参天台五台山記読記044
大慈寺の巽方(東南側)には石象道場がある。そこは、智者大師が象に乗られた普賢菩薩を感得し、菩薩に頭を撫でられた場所とされている。昔からの伝えでは、普賢菩薩の白象が大石に化身したといわれており、その様子が本物の象と変わらないことから、この場所は「石象道場」と呼ばれるようになったとされる。
石象の南側に石窟があり、石窟の西にある盤石を叩いてみたら、鼓のような響きが出た。智者大師が説法する際、この盤石を叩けばみんながそこに集まったと伝えられている。石象の東側には、屏風のような石が二つあり、向い合っている。間には、大きな石簣(石ばこ)があり、その高さは約8尺だった。昔の賢人たちが大事な書籍を天下から集めて、この石ばこに納めていたと言われている。この石ばこは、智者大師以外には誰も開けて中を確認したことがないと。
その後、大慈寺の北へ約二十五里進むと、麓には捫蘿亭というあずまやがある。(この名称は、かずらをよじ登るという意味からきている)。この亭は、浙東観察使・御史中丞の孟簡によって建てられたものであり、孟中丞亭子とも呼ばれたらしい。
そこから約三十五里進むと、天台山の最高峰の場所に到着した。その峰は、「花頂」と呼ばれ、智者大師が安居されていた頃、天魔を降伏し、神僧を感得したという伝説の地とされている。今でも、そこには手を招くような石があり、定光禅師の旧跡が変わることなく残されている。苦竹の森は暗く、茶樹の林も繁っている。森のそばには、「倒景亭」というあずまやがある。(おそらく、夕陽の景色を楽しめる素晴らしい場所だったと思われる。)目の前に、清冽な湧水が流れており、人々がそこで一休みをしていた。
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