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第3回万葉の郷とっとりけん全国高校生短歌大会と『ずぶぬれて犬ころ』

11月7日、鳥取市の県民ふれあい会館で、第3回万葉の郷とっとりけん全国高校生短歌大会( https://www.pref.tottori.lg.jp/301780.htm )を見た。思いの外楽しく、審査員のコメントの隅々まで配慮の行き届いた的確さも流石だった。

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出場チームでは、花月マーチ(神奈川県立光陵高等学校)の動画が印象に残った。各チームは事前に短歌を詠む短い動画を制作し、当日はそれを上映して発表することになるのだが、花月マーチは編集にアプリ等を使用せず、カメラの前を遮って暗転させたり、その間に立ち位置を移動して場面転換を作ったりというアナログな手法を駆使し、無編集1カットで作品を成立させている。技術的な制約による苦肉の策かもしれないが、こういう創意工夫こそが何かを作ることの醍醐味だし、また一種の「手仕事」的な表現として、Premiere や After effects では代替できない魅力や価値を生み出している。


11月23日、鳥取市民会館大ホールで、本田孝義監督の映画『ずぶぬれて犬ころ』を見た。25歳で亡くなった俳人・住宅顕信の生涯と現代を生きる中学生の生活が偶然手にした句集を介して交わる。上映会の主催は鳥取コミュニティシネマ。

本田孝義監督の作品に共通して感じられる穏やかな印象は今回も同様で、いじめのシーンも過激になりすぎないよう、抑制されている。また住宅顕信という人物を神格化して描くこともせず、あくまで一人の人間として、その生活を淡々と描くというスタンスも本田監督らしいと思った。

特に病室で過ごす住宅のもとに家族や友人・知人たちが訪ねて来るシーンは、年末年始の親戚の集まりに参加しているような気分になり、これが伝記映画の一シーンであるという事実が可笑しく思えてくる。劇的な展開はなく、「夭折した孤高の俳人」のような期待・先入観もあっさりと裏切られ、常に家族や友人・知人たちに囲まれながら穏やかに微笑む住宅(木口健太)の表情や佇まいだけがじんわりと記憶に刻まれる。


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