M-1グランプリ2021 感想 ツッコミ｢伊藤｣の魅力 笹見

面白かったものだから。

FIRST ROUND

1.モグライダー｢さそり座の女｣
呼ばれた時の控え室、空気暖かくて良いですね。
2人とも思ってたより歳いっててびっくりしました。ともしげさん39歳...！？
さそり座の女が｢いいえ｣から始まるって点を考察した結果出た｢美川憲一は気の毒｣だという主張を開口一番に言い出したのが面白かったです。しかも｢気の毒ですよね。｣って何も考察を聞いてないこちら側に対して、いきなり賛同を得ようと話してきてますからね。
さそり座の女が正解ってのを分かっているのに分かってない体で間違い続けるともしげさんの役回りが不思議なネタですね。自分が提案した事だし、自分のさじ加減で正解を導き出せるが、それだと意味無いので敢えて苦戦する。でも最終的には成功して、拍手が起こるって光景が、トム・ブラウンを連想させました。
面白かったのですが、もっと何時も通りアワアワするともしげさんも観たかったですね。決勝だからか律儀に間違えてる感じがして。
一番好きな所は、何も言わず初手で祈り出しだ部分です。

2.ランジャタイ｢風猫｣
こんな芸風なのに過去大会の成績が普通に良いランジャタイ。
今回のネタは｢猫が体内に入って国崎さんの身体をイジる｣というかなりキャッチーなテーマでしたね。かつて敗者復活戦でポンポンヨガをやった時の無風っぷりはそこには無く、会場もウケてるなと感じました。
ただランジャタイ特有のしつこいノリがなんか空気に合ってないというか、若しくは4分ネタに合わないのかな？ジャクソンの動きを繰り返す下りがそんなに強く感じませんでした。
国崎さんにばかり目が行きがちですが、伊藤さんのツッコミもかなり独特です。
強風で顔に飛んできた猫に対するツッコミが｢新種？｣です。
伊藤さんの魅力は、どんな不条理な展開だろうとも、気まぐれで話の展開が変わろうとも、会話を試みたのに一切聞き耳を立ててくれなくても、決してネタ中に笑ったり、否定したりせず、国崎さんの世界観に入り込みながら真摯に対応するという姿勢だと思います。だから伊藤さんのツッコミって国崎さん自体にではなく、国崎さんの話す世界にツッコんでいる事が多いんですよね。このツッコミが、さらに漫才を不思議にさせているんですね〜。
最後のダブル将棋ロボに対する伊藤さんのツッコミ、｢あ〜｣でしたよ。

漫才師の中で最も好きなコンビなんですけど、正直本当に好きな芸人が売れるのって嬉しくないんです。だって、売れたらネタやる機会減るし、ライブのチケットも取りづらくなるし、知らない人からつまらないだの、ファンがキツいだの言われるようになるだけだし。別にバラエティでの活躍もそんな求めてないし。完璧に自分勝手な理由ですけど、他人の幸せを心から願える人間じゃないんですよね。勿論辞めるくらいなら売れて欲しいですけど、去年の敗者復活戦以来急に売れ出したランジャタイを観て凄く複雑な気持ちになっていました。
でも今回の決勝でランジャタイを観てそれが凄く楽しくて、ここまで来れたのはこの1年で知名度を上げ広く受け入れられる様になった事が大きいと思うので、やっぱり売れて良かったのかも、と思えるようになりました。
というか自分もランジャタイを知ったのは、2017年の敗者復活戦なので、なんか古参ぶって物言ったけど、全然結果出してからハマってるんですよね。
だからもうめちゃくちゃって事ですね。

一番好きな所は猫が耳から入り出し、国崎さんが異常を察知し｢ニャンちゃん...！？｣って猫に抗うシーンです。

3.ゆにばーす｢男女の友情｣
去年の準決勝、敗者復活戦でも似たタイプのネタをしていて、その時は全然ハマらなかったのですが、今回は面白かったです。
ツカミも面白かったです。去年のツカミではJYパーク？誰？って状態になってしまったので。(今は認知してます)
川瀬名人、点数出てから全然元気無いですね...。
普段の川瀬名人の荒々しい雰囲気が好きなので、そういう人間性の出るネタも観てみたいですね。
一番好きな所はシバいたろか！からの触ってないですよ！って誤解を解く下りです。

4.敗者復活 ハライチ｢否定｣
敗者復活戦はマユリカ、金属バット、カベポスターに投票しました。毎年投票した所が通過しないので、この発表の時間が一番しんどいです。
金属バットの友保さんが最後に意味も無くへそ出してポンって叩いたのが一番笑った気がします。
去年もカベポスターに入れましたが、2年連続ケツから2番。世の中が間違っているのです。
ハライチのネタはこれまで決勝や敗者復活戦でやって来たネタをMIXさせた、みたいなネタでしたね。過去のネタは見返したりなどして記憶に残ってる分、他より｢なにこれ面白れー｣とはなりませんでした。

ハライチの決勝のネタは準決勝でやったネタと変えてるみたいですが、一度この決勝メンバーにそのネタで負けてるから変えたんですかね。去年のインディアンスも一昨年の和牛も準決勝のネタはやってませんでしたし。
最初の岩井さんの怒りでそこまでハマらなかったので、その後も特に乗れずに終わってしまいました。
なんだかんだ澤部さんがワーワー振り回されるネタが好きですね。過去４度のM-1も、ハライチの一番メジャーなスタイルで披露した、最初の2回が特に笑った覚えがありますし。
一番好きな所は、澤部さんが岩井さんに対し、｢泣いてるのか...？｣と怪訝そうに問いかけるところです。

5.真空ジェシカ｢一日市長｣
ライブとかでもよく見かける芸人が結構決勝に残っていた分、もっと面白いネタもあるんだけどな〜と感じるコンビもいる中、真空ジェシカは今までの集大成みたいなネタで最高でした。
最後の酸性雨とか、もはや一日市長全然関係ない突拍子無いボケで終わらせてるのも、ふざけてるみたいで面白いですね。
ガクさんのツッコミは僕の好みに凄く刺さります。ダイアン津田さんや三四郎小宮さんみたいな慌てながらツッコむ人が好きなんですよね。
｢ミッキーは1人じゃないですか｣に対して｢そうですよね｣で訂正せず返して、夢壊さない様にしてるのも面白いです。
ヘルプミーのハンドサインが一番面白かったです。

6.オズワルド｢友達｣
毎回評判程はハマっていなくて。その理由に最近気付いたのですが、伊藤さんのツッコミが仰々しいというか、堂々とし過ぎる様に感じてそれが理由なのかなと思いました。個人的には畠中さんくらい自然な喋り方の方が僕としては好みです。
オズワルドの様に静かな漫才師にカベポスターが居ますが、こちらは2人とも普通の会話みたいな喋り方で好きですね。
で、ここまで言っといてなんですが、今回のネタは特に終盤以外伊藤さんのツッコミも自然に感じて、今までよりずっと楽しめました。
友達はあげられないと言う伊藤さんの言葉にえ？え？って童謡し出す畠中さんの横で不安そうになる伊藤さんの表情とかも面白かったです。
畠中さんも、過去2回の決勝ではもっと目的の分からない、無機質なサイコパスってイメージでしたが、今回のネタは狂人なりに血の流れた人間味を感じました。伊藤さんから友達を1人奪う、という目標に対する情熱が、今まで以上に強く感じられたからですかね。
一番好きな所は、｢だとしたら爪長すぎるだろ｣の部分です。

講評で、オール巨人師匠｢松本くんの意見も僕の意見も両方取り入れたと思うんだけど...｣とありました。確か去年松本さんと最初から大声で、ずっと静かな声で、っていう意見で割れてたと思うのですが、松本さんの意見はまだしも巨人師匠の｢最初から大声で...｣という意見はどの辺に取り入れているのでしょうか？また去年、巨人師匠が続けて仰っていた｢もっと内容を分かりやすく｣という意見も、2本目を観るに取り入れている様には感じませんが、実際どうなのでしょうか？オズワルドの声が聞きたいです。
そういえば巨人師匠は｢総理大臣みたいに聞く耳を持っている｣ともオズワルドに仰っていました。お言葉を取り入れている様に感じなかったオズワルドのネタを見ると、もしかしてこれは｢総理大臣は国民の聞く耳を持たない｣と暗に視聴者に伝えるメッセージだったのでしょうか。

7.ロングコートダディ｢転生｣
キングオブコント決勝のネタがとても面白く、去年のM-1準決勝、敗者復活戦のネタも面白かったので、結構期待していたコンビでした。ですが、今年のネタは去年やっていた｢そうですか〜｣程はハマりませんでした。
1人目の案内役だけ兎さんに協力的なのは面白かったですが、2人目の｢お前は...肉うどん。｣のところは溜めずに｢お前は肉うどん。｣ってスッて言って欲しいなと思いました。 3人目の、細かい設定決める下りから来世で死ぬまでの区間は全体的にあまりハマりませんでした。
ワゴンRは候補が10個くらいあったみたいですが、個人的には候補にあったという｢若女将｣の方が好きですね。
ラコステからワニを連想して突撃するシーン、普通にラコステよく知らなかったのですが、突然動き出した兎さんを見て｢？...アハハ！｣って分かってないのに笑ってしまいました。
地味に鉄アレイになってる人いるの面白いですね。
一番好きな所は、2文字タイムが始まった所です。

8.錦鯉｢合コン｣
前半もしかして最下位になるんじゃないかと観てて、1発ギャグとかも思いのほか長くてヒヤヒヤしてました。
ビール来てから流れ変わりましたね。本当に酒の力が入ったかのようにボケが止まらなくなって、そっからずっと笑い止まりませんでした。和牛の｢ゾンビ｣みたいに、前半のウケの少なさを一気に後半で巻き返しましたね。
てかスペランカー吉田って実在しないんですね。このネタ見た事ありましたけど、ずっとスペランカー吉田はソニーの地下ライブにひっそりと身を潜める40代ピン芸人かと思っていました。や団とかと仲良いんですよ。
一番好きな所は、伝わらない紙芝居の話の後、続けて好きなアルファベット聞いてきた下りです。

9.インディアンス｢怖い動画｣
2018年頃に敗者復活戦で観た時は普通に面白いなと思ってたんですけど、翌年の決勝ネタがあまり好きじゃなくて、去年のネタも2018年のリメイクみたいな感じだったのですがハマらなくて。でも今回のネタは当時程では無いとはいえ、楽しめました。
ハリーポッターの所とか、無駄に引き伸ばしてる所が面白いですけど、楽天モバイルの下りを引き伸ばすのはあまり好みじゃなかったですね。なんか広告イジりは｢広告イジり｣みたいだなと思っちゃって。いや広告イジりだからそうなんですけど、広告、特にYouTubeで流れる様な広告なんて絶対色んな地帯で安易にイジられてますし。2本目のもう中学生イジりもそうなんですけど、何処かで安易にイジってる者が複数存在してそうだなって物がM-1とかで出てくるのは、イマイチ惹かれないんですよね。
このネタってそういえば｢趣味の無かったきむさんが最近、怖い動画を観る事にハマり出したので、自分達も撮りに行こう｣というネタなんですね。見終わった後何が目的のネタだったか覚えてる人いました？
今までどんなに会場でウケてても低い点しか出ず、審査員にハマってないのかなって感じてました。どうしたらインディアンス優勝するんだよ、と思っていたらここに来て同率2位に食い込む高得点。M-1の審査は他の賞レースと比べても読めないですね。
一番好きな所は、号外見て｢意外と楽しんでるねぇ｣て本人に伝えてるところです。

10.もも｢物欲｣
今までは余りハマっていなかったのですが、今回は楽しめました。初めて観た時はもっと尖った○○顔やろ！の大喜利が欲しいな〜なんて思ってましたが、顔大喜利があのテンポでも頭に入りやすい内容の物で揃えてるから、スムーズに次々笑えるのでしょうね。
個人的に｢ズレてるわ〜｣｢ズレてます？｣｢びっくりしたァーッ！！｣のフレーズが好きなので、全部観れて嬉しいです。欲を言えばもっと使って欲しかったけど。
というか、ネタ自体ももう1分くらい観たかったですね。どんどん盛り上がってる所で終わってしまったので。
自己紹介の｢まもる。とせめる。で...｣も好きです。そこまでハッキリとキャラクター然としてない芸風なのに名前はキャラクターっぽくしてるのが面白いですね。特に｢せめる。｣なんて名前自体もなんか面白いし。まもる。に関しては芸風に寄せたんじゃなくて単純に本名だからってのも面白いです。
あとイントネーション｢桃｣だったんですね。
女性の名前と同じかと思ってました。
一番好きな所は、｢亀田一家顔やろ｣です。

FINAL ROUND

1.インディアンス｢もっと売れたい｣
もう中学生イジる所とか、サザエさんの次回予告大喜利とか、ボケが多いとはいえ、斬新さを余り感じない下りが多くていまいちハマりませんでした。
きむさんの発言から無のコント始める下りとかも何処かで似たような物を観た覚えがありますし。
それでも一番好きな所はその、急にコント入る下りですが。
１ニョッキって何...？

2.錦鯉｢猿を捕まえる｣
猿を捕まえるってテーマがなんか愉快なトラブルで(現実では愉快なんてものでは無いが)まさのりさんにピッタリですね。
｢業者下手じゃんね！｣って目バキバキで同意求めてくるのがまず面白いです。
どんな精神状態でも、前回までの失敗を忘れてバナナで釣るって選択に行き着いてしまうキャラクターが面白かったです。
一番好きな所は、猿が森へ逃げ込んだ！って焦るまさのりさんに渡辺さんがじゃあいいじゃねーかってツッコむ下りです。

3.オズワルド｢割り込み｣
普通に面白いと思いましたし、そこまで1本目と格差があるとも思いませんでしたが、あんまりウケてませんでしたね。
ABCの2本目で披露してた時には無かった、畠中さんが意見ごとに立ち位置を変える下りも面白かったです。
ガッツポーズされたって嘘を自分でばらす所が一番好きです。

これ好きな順です。

真空ジェシカ
ランジャタイ
錦鯉
モグライダー
オズワルド
もも
  錦鯉2
  オズワルド2
ロングコートダディ
ゆにばーす
インディアンス
  インディアンス2
ハライチ

今年はライブで観てた芸人が沢山決勝に出ていました。なんならモグライダーとランジャタイと真空ジェシカ、錦鯉の4組は同じライブで同時に観たことすらありますし。今回を期に売れて、中々このメンバーが揃うライブは観れないかもしれませんが、とにかく決勝戦は楽しく観れました。

それでは最後に来年の予想でも。

M-1グランプリ2022最終決戦に進出するのは...
衝撃デリバリー、おとぎばなし、見取り図
の3組！！果たして誰が優勝するのでしょうか...ッ！！

センキュー！

ズレてるわ〜。