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読書は雑食ふたたび

 11月だというのにポカポカ陽気が続いております。昼間なんて暑いくらい。秋はどこへ行ったのだろうか…?と心配になる気候です。
 気分だけは読書の秋ということで、またもやアマゾンから本が届きました(一部すでに持っている物も混ざってますが)。相変わらずの雑食です。では行ってみましょう〜。
 まずは筑前助広さんの『谷中の用心棒萩尾大楽 阿芙蓉抜け荷始末』と早川隆さん『敵は家康』、および『冷光』(BEKKO 2022 Special Issue収録)。『谷中の用心棒』は以前購入済みなんですが、お二方とも第6回アルファポリス歴史・時代小説大賞の受賞者でおられるので並べてみました。
 私がずらずら感想を述べるのも興醒めなので控えようと思いますが、お二方ともご自分の作品に課したレベルの高さが尋常でない作家さんだと感じます。熱量とストイックさが振りきっていると申しましょうか。物語は上質で、なおかつエンタメとして面白い。圧倒的に面白い。そして文体に風格すら感じられます。
 私はネット投稿自体今年の夏にはじめたんですが、恥ずかしながらこういう才能ある方達が凌ぎを削っている世界だとは夢にも思いませんでした。いや恐ろしいです。しみじみと、
「ネットは広大だわ」(by 草薙素子)
 という名言を噛み締めるばかりです。
 これでお二人ともデビュー作とか、ちょっと心が折れそうになりますね。わりと本気で(!)。がんばろ…。

 

 近藤史恵さんの『インフルエンス』以外時代小説じゃないかと思いきや、こんなものも混ざっております。

 暁佳奈さんの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(見えませんが4冊セット)。テレビアニメと映画の原作です。私、テレビアニメではまりました。最近のアニメはほとんど見ない人間なんですが、京都アニメーションのこちらの作品は評判を耳にして試しに見てみたら…
 最終話を見てからしばらくの間、引きずるくらい刺さりました。
 愛とは何かを愚直に問う、残酷で美しい物語です。
 音楽と美術と声優さんの本気度が見事としかいいようがない名作。
 京都アニメーション様、素晴らしい作品を届けて下さってありがとうございます。
 
 話は逸れて、小説ではありませんが、数年前に見たアニメの『四月は君の嘘』も大好きです。私趣味でピアノを弾くので(老化に伴い暗譜出来ないポンコツです)、音楽関係の作品は大好物なんですが、これは良かった…
 ヴァイオレット・エヴァーガーデンに勝るとも劣らない、直球かつ美しいお話。これも最終話付近からもう精神が疲弊するんですが、名作です。夫も引きずり込んで一緒に見ておりましたが、最終話辺りは声を殺してボロボロに泣いていました(←日本人ではございません)。A-1 Pictures様、ありがとうございます…。ところで、日本のアニメの声優さんて、演技力といい声の質といい惚れ惚れしますね。なんといういい声なんだろうーと聞き惚れます…

 ちなみに音楽関係の小説では、恩田陸さんの『蜜蜂と遠雷』、中山七里さんの『おやすみラフマニノフ』がイチオシです(中山七里さんの作品は岬洋介シリーズとして複数作品があります)。感動的で臨場感ある演奏風景ですとか、学ぶところが非常に多い作品です。
 
 で、話を戻して。他に購入したのは以前から気になっていた佐伯泰英さんの『浮世小路の姉妹』。佐伯さんのご著作は多分初めてかも。楽しみです。それと宇江佐真理さんの髪結い伊三次シリーズ『竃河岸』、ご存知藤沢周平さん『風の果て 下』。どうでもいいことですがなぜ下巻なのかといいますと…昔上下巻を借りて読了していたのですが、最近手元に置きたくなったためです。少し前に上巻を購入し、今回下巻を取り寄せました。『風の果て』も読了後にしばらく引きずる壮絶な物語でして、絶品の名作です(しかし引きずります。悶絶必至)。

 最後に近藤史恵さんの『インフルエンス』。近藤さんの作品は、『ときどき旅に出るカフェ』を拝読して二作目。主人公が風変わりなカフェや料理屋を見つけ、色々なことが起こり…というスタイルは世に多いと思いますが、『ときどき旅に出るカフェ』は何だかじわじわじわじわ魅力が染みてくるといいますか、異色の面白さがあります。ストーリーが面白いのはもちろんなんですが、繰り返し読みたくなる不思議な引力があります。要するに好きです!ということで。
 で、『インフルエンス』を書評に引かれて選んでみたら…一気読みしてしまった…。
 あれ、これ本当に『ときどき旅に出るカフェ』の作家さん?間違えた?と表紙を見直したくらいにすさまじい筆力とスピード感、端正なのに冷徹でリアリスティックな筆致、息詰まるような展開、ともう呆然。『ときどき旅に出るカフェ』が面白かったわけだ、と思わず納得しました。話の中心部分は60年代から80年代にかけての学校生活をメインに語られるのですが、80年生まれでも、ああわかるわかる、と思いながら当時を鮮明に思い出して読みました。身近にツッパリだの夜の学校の窓ガラスを割るだの、盗んだバイクで走るだのということはありませんでしたが、残り香がなんとなくありました。大人びた子は尾崎豊をよく聴いていたりしましたっけ。
 学校生活とは暗く危険な道で、何よりもまず「生き延びる」ことを優先しなくてはならない、と繰り返し作中で語られますが、すごくわかる。いい先生もいれば犯罪者スレスレの先生もいて、やさしい生徒もいれば残忍な生徒もいて、目をつけられたら人生が変わってしまうこともあり得るという世界ですよね。思春期だからというのももちろん大きいと思いますが。そういうのは、たぶん昔も今も大して変わらないんじゃないだろうか。
 そういうことを生々しく思い出させる上に、登場人物たちの苦悩が胸を容赦なく抉ってきます。もう何というか、後のトリックとかどんでん返しはご褒美というか、もうそこはあってもなくても満足です、というくらいの気持ちで読みきりました。かなりお勧めです。
  
 面白い本に埋もれる幸福よ。しばらくホクホクして過ごせそうです♪

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