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参天台五台山記読記019

十九日(戊辰)
雨下。宿坊壁上,懸阿佛真言,以聖秀令取,書取了。現轉女身因縁為渡日本也。陳一郎來向,五度渡日本人也。善知日本語。申云:「以陳詠為通事,可參天台者。」乍悅約束了。家主張三買送予料笠,直五百五十文,頼縁供奉笠直三百文者。七時行法了。

ノート:
雨が降った。宿坊の壁には、阿仏の御真言が掛けてあるので、聖秀に写してもらった。この聖秀は、小師付けで呼ばれており、具足戒を受けて10年経たない僧侶だったらしい。女身を転じる因縁を現したため、阿仏の御真言を日本に将来したいと思い、成尋が若僧の聖秀に謄写を命じただろう。

阿閦如来(『図像抄』)


仏は東方の阿比羅提国で現在説法している仏さまで、密教では金剛界の五仏の一人とされ、大円鏡智を表す。無瞋恚、不動如来などとも呼ばれる。阿仏とその妙喜浄土は阿弥陀仏や極楽浄土ほど知られていないが、維摩詰居士がこの仏さまの東方仏土から越したとされている。また、光明皇后が法華滅罪之寺の浴室で千人の垢を落とす願をたてて奉仕していると、千人目に疱瘡のひどい病人が現れ、「お前、我が身の膿を吸い尽くせ」という無理な要求をされた。光明皇后はその要求に応じたのは感心するもんだ。すると、その癩人はなんと放光し、阿如来の姿をみんなに見せたという。

国芳(British Museum)


仏の御真言は何通りもあるようで、「オン・アキシュビヤ・ウン」は短い方だ。もう一種は、三蔵法師玄奘さまが訳した短い経典『拔濟苦難陀羅尼經』のなかに見られる。不動如来陀羅尼というが、不動如来は即ち阿仏のことだ。その真言は「羯羯尼羯羯尼 魯折尼魯折尼 咄盧磔尼咄盧磔尼 怛邏薩尼怛羅薩尼 般剌底喝那般剌底喝那 薩縛羯莫般藍般邏般謎 莎訶」となる。極悪の人でもその陀羅尼を念誦すれば、世寿が終わった時に、きっと不動如来の仏土に往生できると釈迦如来がこの経典で説かれた。
仏教の世界では、男女平等が理想のあり方として謳われたが、現実世界では、男尊女卑の現象は本場のインドでも、中国や日本でも広く見られた。このような現実があったため、昔から転女身を説く経典が広く信仰されてきた。さて、阿仏と転女身はどのような関わりがあるのだろうか。
三蔵法師玄奘さまが訳した『大般若波羅蜜多経』の中には、伽天(ガンジス川を神格化した女神)が大願を発して、釈迦如来に花などの供養をしたところ、釈迦如来はにっこり微笑まれた。この女性は今世が最後の女身であり、来世からは不動如来の国土に転生して、代々金花菩薩として修行を重ね、最終的に成仏して星喻劫の金花如来になるだろうと釈迦如来が仰った。
また、三蔵法師菩提流志さまが訳した『大宝積経』には、阿仏の妙喜浄土における女性の恵まれた環境が説明されている。まず、女性にとって大事なおしゃれな服装や飾り物が自動的に木から現れ、不自由なく着用することができる。また、娑婆世界では女性が嫉妬深く、悪口を言い合うイメージがあるが、妙喜浄土ではそのような過失は絶対にない。さらに、妊娠してから子供を産むまで、血の汚れや痛みなどは全くない。このように女性にとって好都合すぎる経典に見えるが、なぜ中国や日本で広まらないのか、逆に不思議でならない。

ガンジス川の女神


陳一郎さんが訪れた。日本に5回渡航していて、日本語がペラペラだった。この方は、陳詠を通訳として採用すれば天台へ案内してもらえると教えてくれた。(福建地方の陳さんが多い!)みんなが喜んでその意見を聞き入れた。
大家さんに依頼して、笠を購入してもらった。私の笠は550文で、頼縁供奉の笠は300文だった。
勤行は七時に修了した。

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