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出荷2022 回想録

2022年9月25日、ねじ秋田移住後初の単独ライブ「出荷2022」がありました。

正式には「ねじ単独公演 出荷2022年度便」なんですけど、タイトルとかにはこだわりありそうにしといて実はないので、好きに呼んで下さい。

わざと硬い言い方にしたりするのに全然意味が無いわけではないんですけどね。コントとか自分が作るモノにはそれなりにメッセージ性みたいなのを込めて作るので、それっぽくしといた方が勝手に深読みしてくれるかな?って言うのが狙いです。ま、総じて‘’意味‘’は無いですね。


朝は8時くらいに起きました。

起きた瞬間ラストのネタのセリフが心配になって一人で反復したりした。
シャワーを浴びて、歯を磨いて、昨日洗濯して浴室乾燥していたシャツをキャリーケースに入れた。

今まで何度も東京で単独ライブや自主ライブはやってきたけど、前日まで別の仕事で忙しいなんて事はなかった。
それが「売れてない」って事なんだろうから、コレは嬉しいことではあるが少し体が付いて行ってない感覚があった。

たまにあるこういったハードスケジュールの時に自分は心の中でこう唱える。
「バナナマンさんだったらもっと忙しいぞ」
尊敬する人がコレを乗り越えているんだから、弱音を吐いてる場合ではない。

少し気合を入れて、物販のTシャツと缶バッジが入った段ボールと、衣装でパンパンのキャリーケースを車に積む。
マジで免許取って良かった。ありがとう北日本自動車学校。

まずは空港にマツバラを迎えに行く。
11時頃マツバラが合流。
車で「ササキさん運転してる!」とか言われながらモスバーガーに向かった。
一緒にモスバーガーをかじりながら打ち合わせ。
エンドロールの表記の確認とか、改めて使いたい音源はそろっているか確認。
確認してみるとケッコー共有出来てない事が多くて、やっぱり遠距離だと大変だなと感じた。

あっという間に入り時間。
13時15分、AUのロビーに行くと今日お手伝いで来てくれてるボランティアスタッフのみんながいた。
みんなそれぞれに僕に「何か出来る事はありませんか?」と言ってくれた人達だ。他にも数件立候補もあったんだけど、あまり多くても指示を出し切れる自信が無かったので少しメンバーを絞った。
音響さんと照明さんは既に入って仕込みをしてくれているそうなので急いでホールがある三階に向かう。
行ってみるとホールの扉自体にはまだ鍵が掛かっていて、あれ?どこから入るんだろ?となった。
振り返ると、その僕の様子をじーっと見つめるスタッフのみんな。
「あ、オレが少しでも戸惑うとこのチームは止まってしまうんだな」と背筋がビシッとなった。

ホールに入ったらまずスタッフのみんなで挨拶。それから仕事を割り振る。
まだステージの設営に時間が掛かりそうなので、受付と物販を説明する。みんなイイ子で良かった。
せじもが到着したので色々状況を説明したあと、少しだけラストのネタを合わせる。
撮影の打ち合わせと取材に来てくださってる方とも少し話す。
マツバラとこの後のリハで必要になるであろう項目を話し合う。
せじもが忘れ物をしたらしくて、スタッフの子の車で取りに言ってもらう。
そんなこんなをしている内にリハーサル開始予定の15時になる。

でも実際にリハーサルを始められたのは15時30分頃。
仕方ない。なんたって我々ねじとマツバラ以外は全員が初めてのお笑いライブ。何が必要で何を準備すればいいかなんて分からないまま集まっている。秋田で初めてお笑いライブをやろうとしているメンバー。
ココから始まるんだなーと、しみじみ思う余裕はこの時は無かったけど。

オープニングアクトの照明とか音響のタイミングを演出する。
凄く短い演目なんだけど、一番キッカケが多い。
短くて演出が多いからタイミングがすごく難しいし細かい指示になってしまう。
気付いたら16時。
開場予定時刻は16時30分。
あと30分でお客さんが入って来る。
この30分で全8本のコントの照明音響の演出を伝える。

うん。無理。

心の中でお客様に土下座しながらも、ココで手を抜いて演出をしたら中途半端なものを見せる事になってしまう。
「遅刻確定した時に逆に落ち着いてしっかり準備をする」みたいなモードになっていたのを覚えている。

16時30分。
ようやくあと2本くらい演出を付けたら終わる状態。
あと2本と言っても、ラスト1本は長尺のコントで一番演出が多い。

うん。

もうココまで来ると精神力の戦いですよねー。
日頃からの時間のルーズさで鍛えられた神経の太さを活かして、焦っている周りの人間たちの圧を完全にシャットアウトして妥協せず演出を続けます。

なんとか全部の演出を終えて、時刻は16時45分。
思い切って「お疲れさまでした!明日本番よろしくお願いします!」と全力でボケてみる。
技術さんがみんなで「お疲れ様でしたー!」と返してくれた。

あ、このチームなら乗り切れそうだな。と安心しました。

マツバラだけ「おいいいい!!もう押してるんですよー--!!!」って新八みたいにツッコんでたね。安心するね。

開場してお客様が入る。
ココでやっと楽屋に戻って自分の衣装を確認する。
通常はネタ順にハンガーに掛けて置いたりして、着替え補助のスタッフと早替えの為の段取りとかを確認したりするんだけど、もうそんな事を指示している余裕は無い。
楽屋スタッフメンバーには舞台に明かりが漏れないように、我々の出捌けの補助をお願いした。

あとで聞いたけど、マツバラも技術スタッフさんへのキュー出しも行っていたらしい。
もうとにかく走り切るしかない。

書いていて改めて思うけど、みんなよく動いてくれた。
今からどんなライブが行われるのか全体像がイメージ出来ているのは我々3人だけなのに、しっかりと指示を聞いてくれた。
本当に感謝しかない。

本番が始まってからは本当にあっという間だった。
全部で2時間くらいのライブだったらしいけど、体感はマジで5分くらいだった。

オープニングアクトをやりに舞台に出て行く。
今回集客にはかなり苦戦した手応えだったけど、思ったより埋まっていて安心した。
前列には今まで秋田でのイベントによく足を運んでくれた常連のお客さん。
さらに、東京のライブに毎回来てくれていた東京のお客さん。
出る前は「きっとお笑いライブ自体初めてのお客さんが大半だろうな」と心配していたけど、お客さんの顔を見たらもうそんな心配は無くなっていました。

ネタ一つ一つに関しての反省点はもちろんある。
ああ、ココもっと合わせておくべきだったな、とか。上げだしたらキリがない。
でも、久しぶりに相方と長時間コントをしていて感じたのは「この人本番に強いな」って事。
お客さんの温度感に合わせて過剰にやってみたり、抜いてみたり。
本番が始まってしまうと舞台上以外では会話どころか目を合わせる余裕もなくなる。もう舞台上でコントのセリフを交わす事しか出来ないけど、そんな中で「そんなに焦るなー」とか「いいぞーもっと行けー」とかやり取りする感覚。

そんな感覚を一瞬に感じながら、あっという間にラストのコント。
今回のトリのネタに選んだのは「劇場版ヒーロー」というネタ。
元々は僕らが初めてキングオブコントで準決勝に進んだ頃のネタで、作家マツバラが一番好きなネタでもある。そんな「ヒーロー」というネタの後日談を描いたセルフアンサー的なネタ。
20分近くある長尺のネタ。
今回は所々に秋田アレンジも入れてみた。
大オチの前の最後の怪人のセリフ、実は舞台に立つまでしっかりとは決まっていなかった。

ササキが演じる怪人。一度は怪人を辞めるのだけど、もう一度自分らしい怪人の姿を見つけて歩き出すというセリフ。
なんだか、今のねじの芸人活動に少しリンクする部分もあるなと思って、今の自分にしか言えないセリフに変えたかった。
だけど、なんかビシッと来るセリフがまとまらなくてずっとふわっとしていた。

「そりゃ最初に目指した怪人の姿とは違うよ。世界を征服してやるとか、誰もが思い描く怪人じゃないかも知れない。でも、オレは自分が一番自分らしくいれる怪人の姿を自分自身で見つけたんだよ。」

客席を見ながら気持ち作っていたら自然とそんなセリフにまとまりました。

今回の単独ライブは本当に第一歩。

我々が秋田でやりたい事。
自分たちの一度しか無い芸人人生を掛けた最初の一歩。

ま、コントだからそこまで感じてもらわなくていいんだけど。
なんか深い感じの事言ってたなー。くらいには思ってくれてたら幸いです。

舞台終演。
お客さんの見送りをするためにロビーに。
喜んでくれているお客さんの顔が見れて本当にホッとしました。

手伝ってくれたスタッフのみんなも楽しんでくれていて良かった。
技術陣も「もう一回やりましょう!」「ツアーしましょう」と言ってくれて本当に嬉しかった。

この日来てくれたお客さんは一律で秋田第一号のお客様。

この日手伝ってくれたスタッフはみんな1期生。

この日来れなかったみんなは秋田の伸びしろ。

こうやって一歩ずつお笑いライブという、僕が大好きな文化が広がっていってくれたらいいな。

そんな気持ちになりました。


単独が終わったら、もう思いっきり休みたくなるんだろうなーと思っていたけど、実際は全然違って、今はまた次の何かを作りたくてワクワクしています。

今この記事を最後まで読んでくれた皆さんがいる限り、僕は何かを作り続けます。何かを仕掛け続けます。

改めて自分はそんな人生なんだなと覚悟を決めた日になりました。

これからもそんな我々を見守って頂けたら幸いです。

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