『クイーンメーカー』レビュー

Netflixドラマ『クイーンメーカー』の感想です。


『極限まで音圧を高めた曲』みたいな感じでした。
とある歌手さんが以前、最近の曲は音圧を不自然なほど高めて編曲しないと売れないんだとラジオで話していたのを聞いたことがあります。
音圧を高めた曲、というのは、たとえばスタジオでそのまま楽器や歌などを録音したそのまま、ではなく、デジタル機器による編集でその音の”すきま”というか”余白”というか、そういうものを埋めちゃったもの、とでも表現したら良いでしょうか。
昔のレコードの音みたいな、自然な余白のある音じゃなくて、こう、みっちみちに音が詰まってる感じがするんですよね。

このドラマはそんな印象を受けました。わざとらしいBGMに大袈裟な(若干古臭く感じる)演技、細かいセリフまわしよりもストーリー全体の”型”の面白さで物語をまわしていく感じが、いやーなんとも、視聴者にわかりやすくしている、というか、どちらかというと
「こう理解しなさい」
と暴力的に強いられているような感じ。
俳優さんたちはそういう要求に素晴らしい演技できちんとこたえていらっしゃるので、いわゆる”下手な演技”みたいなものは全然なく、そういう意味では大変安心して見ることができるんですけれども(うおーよくこんなくさい芝居をこんな自然にこなせるなーって感心したりした)、私は苦手なタイプのドラマでした。なんか、「ここに落ちてくるのかな」と思ったところに落ちてくるとかみたいな、思った通りにことが運ぶ感じも苦手だったし、残酷なシーンをわりと直接映像で見せるのも苦手だった。大財閥の気難しい女主人という存在も、『恋愛ワードを入力してください』のイェ・スジョンさんの演技の方が好きだったし。

私が唯一この人の演技好きだな、と思ったのは、準主役と言ったらいいのかな、人権弁護士オ・ギョンスクを演じたムン・ソリさん。匙加減が絶妙だった。

とにかく私は、わざとらしいBGMが苦手です。ドラマでもドキュメンタリーでもニュースでもなんでも。押し付けがましいの嫌です。というか音に関しては本当に押し付けがましいの嫌いです。ピアノとかクリスタルボウルとかギターとかドラムとか、楽器ってなんでもそうだと思いますが、演奏する人の内面が全部音に現れるじゃないですか。ああいうのも、押し付けがましい音が苦手です。
「うっせばーか!!私は自由に感じたいんじゃ!!どう感じるかは私の勝手じゃ!!」
って反発したくなる。

とかいいつつ結局、最後まで見ちゃったんですけどね、このドラマ。うん。現代のストーリーを時代劇のような演技で見せてくれたような感じだから、50代以上から高齢者をターゲットにしたドラマだったのかな。TBSの日曜夜9時台のドラマっぽかった。

しかしNetflixの視聴者層で一番多いのが40代〜50代女性だから、この年代の女性を主役にしたストーリーが増えてきてるのかな。特に30代後半〜40代バリキャリ女性と20代後半〜30代イケメンハイスペック金持ち頭いい男性の恋愛を描いたドラマが増えてきたのが気になるんですが。そういうファンタジーが今、多く求められてるのかしら。(あ、ちなみに『クイーンメーカー』にはそういうの出てきません。)どうなんでしょうね。


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