見出し画像

逸木裕『虹を待つ彼女』読了

 本日日本から届いたばかりだったのですが、読み始めたら止まらなくなって一気読みしてしまった、逸木裕『虹を待つ彼女』(角川文庫)。第36回横溝正史ミステリ大賞受賞作品です。
 この方実は友人の知己で(私は直接存じ上げませんのであしからず)、それではぜひ読んでみようと手に取ったのですが、いや、面白かった…!

 かいつまんだストーリーはこちら。研究者の工藤賢は、死者を人工知能化して蘇らせるというプロジェクトに参加する。プロトタイプのモデルとして選ばれたのは、センセーショナルな死によってカルト的人気が今も根強い「水科晴」という天才ゲームクリエイター。工藤は晴を蘇らせる過程で、すでに死者であるはずの彼女に惹かれていく。そこに、プロジェクトの妨害を試みる何者かの影が迫り…というもの。 
 以下、ややネタバレがあります。

 アイデアがまず斬新で、著者がエンジニアでいらっしゃるだけあってIT関連の専門用語が飛び交うのですが、無味乾燥さは微塵もなく、複雑に絡み合う人間ドラマとミステリーに無理なく没入することができました。 
 主人公の恋心は一般的には相当理解が困難なものですが、丹念な描写の積み重ねで読み手を納得させてしまう筆力がすごい。また、「一般的」の枠から様々な点ではみ出た人々が多く登場する一方で、とっつきにくさを感じさせないキャラ造形も印象的でした。
 複数のサブストーリーが同時進行している(しかもそれぞれずっしりと厚みがある)にもかかわらず、物語の疾走感は失われず、すべてが破綻なくラストに着地することには感嘆するばかり。
 頭でっかちで利己的なキャラであった工藤は、悩み迷いながら突き動かされるように行動し、最後にはあえて敗者となることを選ぶほどに変わっていきます。切なくも心に響くエンディングでした。
 異彩を放つミステリー、お勧めです♪
 それにしても、この方これがデビュー作なのですよね。デビュー作でこの完成度…空恐ろしい…(涙)

 同じく逸木氏による『星空の16進数』(角川文庫)も購入したので、こちらも楽しみに読みたいと思います。

 DCエリアは一昨日暴風雨・竜巻注意報が発令されていましたが、当地は強い雨に一時見舞われた程度で済みました。が、同じ州内でも被害が出ているエリアがあるようです。本当にこればかりは運ですね…

 本日は、セミの脱皮を目撃。玄関先の階段にいました!
(虫が苦手な方はUターンをお勧めいたします…)



 小さなセミです。脱皮してしばらくの間はこんなエメラルドグリーン!
 宝石のようです。

 美しいですね。
 硬化するともっと茶色が濃くなっていました。今年はセミをほとんど見ないなと思っていましたが、これから出てくるのかな?
 
 それでは、日本各地も悪天候が続いておりますが、どうぞ安全にお過ごしください。

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?