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ゴールデンカムイを軽い気持ちで読んだら凄すぎて頭が沸騰しちゃった!

ゴールデンカムイを無料公開だったので読んだ。読み始めてから4日で読み切り、期間中何度も読み返したしアマプラでアニメも完走、気づいたらファンブックを買っていた。ゴールデンカムイは一言で言うと、時代に愛された天才が描いた奇跡の漫画だと思う。
ゴールデンカムイを読んでいる間はあまりの面白さにゴールデンカムイのことだけを考え、尾形はきっと惨たらしく死んじゃうんだろうなと思いながら読み進め、行者にんにくをスーパーで見かけたので買ってペペロンチーノを作った。ペペロンチーノ、美味しかったな。ニリンソウはスーパーに売っていなかったので苗を買ってプランターに移した。尾形は予想通りに死んで、心がちくちく痛んだ。ニリンソウがどんどんしなびていく。早く食べないとだめかもしれないのでジビエを発注した。本当はヒグマを食べたかったけど見つけられなかったので信州ジビエのシカとウサギを頼んだ。

ゴールデンカムイの映画ネタ

ゴールデンカムイの好きポイントを挙げていこうと思う。まずは映画ネタの話。

わたしは映画の小ネタを挟んでくる漫画が大好きです。例えばチェンソーマンとか……。と言ってもチェンソーマンしか思い浮かばなかったな。なにかおすすめありますか?ポンポさんまで行くと、そりゃもう映画じゃんってなるからちょっと違うんだけども。
ゴールデンカムイにおいては、そのチョイスや漫画全体の雰囲気が、わたしが大好きなテレ東の木曜洋画劇場や午後のロードショーを想起させるのでめちゃくちゃ嬉しくなります。あまりにもテレ東への憧れが強くテレ東のアルバイトに応募したこともあります。アルバイトすら書類で落ちましたがね。
これは余談ですが、今は亡き木曜洋画劇場の予告はこんな感じ。とりあえず筋肉賛美で「男なら黙って観ろ!」と問答無用で言ってくるのが大好きでした。

ラストの「お前は男のカーナビ「スタローン」じゃないか」っていう嘘字幕良すぎるよね。
ゴールデンカムイは実写映画化されるそうだが、木曜洋画劇場でやりそうなハリウッドのアクション俳優がいっぱいでるやつがいいなと勝手に思ってる。どうにかなりませんか?細マッチョのイケメン俳優が杉元役をやることを考えただけでチンポが萎えます。わたしは女だからチンポはないんだけどね。

カムイとカオス

ゴールデンカムイは人智を超越した存在としてヒグマ(キムンカムイ)が折々に登場する。カムイはアイヌにとって神と同義であり、自然界における暴力性の発露として無差別に死を与える存在であるとも言える。場合によってはシャチやアムールトラも登場するが、いずれも物語をカオスに導く暴力の化身である。

ゴールデンカムイはアイヌの隠し金塊の謎を追うアシリパと杉元の冒険譚を軸に、いろんな事件や陰謀に巻き込まれながらアイヌの文化を描いている作品という側面が大きな意味を持つ。
そんなゴールデンカムイでカムイたちが敵はもちろん、アシリパたちであっても関係なく立ちはだかっていくさまは、予想や計画を超えていく自然の成り行きそのものでもあると言える。
ストーリーとテーマが合致した演出って美しいなと思います。

最初に谷垣を含む大七師団のメンバーが杉元とアシリパを追ってきたときにヒグマに襲われるシーンが良すぎて一気に引き込まれました。顔面ベロンって剥がされながら戦う隊長さんカッケーってなります。

大国の脅威と、それぞれの目的

物語はもともと前日譚として、極東ロシアや樺太にルーツがあるウイルクとキロランケが極東ロシアから北海道一帯を独立国とするために活動家として働き、それのために金塊を入手するところから始まります。消えゆく少数民族の未来を考え、今のままだと大国に消されていくだけだから独立しなければと考えたのが発端という、近隣諸国で少数民族が消えようとしている現在は非常に共感できるテーマなのが良かったです。
金塊を追う勢力のひとつである土方歳三の一派は金塊を使って蝦夷共和国を作ってロシアと戦うしアイヌとも共存すると言います。そこにアシリパも手を組むしかないと乗っかります。
もうひとつの一派を率いる鶴見中尉はというと、蝦夷共和国は夢物語だと一蹴します。これは、迫り来るロシアという国に対抗するためには北海道が日本ではないと対抗できないからであり、もし蝦夷共和国を作ったとしてもロシアに飲み込まれるだけだという主張で、この危機感は日露戦争を生き残った人物による言葉だったが、2022年の5月という今読んだことで恐ろしいほどのリアリティを帯びてしまった。なんといってもロシアである。ロシアという国がよくわからないままに外国を攻撃している現在、ロシアから日本を守るために成すべきことをしようとする鶴見中尉はあまりにも眩しく映るんですよね。

作者がゴールデンカムイを描き始めたときには、こんな情勢になるとは思っていなかったと思うんですが、こういう「神風が吹いた」みたいなの興奮します。興奮しませんか?

鶴見中尉と4人の部下

正直なところ、ゴールデンカムイの魅力の中でも大きなパイを占めるのが鶴見中尉のキャラクター性なんじゃないだろうか?
ウラジオストクでできた妻子を愛する姿も、奉天会戦以前の品の良いイケオジが自らの理想のために暗躍する姿も良かったが、その後の琺瑯の額当てがついてモンスターライクな姿になり、ラスボスとしての鶴見中尉像が完成したところがとても良い。
どこまでが本気なのかわからないが、琺瑯の額当てがついたあとの鶴見中尉は変態でマッドでかっこいい。
「前頭葉が吹き飛んでおります!」とかさ、もうロマンだよそんなの。

さて、彼は作中の回想シーンで日清戦争を振り返り「強い兵士は愛が作る」という持論にたどり着いている。つまりはごくまれにいる生まれながらの兵士を除き、多くの人は訓練で優秀であってもひとたび戦場に出ると人を殺せなくなってしまうことが多々あるが、愛し合っている兵士や上官への尊敬が強い場合は殺人への畏れや抵抗が薄れて優秀な兵士になるということだ。そして、そんな優秀な兵士を手元に集めるために情報将校でもある鶴見は「自身へ愛を向けるための工作」を行い、勇猛で優秀な狂信的な部下を揃えている。愛で日本を守ろうとしていたわけだ。これは本当のことだと思います。

しかし、話を重ねるにつれ、鶴見が集めた兵士たちが盲目的に敬愛しているわけではないことがわかってくるのが非常におもしろく、引き込まれてしまった。
ここからは、そんな鶴見の部下「宇佐美、尾形、鯉登、月島」について一人ずつ語りたい。それぞれ人間の弱さみたいなのを感じてゴールデンカムイの魅力を爆上がりさせた。端的にいうと、推せる!となった4人だ。すごいぜ。
4人書くと言いながら宇佐美と尾形の分量がおかしいのは許してください。好きなので……。

宇佐美時重上等兵

宇佐美は「鶴見中尉が抱える大勢の駒の中で「篤四郎さんの一番」でありたい」と思っている人物である。その理由は彼が抱えるルサンチマンだ。わたしはルサンチマンで狂う人間像が大好きなので、宇佐美は素晴らしいです。ありがとう野田先生!

彼は自分を取り巻くものに満足したことがない子供だったらしい。おそらく性分だと思う。鶴見が言うところの凡百な羊の群れに紛れた狂犬だったのである。宇佐美が唯一周りよりも優れていたのが柔道であり、田舎のしがない農民の家の自分を陸軍の将校が認めてくれたということが心の拠り所となるも、それ以外の全てを凌駕した同級生が「(宇佐美が行けない)東京へ行き、宇佐美よりも強くなる」と言ったことで逆上し殺してしまったことが、鶴見の持論を助長してしまった。

宇佐美はただひとり鶴見のやり方に納得していた人物であり、目的はどうあれ全てを自身の駒として扱う鶴見を受け入れ、なおかつ「篤四郎さんの一番」でありたいと考えていた。そんな宇佐美の心の拠り所を汚したのが尾形の「農民出身の一番安い駒」発言であり、そんな宇佐美を殺したのも尾形。
そして初めての殺人を「童貞喪失」と捉え、その地を「聖地」とした宇佐美がその出来事で罪をなすりつけた「馬」に乗っている時に狙撃され崩れ落ち、鶴見に抱かれながら死ぬ。その最期は聖母マリアが死んだキリストを抱くモチーフであるピエタを引用しているという構造的な美しさ。

この完成された上等兵、なんなんですか?キレそう。

宇佐美は一見すると頭のおかしいサイコパスに見えるが、実のところ尾形の劣情を見抜いていたり、月島が鶴見について気づいていないことがあると言っていたりと、人間の感情の機微においてかなり鋭さがある。
愛情を注がれて育ったからこそ人間を理解できるわけである。それなのに躊躇なく人を殺せるところが、鶴見が見込んだ本物の兵士だったわけで……。

尾形百之助上等兵

宇佐美のスイートスポットを的確に射抜いて殺した尾形は、宇佐美とは真逆で「大勢のうちの一番になりたい」ではなく「自分だけを見て」と思っている人物である。家族に愛されて育った宇佐美と異なり、家族に見向きもされなかったことが彼をそうさせたのかもしれない。
愛されなかった自分とは異なり、父からの寵愛を受けてすくすくと育っていた腹違いの弟の勇作殿を見て、自分を納得させるために「愛のない両親から生まれた子は何かが欠けていて、欠けているから人を殺しても罪悪感がない」と自分を言い聞かせているが罪悪感に苛まれ続けた悲しい男。たまりませんね。

尾形は宇佐美と違ってしっかりサイコパスなので、人間を理解できないから母も弟も殺してしまいます。ですが、しっかり罪悪感は感じてしまう弱さがあるので一生自分を責め続けます。かわいそうな百之助。
実の父も鶴見中尉の策略に乗って手にかけようとします。宇佐美はこの時「どうして父を殺した?」と聞くのですが「最後に話したかったから」と答えます。最後に話したいから殺してしまう息子がどこにおるんや?
でもこれは多分本心で、「本妻との間にできた勇作が死んだことで、妾の子である自分だけを息子として愛してくれるの?」ということを知りたかったし、愛してるよと言われたかったから、鶴見中尉の言葉に乗って花沢閣下殺し加担したのだと思います。結果、気位が高い閣下は「呪われろ」と吐き捨てます。
ですけどもね、陸軍中将ともあろう人物が、尾形がどんな言葉を欲していたのかが分からないことはないと思うんですよ。しかし、その真意がわかるからこそ、ほんの少しでも愛おしく想う気持ちがあったとしても、息子の感情よりも自身が大切だから言えない。
呪われろと言われた尾形は笑みを浮かべるわけですが、あれは「やっぱり俺は祝福されない欠けた人間なんだ」と安堵したと、自分を暗示にかけているのだと思います。
そうして、言ってほしいことを言わない父を捨て、言われたいことをしっかり言葉にしてくれる鶴見についていくわけですが、内心では「たらしめが」と毒づきます。
鶴見中尉が自分以外にも良いことを言って回っているのを知っているし、自分だけを見てほしい尾形はこれをよく思わないんですね。

ところでわたしはエヴァンゲリオンでアスカが「あんたがあたしのものにならないなら、あたし何もいらない」と言うシーンがありとてもとても好きなのですが、「俺を愛さないなら死んじゃえ」って14歳のアスカちゃんと同じようなことをやっているわけですよ。たまりませんね。

最初から最後まで他人を見ようとせず、インナースペースにしか目を向けなかった尾形が自殺という形で事切れるのなんなんですか?美しい死に様見せやがってよ。

鯉登音之進少尉

鯉登は初登場時からエンジン全開で鶴見ガチ勢を貫いていたが、物語が進むと徐々に鶴見に対して疑念を抱いていきながらも、尉官らしい毅然とした真っ直ぐさで駆け抜けて行った。眩しい男だよ。

鯉登は父が海軍少将というバリバリのエリート一家だが、そんな彼を配下に入れるために鶴見が昔から工作を仕掛けていることが描かれている。鯉登には優秀な兄がいたが戦死していることが語られており、優秀だった兄に対する引け目があることが見て取れる。さらに、父の鯉登閣下は一度はロシアと日本が戦争になる引き金を引くくらいなら息子は諦めると言い、鯉登自身もそれを受け入れる。
しかし、いざとなればボロボロになりながら「音之進!!」と駆けつけるスーパーダディということがわかり、この父の元で鯉登が真っ直ぐに生きたことも想像に易しい。
という一連の事件が鶴見による画策であり、尾形が一番父親に求めていたことが目の前で起きたわけですが、そりゃその場に居合わせた尾形が「バルチョーナク」と吐き捨ててしまうだろうね。

樺太編、ニブフの村でコケモモなどから作る食べ物「モス」と出会って「父上を思い出す」と、嬉しそうにモスモス言っている鯉登を見ると、これが祝福された男の姿なんだと感動します。父上を思い出して嬉しそうにする人、絶対に幸せになってほしい。

尾形はだから、目の前に正解があったわけですよ。それを、実の父から愛されなかったという事実に囚われて周りを全然見なかったことが鯉登の成長で露呈するという構図がえぐいですよね。

どうなんだ百之助!?

月島基軍曹

月島は一番揺らいだ人物ですね。もう戻る場所などないことを理解しているし、一番大切な存在を失っているから自分のことなんてどうでもよくなっちゃってる。どうでもよくなっちゃってるから、鶴見中尉の手足になることにして自分では考えないようにすることで、それでようやく生きられてるみたいなところがあった。
ある種、鶴見に対する畏怖のようなものを感じており、登場時の鯉登のように鶴見中尉全肯定Botというわけではないものの概ね鶴見の野望には付き従うことを自らに課していたが、鯉登の精神的成長により鶴見への執着から“上がれた”人物だ。

月島は想い人のいご草ちゃんの髪の毛が文字通り彼にとっての「後ろ髪」となっていたが、鶴見の理想を実現する駒となるため自ら後ろ髪を断つために海に投げ捨てる。悲しいよね。
しかし、鶴見にも亡くした妻と子供がおり、鶴見自身はその小指の骨を後生大事にしていることを知るとキレます。そりゃそうです。大好きなシーンです。
自分は鶴見の掲げる大きな野望を信じて全てを捨てたのに、実はそれが私怨でしかなく、自身は何ひとつ捨てていないとしたらキレて当然です。

いご草ちゃんのことをインカラマッに聞こうとして顔を歪ませるシーンが悲痛で大好きです。
どんなに捨てた過去であっても、断ち切った縁であっても、忘れることなんてできなかったんだろうなと考えると、月島という男のロマンスが垣間見えるようでドキドキしますね。

完全に余談ですが、わたしが夫と出会ったのは佐渡だったので、月島の過去編はめちゃくちゃ良〜〜ッ!ってなりました。
佐渡はいいぞ!佐渡でツルツルのイカそうめんを食べよう!!

書きながら思いましたが、わたしは上等兵が好きすぎますね。

メシテロ漫画

ゴールデンカムイを読み始めてすぐの頃、とにかくアシリパさんがニリンソウと行者にんにくを鍋にいれているのを見て「食いてえ」となった。なるよね。グルメ漫画としても一級品なくらい面白いのに、その他もろもろの要素が絡んでくるからこの漫画はほんとどうかしてる。

ゴールデンカムイを読み始めて2日くらいの5月1周目の週末、いつも通りにスーパーに行ったら行者にんにくが売っていたので即買い。どんな味なんだろうと思ったけど、にんにくならペペロンチーノだろうと雰囲気でペペロンチーノを作った。次の週からいままで行者にんにくを見ていないので、あれがラストチャンスだったっぽい。神様ありがとう!

行者にんにくのペペロンチーノ

ニリンソウはスーパーには売っていないようなので、ネットで買えるかなと思って検索したところ苗だけは見つかったので苗を買って、プランターに移した。ちゃんと根付いたら半分くらい収穫して食べようと思ったのだが、何かがよくなくて半分くらい枯れてきたので、あわててジビエを買った。
ニリンソウは結局、ゆがいてから水気をとり、タイムの要領でオイルに香りを移しながら熱して、塩を振ってローストしたジビエと合わせました。急いでいたからワインを忘れてしまったので、コンビニで売っていたシラーを慌てて買ってヒンナヒンナしました。

左がシカ、右がウサギ。草っぽいのがニリンソウ(真ん中は全然関係ないもやし)

マタギ料理とかアイヌ料理とか、作中出てきそうなやつを食べにいきたいなあ〜となっていたら新大久保にアイヌ料理屋さんがあることを知って食べに行きました。店内全員ゴールデンカムイのオタクでとても良かったです。

野田先生のサイン
ルイぺとかいろいろ

ちなみにオハウは到着した時点で売り切れだった。やっぱゴールデンカムイのオタクならオハウ食べたいよな。わかるよ。

まあだいたい、こんなかんじでいろんな好きポイントと出会い、読み進めるたびに深みが増していき、先日ゴールデンカムイ展鶴見中尉ナイトにも参加してきました。
友達があんまりしつこく「無料期間だから読んで」と言うのに根負けして読んで、まさかここまでハマるとは思わなかったけれど、現在進行形で楽しんでいます。

ありがとう、ゴールデンカムイ。ありがとう野田先生!

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