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ワールドセントリックとミーセントリック - スマホを手にした瞬間、私たちは即座に価値観を切り替える

はじめに

私がよく使う「ミーセントリック」という概念について、他の人でも使えるようにパブリックなところに書いておいたほうがいいのではないかとお薦めしてくださる方があったので、ここに公開します。この概念を思いついたのはLINEでの経験が大きく、自分のものにしていったのはSmartNewsでの経験が大きいのですが、それはつまり「スマートフォーンでサービスを作るとはどういうことなのか?」を説明するものです。

ワールドセントリック

ミーセントリックを理解する前に、ワールドセントリックという価値観の説明をします。

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ワールドセントリックは、「世界には中心があり、そこには事実があり、人々は自らそれに近づいて、世界を解釈する」という価値観のことをいいます。私たちが新聞紙やテレビ受像機というメディアにふれるときは、自然とこのパラダイムでものを見て、考えます。それは、「世の中にはまだ自分が知らない重要が出来事がある」という感じを覚えさせます。

ミーセントリック

一方、ミーセントリックは、この価値観が逆になります。いわば、天動説から地動説へのパラダイムシフトのようなものです。

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ミーセントリックは、「世界の中心に自分がいて、自分の関心に近いものから順に重要で、それによって世界を解釈する」という価値観のことを言います。私たちがスマートフォンというメディアにふれるときは、自然とこのパライダムでものを見て、考えます。そこでは、ニュースも、話題の番組も、人気のマンガも、新しいコスメも、友人から連絡も、すべて等価に扱われます。

天気図じゃなく傘が要るかどうか教えてくれ

このふたつのパラダイムを、私たちは瞬時に使い分けています。それがわかる具体例が、天気です。

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テレビを前にしたとき、ワールドセントリックな私たちは、全国の天気図から地域の天気に絞り込まれていくのをあたりまえのように見ています。特に不都合を感じません。
一方、スマホを手にしたときのミーセントリックな私たちは、全国の天気図からはじまるインターフェースに耐えられません。知りたいのは、このあと傘が要るかどうかです。その後、余裕があれば、今日の天気、一週間の天気、全国の天気、そして世界の気候変動について関心を広げていきます。

ローカル情報こそが世界の中心である

もうひとつ具体例をあげましょう。

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新聞紙を手に取り、ワールドセントリックなパラダイムでものを見ているとき、私たちは自然と、東京を中心と考え、ローカル情報を地理的な辺境、地方、田舎、周縁だと捉えます。
一方、スマホを通してミーセントリックなパラダイムで世界を見ているときには、ローカル情報こそが心情的な世界の中心です。たとえば私が北海道在住だったとすると、東京のほうがローカルになります。

活用編

ミーセントリックという概念を強調するのは、スマートフォンで提供するサービスなのにも関わらずワールドセントリックなパラダイムで設計をしていまっている場合に、それと気づくことができるからです。傘が要るかどうかに応えなきゃいけないのに、天気図を出してしまっている。心情的な世界の中心に訴えないといけないのに、地理的な中心の話をしてしまっている。そんな場合です。

具体例をあげましょう。たとえば、スマートフォンで連絡をとりあうサービスを機能を企画しているとします。そのとき、固定電話を前にして電話帳から名前を調べて「もしもし某と申します」ではじまるようなワールドセントリックなパラダイムを使ってしまっていませんか? 携帯電話を手にした人を観察するとわかりますが、直近の着信履歴から折り返していきなり話はじめるのがミーセントリックなパラダイムです。とするならば、電話帳よりも履歴が大事で、名乗りや件名のいらない連続した会話を行えるインターフェースが重要ですよね。というように使います。

スマホのサービスや企画を考える際にはぜひ一言「ミーセントリック」という言葉を思い出してみてください。

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