ヘーゲル「法の哲学」(2)

2021年11月29日

 ヘーゲルは、立憲君主制という言葉を使っていない。
 4つの自己意識の形態化の原理、それに従った世界史的領野(東洋、ギリシャ、ローマ、ゲルマン)で、やはり柄谷行人の交換様式を思い出す。

 第3のローマの世界には、貴族政体と民主政体が存在したが、双方の問題が語られる。
 第4の形態化は、精神の真理を法律的現実の世界として生み出し、それに従ったゲルマンの世界には、神性と人性との統一の原理があるという。
 このあたりに、ヘーゲルの立憲君主制への志向が表れているといえるのかもしれない。

 4つのカテゴリーが語られ、第4が最終形態であると示唆するが4つの併存を許容したり、第4で神性が語られる点も、柄谷と同様だと思う。

ヘーゲル 『法の哲学 下』(岩波文庫)
第三部 人倫(一四二―三六〇)
第三章 国家 C 世界史
三五二
 それぞれの具体的理念、すなわちそれぞれの民族精神は、その真理と規定を、絶対的普遍性である具体的理念――世界精神においてもっている。世界精神の王座を取りまいて、それらの民族精神は世界精神の現実化の遂行者として、また世界精神の尊厳の証人および装飾として存在する。世界精神は精神として、みずからを絶対的に知り、したがって、みずからの意識を自然的直接性の形式から解放して、自分自身へといたるという、みずからの働きの運動であるから、この自己意識の形態化の原理には、その解放の歩みにおいて、すなわち、世界史的な領野において、四つのものがある。

三五三
 第四の形態化の原理は、精神のこの対立が転換すること、すなわち、精神がその内面性において、みずからの真理と具体的本質を受け入れ、そして客観性において安らい、和解していることであり、また、最初の実体性にたち戻ったこの精神は無限の対立から還帰した精神であるがゆえに、この精神の真理を、思想として、また法律的現実性の世界として生みだし、知ることである。

三五四
 この四つの原理にしたがって、世界史的領野には四つの領野がある。1 東洋、2 ギリシア、 3 ローマ、4 ゲルマン。

三五七
3 ローマの世界
民主政的形式における自由な人格性の原理に対抗する貴族政体の実体的直観から生じた対立が発展して、貴族政体の側では、迷信と冷酷で貪欲な権力の主張へといたり、民主政体の側では、浮浪者の堕落へといたる。

三五八
4 ゲルマンの世界
これは、神性と人性との統一の原理であり、自己意識ないし主観性の内部に現象する客観的真理と自由との和解にほかならないが、この和解を遂行することは、ゲルマン諸民族の北方的原理にゆだねられる(173)。
(173) 『歴史哲学』第四部ゲルマンの世界(stw Ⅻ, 413ff)。ここでヘーゲルがゲルマンとよんでいるのは、ドイツのみをさすのではないことはあきらかである。一般に西欧を代表するとみなされる北方ヨーロッパ全体をさすとみることができるだろう。

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