見出し画像

2020年で観た映画のはなし!

2020年の目標のひとつに、なるべく映画館で映画を観るというのがありました。出不精のわたしは観たいと思っていた映画の上映をうっかり逃してしまうことが多かったので、意識して映画館に行くようにしていました。途中は自粛の時期などもありましたが年間28本を劇場で、20本を配信(過去作品)で観たらしいです。
数字にすると少ないような気がするので、2021年は1.5倍は観たいなと思っています。

一番面白かった映画はどれか

私的年間ベストはなんだろう?TENETか?それともパラサイト?
2020年のうちに観た映画を眺めながら、一番面白かった映画ってなんだろうと考えてみました。しかし、何をもってして一番面白いとするのかって難しいなあと思ったので、自分の感情を起点にして考えてみようと思います。

一番心に刺さった映画

まずは一番個人的に刺さったなと思う映画を挙げます。『凱里ブルース』です。

映画の公開自体は2016年らしいのですが、2019年に日本公開となったビー・ガン監督の『ロングデイズ・ジャーニー』が好評を博したことから上映された彼のデビュー作が凱里ブルースでした。
これが、ものすごいのです。

頻繁に登場する円環のモチーフや鏡を多用した演出のセンスがとてつもなく良く、時間や空間の曖昧さや夢心地のような雰囲気を産んでいます。ラスト40分のロングショットでは遊んでいるかのように視点が移動して目まぐるしく迷路のような街を映し出す様に、引き込まれずにはいられません。

粗があるといえばそりゃもう粗だらけなのですが、それゆえにほとばしる感性や徹底した美学に打ちのめされます。頭や心を素通りして魂に届いてしまうような映画で、とめどなく涙が流れました。
内容に感動したとか、悲しいとかではなくて、本当に魂が震えるような映画でした。

実はロングデイズジャーニーは観そびれてしまったので、どこかで必ず観なくては…と思っています。

一番感動して泣いた映画

初めにお断りすると、わたしはものすごく涙もろいので観た映画の半分くらいはどこかで泣いています。
中でも一番長く泣いてしまったのは『娘は戦場で生まれた』です。

Twitterの感想も連投しています。よっぽど感動したんですね。

この映画はジャーナリストを志していた監督が学生時代から撮り溜めていた、彼女の地元であるシリア北部の都市アレッポの様子や自身の家族の動画を編集して制作されたドキュメンタリーです。
瓦礫の街と化したアレッポでぼろぼろになりながら人間が持ち得る自由のために争う住民たちのリアルな姿と、監督の子供や家族の微笑ましい日常が地続きでカットされていて、人間の気高さや愚かしさ、そして生命の強さや脆さに心を奪われて、ハンカチがびしょびしょになるほど号泣してしまいました。

余談ですが、特典としてもらったアレッポの石鹸が良くって今でもお気に入りです。アレッポでは1000年前から続く石鹸工場が多くあったようですが、現在では紛争で破壊されてしまったので職人たちは海外へ逃れて生産を続けているみたいです。

一番新しさを感じた映画

あらゆるコンテンツには古き良きスタイルもあれば、それらを覆す新しいものもあります。そのどちらにも良さがあると思っていますが、2020年で一番新しさを感じて感動したのが『WAVES』でした。

プレイリストから脚本が作られた“プレイリスト・ムービー”という触れ込みのWAVESは、全編を通して登場人物のセリフの余白を埋めるように、流れている楽曲の歌詞が流れ込んできます。そのエッジがあまりにも鋭くて、観る人の心をえぐるんです。

ティーンの兄妹が主人公となる映画で、大人の階段を登る途中にいる、若さゆえの危うさが描かれています。
言葉にすると嘘くさくなってしまうようなことも時にはセリフにする必要に迫られるのが映画ですが、その心情をケンドリック・ラマーやカニエ・ウエストのリリックが代理することで、特に嘘っぽさに敏感なZ世代のリアルさを担保するという手法が印象深いです。

また、ビジュアル面も主人公たちのみずみずしい心情を表した、過度に色味をいじったカラーコレクションがインスタのフィルターのようであり、場合によっては撮影の画角すら異なる撮影素材を繋いで、感情のうねりを描いています。
メインビジュアルにもなっている青とピンクにゆらめくフロリダの美しい海が、そのまま彼らのどっちにでも転がってしまう危うさを表しています。
公式サイトを見るとわかりやすいですが、近年のデザイントレンドでもあるフラットデザインを踏襲したグラデーションやウルトラライトなゴシック体といった要素で構成されているアートワークまでも徹底されていることが素晴らしいと思いました。

一番バカみたいに笑った映画

わたしは頭をカラッポにして観られるバカな映画がウルトラ大好きなのですが、そういう意味でひたすら笑えた映画は『ヘヴィ・トリップ』でした。

北欧のクソ田舎で家業をついだりバイトしてくすぶっているメタルバンドのバカたちがフェス出演を目指してバカ騒ぎしてるっていう最高にバカなB級な映画でした。
1月に観に行ったので、まだそこまでコロナ禍ではなかったこともあって、映画館ではドッカンドッカン笑いが起きていて(マジで)、金曜の夜にビール飲みながら見るB級コメディ最高だな?ってなっていました
(早く映画館で爆笑しながらビール飲みたいものですね)。

ひたすら笑えてキャラがキャッチーでちょっと感動もあるので、VTuberの同時視聴配信にもおすすめです。VTuberさん、いかがですか?

一番怖くてたまらなかった映画

わたしはホラー映画はあまり得意ではないですが、人間の恐怖を煽るのがエンタメの最高峰であるという想いがあります。なので、ホラー映画はいかに怖いと思わせるか?という視点で観るのですが『ミッドサマー』は出会ったことのない恐怖の形でした。

恐怖を構成する要素のひとつには「わからないことへの恐れ」というものがあると思いますが、ミッドサマーは全編を通してわからなさや、つかみどころのなさがあって、それがものすごく怖いなと思いました。
意図して語りすぎないようにしているので、余白がとても多い映画になっています。すると観客は画面の隅ずみまでつぶさに観ることになるので、恐怖をダイレクトに感じてしまうんだなと。
監督は「これはホラーじゃない」と言っていますが、それが一番のホラーなんじゃないかなと個人的には思います。

観終わったあとは、怖かった、やっと終わったと思うのと同時に、こんな風に映画を作ってしまうんだなあ、と監督への畏怖を感じました。
すごい映画でしたね。間違いなく2020年に刻まれる映画だと思います。

一番映画館で観て満足した映画

映画には、自分の趣味を満たすもののほかに「これが映画だ!」的な迫力で圧倒されるものがあると思っています。一番「すごい映画観ちゃったな」と満足して劇場を去ったのは、やはり『TENET』です。

ここでちょっとIMAXの思い出を挟むのですが、わたしはIMAXが大好きで、たぶん『マトリックス レボリューションズ』を品川アイマックスシアター(当時)に観に行ったのが最初のIMAX体験でした。
とにかくスクリーンがデカイ!ということが、これだけ映画を面白くさせるのかと感動するとともに、当時はIMAX上映がまだ流行っていなかったので(当時は東京には品川しか劇場がなかったはず…)、アイマックスシアターでやる映画は積極的に観ていたのですが全然客が入っていませんでした。いつ行っても半分以上客が入っているところを見たことがないまま閉館してしまいました。すごく悲しかったです。

そうして一度は廃れたIMAXは、2010年代に入るとIMAXのデジタル化により息を吹き返してどんどん上映館が増え、現在では気軽にIMAXスクリーンを選べるくらいになりました(少なくとも、東京では)。品川アイマックスシアターも、2016年にT・ジョイPRINCE品川内のIMAXスクリーンとして蘇りました。嬉しくて何度も行きました。
その立役者は絶対にノーラン監督です。彼が狂ったようにIMAXカメラで映画を撮りまくったおかげです。
なので、コロナ禍で人が減った映画館で久々の大作映画をグランドシネマサンシャインのシアター12で観た時。いや、その予約をしようとして劇場サイトに繋がらない時点で、こんなにも多くの人がTENETを、IMAXを求めているんだ!と感極まる想いでした。

そういうわけで、これはTENETというかIMAXへの偏愛みたいな感じですが、間違いなく映画館で観ることで満足した映画でした。
蛇足みたいになりますが、内容も凄かったです。2020年、ひいてはSF映画の歴史に名を刻む映画でした。もともと優れた内容の映画をハード面から高めたのがTENETのすごいところだと思います。

やっぱり映画館はいいところだと思います。大好きです。
2021年もDUNEとか春江水暖とか、シン・エヴァンゲリオンとかが楽しみで仕方がないので、映画館に行けるといいなと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?