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そそっかしい君へ論

という彼への愛しい想い。同じく自分にも言い聞かせる。

初めて彼を見た日。

彼には異質な雰囲気があった。それはその場所にそぐわないとか、独り浮いているとかの意味では無く、単純に私が今までに出会ったことの無い感じの人だった。磁石のプラスとマイナスが反発し合うような感覚が、彼を見たときにあった。こちらがプラスの方になったかの如くはじき返す、自分に無いものを沢山持っていそう。彼がなんだか輝いて見えた。

だからこそなのか、やたらに気になる。気になって目で追ってしまう。これは緊急会議か? と謎の思考回路を巡らせ脳内の長テーブルに何人かの自分を着席させる。

そもそも、私が人を好きになる法則といえば大体決まっている。かなり乙女チックでときめき重視で……。
そうそう、確か学生時代とか。

私の小さい脳みそが活性化され記憶を呼び起こす。

好きになったあの子、確か地味なのに優しかった。真面目そうなのに子供っぽくてだらしないのが可愛いなと思ったあの子、無口そうなのに消しゴムを拾ってくれて「あぁ、好きかも」と思った。えっと、なるほど。ギャップにころりと落ちやすいみたいだ。

いや、待て待て。そう思うとゆとり世代の価値観にかなり支配されているな。ときめきの基準が単純に強いとかよりも可愛いが勝利する時代の申し子に成り下がっている。北斗の拳<アオハライド。カッコつけるならケンシロウが強くて好きと言える過去の自分でいたかった。

過去を思い返したことを後悔し、ちいさな私たちの議案は何もまとまらず迷宮入りした。

彼の第一印象が今まで気になった人と何か違うけど、結局気になる! と、いう謎の何かに支配されて、数日頭の片隅に置いておく羽目になった。
さてはソウルメイトで前世は宿敵だったとかならどうしようとか、色々考えてしまったりとか、非常に引っかかるものがあったのは事実だった。

話は戻って、そんな気になる彼。優しい雰囲気に惹かれることは一切なく、兎に角感じたのは、仕事熱心そうということ。頭が切れるので仕事が早いのか、仕事内容は知らぬ。が、一人で複数の仕事をこなすことで有名で彼の存在は、神出鬼没とのこと。個人的には目の前に現れたらラッキーと思っていた。その時、巷では丁度Pokémon GOが流行っていた。
こんなに職場のみんなから探される人は未だかつていただろうか。
見事に発見できても、すぐに視界から消えてしまってその後行方は知れず。
あちらこちらで、何処どこにいたという噂が飛び交う。

その時、私は仕事できる人って歩くスピードも速いんだぁ。と本気で思っていたのを覚えている。

職場では目立ちたくないをモットーに生活していた私が、気合を入れて彼に好意的に話しかけてみたりした。まったく無関係な存在が突然接近してきたことに対して彼はこれぞ、ポーカーフェイスという感じで対応した。

私は意外とメンタルが強く、恋したら恥ずかしさよりも好奇心が勝つタイプなので。(もの凄くよく言えばの話)
そのアクションに対して、彼は臨機応変に非常に気さくに業務的対応をしてくれて、時々ユーモアを交えて何とも人当たりの良い人柄で返答してくれた。正直、後に会話していて、こんな人居たんだーと思っていたという感じの表現をしたのを私は見逃さなかったが、それもそのはず。こちらの突然の接近だったのだからさ、仕方ない。

しかしながら流石。頭の回転が本当に素晴らしく感動した。自分から話しかけておいてなんだか、その時この人モテて生きてきたのか、苦手。と思った。

しかしながら、その後は苦手よりも好奇心が圧勝してしまったようで、彼の返答が知的で面白く、私にクリティカルヒットしてしまったので、泣く泣く惹かれてしまった。モテるタイプ苦手なのに。

若干? 本当に気持ち悪いが、そのころ少しばかり意識的に職場の最寄駅のホームで待ち伏せしてみたことがある。そういう時、彼を拝むことはできず、この時間何だったの? と言わんばかりの反省をして長い岐路につく。そんな謎のスリルをひとりで味わっていたのも気味悪いが淡い思い出……。

ふと何も考えていない時、彼と同じ電車になり「タイミングがよう、何で今なんだよう」と思ったことがある。その日の自分のコンディションを恨みつつ、仕方なく勇気をだして、心臓バクバク飛び出しながら、無駄に長い車両を熱き、彼に近づき話しかけた。この一部始終を目撃している人がいたとしたら、存分にからかって欲しい。どうか引かないで。

ふいに声を掛けられた彼はとても驚いていたが、こちらはその状況をみてさらに納得。そりゃそうだろ、こっちも無駄にとっぴおしもない行動をしたことに驚いてるよと謎の冷静さを取り戻しながら神の領域にたどり着きそうになっていた。

しかしながら、会話は緊張して不可解かつ難題な質問を繰り返し投げ付けていた。彼が適当に乗ってくれる人で本当に良かった。結果、空回りの先に冷静になったような錯覚を起こすゾーンに入ることがあるらしい。ゾーン中も絶賛空回りしている。

この恥ずべき事態がお互いのきっかけにはなってくれたようで、良かったと思うしかない……。

その後も色々あったけれども。まぁ、でも私から好きになった人でここまで長く付き合えたことは今までになかったのでとても嬉しいことです。

あの時の異質な感じはどこぞや、今ではカッコよく、人一倍優しく、子どもで大人で人間味のある愛おしい存在になり、一番に尊敬している。時の流れは不思議なものなんだな。

何となく節目を迎える前に、出会った頃の気持ちを日記にしてみました。

愛しい思い出はずっとそのまま、カラーでいてね。っと。

おやすみなさい。

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