっきり自覚したワケ

↓の記事を読んでもらえばはっきり書いてありますし、これを読んだのが自覚の理由です。
が、いちおうここには自分が「嫌い!」と思っている理由も明文化しておきますね。

箇条書きはそもそも物事を同じ順位で並列するための記法なので、本当は上下関係のあるものも並列に見えてしまうという罠があるのです。

さっきの例を見てみましょう。

〈遠足の持ち物〉
・300円までのおやつ
・バナナ
・お弁当
・水筒
・リュック

さっき書いた『ハーモニー』で使われている箇条書きっぽい例

これらは箇条書きになっているので一見して「同じ順位」で必要そうに見えますが、実はそうではないのです。
たとえばリュックは入れ物なので必須ですし、リュックが小さい場合には優先して入れるものの順序もあります。
それらの事情は「箇条書き化」を経ると削り取られてしまい、箇条書きした人・箇条書きを読む人のあいだで認識の違いが大きいほど「箇条書き」は「ただの羅列」に成り下がってしまうのですね。
つまり裏事情や行間は死んでしまうわけです。

ちなみに上記の箇条書きリストについて、諸般の事情を踏まえた文章に戻していくなら、おそらく下記のような感じになるはずです。

〈遠足の持ち物〉
リュックを用意し、水筒とお弁当を入れる。
リュックの容量に余裕がある場合は300円までのおやつを入れる。
バナナはおやつに含まれないので別途入れてもいい。
全部入れたリュックを背負って持ってくる。

箇条書きを文章化したもの

「リストの順番にだいぶ悪意があったんじゃない?」
とか
「そもそもリスト書いた時点でそれぐらいわかるよ!」
と言いたい気持ちもあると思います。

が、制作者と別の人がそのリストを見たとき、本当にリストの順番の悪意や書いた時点での事情がわかるものでしょうか?
少なくともわたしは無理です。
あとリスト作ったひとのことが嫌いならリュック背負って荷物手持ちしていくかも。
そういうことをしないひとだけが石を投げなさい。

痛ッ!

とはいえ箇条書きしたほうがいい例だってある

もちろん箇条書きがすべて悪だとはわたしも思っていません。
「優劣や前後関係を排した完全なリスト」である場合は、「優劣や前後関係が排されていること」を示すために積極的に箇条書きにすべきだとも思っています。
でもそれをやろうと思うと基本的には諸般の事情を踏まえた文+箇条書きの併用になるんじゃないかな、というのが正直なところでもあります。

例のリストで書くならこうかな。あくまでわたしの例です。

〈遠足の持ち物〉
リュックに必ず以下のものを入れて持ってきてください。
・お弁当
・水筒

リュックの容量に余裕がある場合は、以下のものを持ってきてもかまいません。
・300円までのおやつ
・バナナ

文書+箇条書きにしたもの

箇条書きとうまくおつきあいしていくために

「その箇条書きは本当に『優劣や前後関係を排した完全なリスト』か?」を常に問い続けて行かない限り、正しい箇条書きとのつきあいは困難をきわめ、人間同士のコミュニケーションは困難をきわめることでしょう。

というわけでわたしのnoteではなるべく箇条書きを使いませんっていう宣言をしようと思って、なんかそのための事情があった気がするんですが、これを書いているあいだに忘れたので忘れました。すが思い出しました。
テスト設計でも「本当にこれとそれは並列でいいのかい?」って考えていかなきゃいけないよねって話を書くための前段として書き始めたんでした。

ちなみに『ハーモニー』の箇条書きリストは純度100%の「優劣や前後関係を排した完全なリスト」です。
ほんと、ほんとなんです。これだけは覚えて帰って。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?